喘息の漢方薬はどう選ぶ?咳などの症状・体質に合わせた使い分け
漢方
喘息による咳や呼吸の苦しさは、日常生活に大きな影響を与えます。
西洋薬による治療が一般的ですが、体質改善を目指して漢方薬を取り入れたいと考える方も少なくありません。
漢方では、喘息の症状を一時的に抑えるだけでなく、咳の原因となる体のバランスの乱れを整えることを重視します。
この記事では、喘息の症状や個々の体質に合わせた漢方薬の選び方、そして西洋薬との違いや服用時の注意点について解説します。
喘息の改善に漢方薬が選ばれる理由とは?西洋薬との違いを解説
喘息の改善において、西洋薬は気管支拡張薬や吸入ステロイド薬を用いて、気管支の炎症や収縮を直接抑え、発作を鎮めることを主な目的とします。
これに対し、漢方薬は体全体のバランスを整えることで、喘息が起こりにくい体質へと導くことを目指します。
漢方療法が選ばれるのは、発作を抑えるだけでなく、体の根本から見直し、免疫機能や水分代謝などを正常化することで、長期的な改善を期待できるためです。
冷えや疲労など、喘息の引き金となる不調にも同時にアプローチできる点が特徴です。
【基本】喘息の漢方薬を選ぶための2つのポイント
漢方薬を選ぶ際には、単に症状名だけで判断するのではなく、その時の体の状態と、もともとの体質という2つの側面から考えることが重要です。
これを漢方では「標治」と「本治」と呼びます。
今まさに起きているつらい症状への対処と、発作が起きにくい体を作るための根本的な体質改善を区別して、適切な漢方薬を選択します。
ポイント①:発作が起きている「急性期」か普段の「慢性期」かで判断する
喘息の漢方薬は、症状の時期によって使い分けられます。
咳や喘鳴が激しい「急性期」には、まず目の前のつらい症状を鎮めることを目的とした漢方薬を用います。
一方、症状が落ち着いている「慢性期」には、発作が再発しないように体質そのものを改善していくための漢方薬が中心となります。
このように、発作の有無や程度に応じて適切な処方を選ぶことが、効果的な改善の第一歩です。
ポイント②:体力や体の冷えなど「体質(証)」に合わせて選ぶ
漢方では、その人の体力や抵抗力、体の熱の状態などを総合的に判断した「証(しょう)」という独自の指標で薬を使い分けます。
例えば、体格が良く体力があるタイプを「実証」、疲れやすく胃腸が弱いタイプを「虚証」と判断します。
また、体が冷えやすいか、ほてりやすいかなども重要な判断材料です。
アトピー性皮膚炎などのアレルギー素因の有無も考慮し、個々の体質に最も合った漢方薬を選ぶことで、より高い効果が期待できます。
アトピー性皮膚炎と内臓状態の関係については「アトピーなどの皮膚疾患と内臓状態」で詳しく紹介しています。
【発作時】喘息の激しい咳やゼーゼーを和らげる漢方薬
喘息の発作が起きている急性期には、気管支の炎症を鎮め、痙攣を和らげることで、激しい咳や呼吸困難を緩和することを目的とした漢方薬が用いられます。
西洋薬の吸入薬などと併用されることもあります。
ここでは、発作時の具体的な症状に応じて使われる代表的な漢方薬を紹介します。
ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴と呼吸困難がある場合
呼吸のたびにゼーゼー、ヒューヒューという音がして呼吸が苦しい場合には、「麻杏甘石湯」が代表的な漢方薬です。
この漢方薬は、体の熱を冷ましながら、気管支の炎症を抑えて気道を広げる働きがあります。
比較的体力があり、口が渇き、汗をかく傾向のある人の、激しい咳や呼吸困難感に用いられます。
麻杏甘石湯に、せきや痰を鎮める生薬を加えた「五虎湯」も同様の症状に使われます。
顔を赤くして激しく咳き込む体力のある方向けの漢方薬
体力があり、顔が赤くなるほど激しく咳き込むような発作には、「麻杏甘石湯」や「五虎湯」が適しています。
