不妊の原因〜女性不妊〜
不妊の原因は、女性側と男性側それぞれに存在することが考えられます。
新たな命は、ある日突然お母さんのお腹の中にやってくるわけではありませんよね。
妊娠は、排卵された卵子と精子が出会い、受精卵となり、受精卵が分割し、子宮内膜に着床することで成立します。
この過程のどこかで問題が発生した場合、妊娠まで至ることができません。
今回は、女性不妊の原因として考えられる「器質性不妊」と「機能性不妊」についてご説明します。
検査を行うことで原因が判明する「器質性不妊」
妊娠を妨げる問題が身体のどこの部分に存在するかによって、主に「排卵因子」「卵管因子」「子宮因子」「子宮頸管因子」の4タイプに分けられます。
このように明確な原因を特定することのできる不妊症は「器質性不妊」とされます。
「器質性不妊」は、妊娠を妨げている明らかな疾患があるため、検査によって原因を特定できる不妊症です。
器質性不妊は身体のどの部位に原因があるかによって、主に「排卵因子」「卵管因子」「子宮因子」「子宮頸管因子」の4タイプに分けられます。
排卵因子
卵子を排出するための袋である「卵胞」が十分育たない、育っても卵子を排出することができないなど、排卵が正常に行われないことが原因となる不妊症です。
以下は、排卵因子による疾患の一部です。
多嚢胞性卵巣症候群
多嚢胞性卵巣症候群とは、卵胞が破裂せずに、たくさんの卵胞が卵巣の壁にくっついて厚くなってしまう状態を指します。
多嚢胞性卵巣症候群は、排卵障害の原因のなかでも最多とされています。
高プロラクチン血症
プロラクチンは脳の下垂体から分泌されるホルモンで、母乳を作り出すことができるよう乳腺を刺激するなどの作用を持っています。
しかし、プロラクチンが過剰に分泌されてしまうと、妊娠・出産していないにも関わらず乳汁が出たり、月経不順や無排卵などを引き起こす原因となります。
プロラクチノーマという下垂体腫瘍が原因となり、プロラクチンというホルモンを過剰に生産してしまうことによって、高プロラクチン血症を引き起こしている場合もあります。
下垂体腫瘍を判断する際の自覚症状としては、頭痛や吐き気、めまいが挙げられます。
腫瘍が大きくなるにつれて、視神経が圧迫されて視野が狭くなるといった症状も現れ、さらに肥大化が進むと、命に関わりかねません。
卵管因子
卵管は卵巣から飛び出す卵子をキャッチして、子宮まで卵子を運ぶ役割を持っています。
そして、卵子と精子が出会う場であり、受精卵の通り道でもあります。
この卵管が狭まっていたり、詰まっていたりするなどのトラブルが生じることで、受精卵が通れなくなって不妊の原因となります。
卵管因子は不妊症の原因の約3割を占めると言われていて、「器質性不妊」の代表的な原因とされています。
卵管にトラブルが発生しやすい理由としては、女性の生殖器の中でも特に粘膜が薄いことが挙げられます。
また、受精卵が誤って卵管に着床した場合、子宮外妊娠を引き起こす可能性があります。
クラミジアなどの細菌感染
卵管因子による不妊症状の多くは、クラミジアなどの細菌感染によるものとされています。
感染に気づかず治療をせずにいると、炎症は子宮頸管炎から子宮内膜炎、卵管炎と徐々に広がっていき、卵管閉塞を引き起こしてしまう場合があります。
ピックアップ障害
「ピックアップ障害」とは、卵子を卵管に取り込むための卵管采(らんかんさい)が、卵子をうまくキャッチできない状態になっていることを指します。
卵子が卵管内に入れないため、精子と出会って受精することができず、不妊の原因となります。
子宮因子の主な種類
子宮に妊娠を妨げている問題がある場合、子宮内膜に受精卵がうまく着床できなかったり、着床の維持ができないことから、不妊を引き起こす可能性がります。
子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮を形成する「平滑筋」という筋肉の細胞が異常に増殖して出来た腫瘍のことです。