これらの漢方薬は、体にこもった熱を冷ます作用があるため、炎症が強く熱感を伴う症状に有効です。
特に、黄色く粘り気のある痰が出たり、口の渇きが強かったりする場合に選択されます。
咳の勢いを鎮め、気管支の炎症を和らげることで、呼吸を楽にします。
五虎湯と麦門冬湯の使い分けについては「五虎湯と麦門冬湯の使い分け」で詳しく紹介しています。
水のようにサラサラした痰や鼻水が多い症状に
くしゃみや鼻水、水のようにサラサラとした薄い痰が多く出るような喘息の発作には、「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」が用いられます。
この薬は、体を温めながら体内の余分な「水(すい)」を取り除く働きがあります。
体が冷えることで症状が悪化するタイプの方に適しており、アレルギー性鼻炎を合併している場合にもよく使われます。
体を温めることで気管支の痙攣を和らげ、鼻水や痰を改善します。
小青竜湯と体質改善については「小青竜湯と体質改善」で詳しく紹介しています。
喉の乾燥感が強く、切れにくい痰が絡む咳に使われる漢方薬
コンコンと乾いた咳が続き、喉に乾燥感がある場合や、粘り気が強くて切れにくい痰が絡む場合には、「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」が使われます。
この漢方薬は、気道や喉を潤し、粘膜の乾燥を防ぐことで、しつこい咳を鎮める効果があります。
体力を消耗させるような激しい咳き込みや、咳でのどが痛む症状を和らげます。
特に、顔が赤くなるまで咳き込むような場合に適しています。
麦門冬湯の効果と副作用については「麦門冬湯の効果と副作用」で詳しく紹介しています。
【普段から】発作を起こしにくい体質を目指すための漢方薬
喘息の症状が落ち着いている慢性期(寛解期)には、発作を起こしにくい体作りを目指すことが漢方療法の主眼となります。
アレルギー反応を起こしにくい体質への改善や、免疫力を高めることで、風邪などの感染症をきっかけとする発作を防ぎます。
自分自身の持ち合わせている治癒力を高めることを目的とした漢方薬を選びます。
体力がなく、冷えや疲労感がある方の体質改善に
普段から体力がなく疲れやすい、胃腸が弱く食欲不振、手足が冷えやすいといった「虚証」タイプの方には、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」や「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」などが用いられます。
これらの漢方薬は、消化吸収機能を高めてエネルギーである「気」を補い、体の抵抗力を高める働きがあります。
体力をつけることで、些細なきっかけで喘息発作を起こさないよう、根本的な体質改善を目指します。
寝ている時や夜間に咳が出やすい場合に適した漢方薬
夜間や就寝中に咳が悪化しやすい場合、体が冷えることや、自律神経のバランスが関係していると考えられます。
体が冷えやすく、水っぽい痰や鼻水を伴う場合は「小青竜湯」が選択肢になります。
また、体力が中等度で、咳や喘鳴があり呼吸が苦しい場合には、体を温め発汗を促す「神秘湯」が用いられることもあります。
これらの漢方薬で、夜間のつらい咳を和らげます。
しつこい痰が残り、スッキリしない方向けの漢方薬
慢性的に粘り気の強い痰が切れにくく、咳払いをしてもスッキリしない場合には、「清肺湯」が用いられます。
この漢方薬は、気管支の粘液の分泌を促し、線毛の運動を活発にすることで、しつこい痰を排出しやすくする効果があります。
長年の喫煙などで痰が絡みやすい場合にも使われます。
気道を潤し、炎症を抑えることで、不快な症状の改善を目指します。
咳喘息や子供の喘息にも漢方薬は使える?
漢方薬は、典型的な気管支喘息だけでなく、ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴がない「咳喘息」や、子供の喘息の改善においても選択肢の一つとなります。
特に、西洋薬だけではコントロールが難しい長引く咳や、薬を嫌がる子供に対して、体質に合わせた漢方薬が効果を示すことがあります。
ただし、気管支炎などの他の呼吸器疾患との鑑別も重要です。
長引く乾いた咳が特徴の「咳喘息」におすすめの漢方薬
咳喘息は、喘鳴や呼吸困難はなく、乾いた咳だけが数週間から数ヶ月にわたって続くのが特徴です。
このような空咳には、喉を潤して咳を鎮める作用のある麦門冬湯が第一選択として頻繁に用いられます。
気道の粘膜に潤いを与え、過敏になった状態を和らげることで、しつこい咳の発作を改善します。
特に、冷たい空気や会話などで誘発される咳に適しています。
喉の乾燥を伴う咳と漢方薬については「喉の乾燥・痰・違和感を伴う咳と漢方薬」で詳しく紹介しています。
子供・小児喘息で検討されることが多い漢方薬の種類
子供の喘息の改善では、体の状態や症状に合わせて漢方薬が使われることがあります。
例えば、比較的体力があり、ゼーゼーと激しく咳き込む発作時には「五虎湯(ごことう)」が用いられます。
また、乾いた咳が続く場合には、甘みがあって子供でも比較的飲みやすい「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」が選択されることが多いです。
漢方薬は、子供のデリケートな体質に合わせて慎重に選ぶ必要があります。
喘息で漢方薬を服用する前に知っておきたい注意点
漢方薬は自然由来の生薬から作られていますが、医薬品であることに変わりはなく、体質に合わない場合や誤った使い方をすると、効果が得られないばかりか、予期せぬ副作用を招く可能性もあります。
安全に漢方療法を進めるために、服用前にいくつかの注意点を理解しておくことが重要です。
まずは医師や薬剤師に相談することが重要
漢方薬は、専門家による「証」の見立てに基づいて選択されて初めて効果を発揮します。
自己判断で選ぶと、体質に合わずに症状が悪化する恐れもあります。
特に、喘息は専門的な改善方法が必要な疾患であり、西洋薬との兼ね合いも考慮しなくてはなりません。
漢方薬を希望する場合は、まずは喘息の治療を受けている医師に相談するか、漢方に詳しい医師や薬剤師にアドバイスを求めることが不可欠です。
適切な薬を受けるために、必ず専門家に相談してください。
副作用の可能性があることも理解しておく
漢方薬は副作用が少ないイメージがありますが、決してゼロではありません。
配合されている生薬によっては、体質に合わない場合に胃もたれや食欲不振、下痢などの消化器症状が出ることがあります。
また、複数の漢方薬に含まれる甘草の過剰摂取による偽アルドステロン症や、麻黄による動悸、不眠、発汗過多など、注意すべき副作用も存在します。
体調に異変を感じたら、すぐに服用を中止し、医師や薬剤師に連絡してください。
麻黄附子細辛湯の飲み合わせと副作用については「麻黄附子細辛湯の飲み合わせと副作用」で詳しく紹介しています。
西洋薬と併用する場合は必ず専門家に伝える
喘息治療で吸入薬などの西洋薬を使用している場合、漢方薬を併用する際には必ず医師や薬剤師に伝える必要があります。
薬の組み合わせによっては、互いの効果に影響を与えたり、副作用のリスクを高めたりする可能性があるためです。
例えば、甘草を含む漢方薬と一部の利尿薬を併用すると、低カリウム血症が起こりやすくなることがあります。
お薬手帳などを活用し、服用中のすべての薬を正確に伝え、安全な併用について指導を受けてください。
喘息 漢方薬に関するよくある質問
ここでは、喘息の漢方薬に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式で解説します。
喘息の漢方薬はすぐに効きますか?発作止めとして使えますか?
麻杏甘石湯など急性期に用いる漢方薬は比較的早く効果が現れることもありますが、基本は体質改善が目的です。
吸入薬のような即効性は期待できず、発作を瞬時に止めるための薬ではありません。
発作時は、まず医師から処方された西洋薬を適切に使用することが重要です。
病院で処方される喘息の漢方薬は保険適用になりますか?
医師が喘息の治療に必要と判断して処方する医療用漢方製剤(エキス剤など)は、健康保険が適用されます。
ただし、保険適用となる漢方薬の種類や範囲は国によって定められています。
漢方薬はどこで購入できますか?病院と薬局での違いはありますか?
漢方薬は、医師の診察を受けて処方される「医療用医薬品」と、薬局やドラッグストアで購入できる「一般用医薬品(OTC)」があります。
主な違いは、医療用は保険が適用されるのに対し、一般用は全額自己負担となる点です。
まとめ
喘息の改善における漢方薬は、西洋薬とは異なる視点から体質にアプローチする有効な選択肢の一つです。
重要なのは、発作時の症状を抑えるための薬と、普段から発作が起きにくい体を作るための薬を、その時の状態や体質に合わせて的確に使い分けることです。
自己判断での服用は避け、必ず医師や薬剤師などの専門家に相談の上で、自分の症状と体質に合った漢方薬を選ぶことが安全で効果的な改善につながります。