子宮筋腫そのものは良性であるため、命を脅かすものではありません。
しかし、筋腫ができた場所やその大きさによっては、不妊の原因となります。
子宮筋腫ができやすい場所は主に漿膜(しょうまく)下、筋層内、粘膜下と3箇所あり、筋腫ができた場合の主な症状は、月経量の増加と月経痛です。
粘膜下という、子宮の内側、あるいは子宮の筋肉内に筋腫が出来た場合、筋腫の大きさによっては不正出血や不妊の症状が現れることが考えられます。
子宮頸管因子
子宮頸管とは子宮の入り口にある、膣から子宮へとつながる部分です。
頸管粘液不全
排卵が近づくにつれて、精子が子宮へと進んで行きやすいように、頸管粘液の分泌量が増加します。
つまり頸管粘液とは、いわゆる「おりもの」のことを指します。
頸管粘液不全は、おりものが十分に分泌されなくなり、精子が浸入しにくくなることで、なかなか妊娠に至らない状態です。
子宮内膜症
「子宮内膜症」とは、子宮内膜以外のところに子宮内膜ができてしまう病気です。
子宮内膜というのはその名の通り、子宮の内側で育てられる「膜」のことを指しています。
受精卵を着床しやすくなるよう、子宮内膜はふかふかになります。
妊娠に至らなかった場合には、子宮内膜が剥がれ落ち、月経となります。
ところが、子宮内膜が子宮の内側以外の卵巣や卵管、子宮の外などに出来ることがあります。
この場合にも、通常と同じように子宮内膜は厚くなり、剥がれ落ちることで出血に至りますが、子宮の内側以外にできた子宮内膜の発育、剥離が何度も繰り返されることで、炎症が起こります。
炎症はプロスタグランジンという、強い痛みの原因となる物質の分泌量を増加させます。
また、子宮内膜が卵巣に出来た場合には、血液が徐々に卵巣内に溜まってしまう「卵巣チョコレート嚢胞(のうほう)」が生じ、卵巣内で卵子が育ちにくくなったり、卵管の働きが抑制されてしまうことから、不妊の原因となります。
精密検査でも特定できないことがある「機能性不妊」
不妊の原因を探るための精密検査を受けても原因を特定できない場合は、「機能性不妊」とされます。
機能性不妊の大きな原因として考えられているのは、卵子の質の低下です。
卵子の質を低下させる原因
卵子の質を低下させる原因のひとつは老化です。
私たちの身体のあらゆる機能は、加齢とともに低下していきます。
身体機能の低下はすなわち、卵巣機能の低下をも引き起こします。
卵巣機能の低下が進むと、卵巣の中で形成される卵胞の力が低下し、そして卵胞から排卵される卵子そのものの力、つまり卵子の「質」の低下へとつながるのです。
卵子の「質」には、生活習慣も深く関わっています。
偏った食生活を送っていたり、あるいは食事を抜いたりといったことから、過労やストレス、睡眠不足、冷え性などを慢性的に抱えているといったことも、ホルモンバランスに影響を与え、卵巣機能の低下を招く要因となります。
卵巣機能と関わりのあるホルモンは、脳の視床下部が司令塔となることで分泌されています。
視床下部は、同時に自律神経も司っているため、ストレスや睡眠不足などが原因で自律神経が乱れることにより、ホルモンの分泌が不安定になります。
ホルモンが十分に分泌されないことで卵巣機能が十分に働かなくなり、卵子の質に影響が及んでしまうのです。
女性不妊の原因に対応した治療を
生殖年齢に達した男女が妊娠を希望し、1年以上避妊することなく夫婦生活を持っているにも関わらず、妊娠が成立しないことを「不妊」と言います。
不妊の状態にお悩みの方は、不妊の原因を探り出すことで、妊娠するための方法を判断することができます。
妊娠を妨げている原因によっては、手術が必要だったり、西洋薬や漢方薬が必要となる場合も考えられます。
一人では気がつかない原因が潜んでいるといったことも考えられます。
ぜひ、医療機関や不妊を専門とする薬局にご相談ください。
ご自身の身体の状態をきちんと理解することで、妊娠を目指しましょう。