不妊症と漢方|漢方を取り入れた身体づくりの基本と活用法

不妊症と漢方|漢方を取り入れた身体づくりの基本と活用法 妊活・不妊

不妊症に悩み、妊娠しやすい体づくりを目指す方に向けて、漢方を用いたアプローチは有効な選択肢の一つです。
漢方では、身体全体のバランスを整えることで、妊娠するための土台作りをサポートします。

この記事では、不妊症・妊活における漢方の基本的な考え方から、体質に合わせた活用法までを解説し、健やかな身体づくりを始めるための情報を提供します。

妊娠に向けた身体づくりで漢方が注目される理由

漢方が妊娠に向けた身体づくりで注目されるのは、西洋医学とは異なる視点で身体を捉え、根本的な体質改善を目指す点にあります。
漢方では、不妊を単に子宮や卵巣の問題としてではなく、身体全体のバランスの乱れが原因と考えます。

そのため、一人ひとりの体質に合わせて「気・血・水」の巡りを整え、妊娠しやすい身体の土台を築くことを重視します。
心身の調和を取り戻し、人が本来持っている妊娠する力を最大限に活かす手助けをします。

漢方医学が考える妊娠しやすい身体の土台とは

漢方医学において、妊娠しやすい身体の土台には「気・血・水」のバランスが不可欠です。
これらは生命活動を維持する基本的な要素であり、これらが滞りなく巡ることで心身ともに健康な状態が保たれます。

特に生殖機能と深く関わるのが「腎」の働きです。
「腎」は生命エネルギーの源であり、成長や発育、生殖を司るため、その機能を高めることがホルモンバランスを整える上で重要となります。
腎の働きを補い、気血を充実させることが、妊娠しやすい身体の基礎を築きます。

漢方と合わせて実践したい妊娠しやすい身体づくりの基本

漢方薬の服用と並行して、日々の生活習慣を見直すことは、妊娠しやすい身体づくりにおいて非常に重要です。
身体は毎日の食事、運動、睡眠といった基本的な生活の積み重ねによって作られています。
漢方の効果を最大限に引き出すためにも、身体の内側と外側、両方からのアプローチが欠かせません。

ここでは、食生活、運動、睡眠の3つの観点から、今日から実践できる身体づくりの基本を紹介します。

身体の内側から整える食生活のポイント

妊娠しやすい身体づくりのためには、栄養バランスの取れた食事が基本となります。
漢方の考え方では、特に身体を温める食材を意識的に摂ることが推奨されます。
生姜やネギ、カボチャといった根菜類は、身体の芯から温め、血行を促進する助けとなります。
また、血を補うとされるほうれん草やレバー、黒豆、黒ゴマなどの黒い食材も積極的に取り入れたい食品です。

一方で、冷たい飲み物や生野菜、白砂糖を多く含む菓子類は身体を冷やす原因となるため、なるべく控えることが望ましいです。
日々の食事を通じて、身体の内側から健やかな状態を育んでいきましょう。

血の巡りを改善する適度な運動のすすめ

血の巡りを良くすることは、子宮や卵巣に十分な栄養と酸素を届け、機能を高めるために不可欠です。
デスクワークなどで長時間同じ姿勢でいることが多いと、骨盤周りの血行が滞りやすくなります。
ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、心地よいと感じる程度の運動を日常生活に取り入れることをおすすめします。
特に、股関節周りを柔軟にするストレッチは、骨盤内の血流改善に効果的です。

激しい運動はかえって身体の負担となり、エネルギーを消耗してしまうこともあるため、無理なく継続できるものを選びましょう。
適度な運動はストレス解消にも役立ち、心身のバランスを整えます。

ホルモンバランスを整える質の良い睡眠

質の良い睡眠は、乱れがちなホルモンバランスを整える上で非常に重要です。
睡眠中には、心身の疲労回復だけでなく、様々なホルモンの分泌が行われます。

特に、夜10時から深夜2時の間は、細胞の修復や再生を促す成長ホルモンが多く分泌される時間帯です。
できるだけ日付が変わる前には就寝し、十分な睡眠時間を確保するよう心がけましょう。
就寝前にスマートフォンやパソコンの画面を見ることは、脳を興奮させて寝つきを悪くするため避けるべきです。
リラックスできる音楽を聴いたり、温かい飲み物を飲んだりして、心身ともに安らげる環境を整えることが、質の良い睡眠につながります。

あなたの体質は?3つのタイプ別に見る漢方でのアプローチ

漢方では、個々の身体の状態や体質を詳しく見極め、それに合わせた漢方薬の選択が基本です。
専門家による丁寧な問診や舌の状態を見る舌診、脈で体調を見る脈診などを通じて、その人に最適な漢方薬が選ばれます。

ここでは、不妊に悩む方によく見られる代表的な3つの体質タイプ「冷え」「血虚(けっきょ)」「瘀血(おけつ)」について、その特徴と用いられる漢方のアプローチを紹介します。
ご自身の体質を知るための参考にしてください。

身体が冷えやすい「冷え」タイプの特徴と使われる漢方

「冷え」タイプは、手足の末端や下腹部が冷えやすく、常に身体の温かさが不足している状態です。
冷えは血行不良のサインであり、子宮や卵巣の働きを低下させる一因となります。

具体的な症状としては、月経痛が重い、むくみやすい、疲れやすい、トイレが近いなどが挙げられます。
このタイプの冷え性には、身体を内側から温めて血行を促進し、余分な水分を取り除く漢方薬が用いられます。
代表的な漢方薬には、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や人参湯(にんじんとう)などがあります。
身体全体の熱産生能力を高め、妊娠しやすい温かい体内環境を整えることを目指します。

栄養やうるおいが不足しがちな「血虚(けっきょ)」タイプの特徴と使われる漢方

「血虚」とは、全身に栄養やうるおいを運ぶ「血(けつ)」が量的に不足したり、質が低下したりしている状態を指します。
顔色が悪く、めまいや立ちくらみが頻繁に起こるほか、髪がパサつく、爪が割れやすい、皮膚が乾燥するといった症状が見られます。

月経に関しては、経血の色が薄く量が少なかったり、周期が長くなったりする傾向があります。
このタイプには、血を補い、身体に栄養とうるおいを与える漢方薬が用いられます。
代表的な漢方薬としては、四物湯(しもつとう)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などが挙げられ、身体の根本から栄養状態を改善していきます。

血の巡りが滞りやすい「瘀血(おけつ)」タイプの特徴と使われる漢方

「瘀血」とは、血の流れが滞り、身体の中に古い血が溜まっている状態のことです。
血行が悪くなることで、様々な不調を引き起こします。

主な症状として、刺すような強い月経痛、経血にレバー状の塊が混じる、子宮筋腫や子宮内膜症がある、肩こりや頭痛がひどい、シミやそばかす、目の下のクマが目立つなどが挙げられます。
このタイプには、滞った血の流れをスムーズにし、古い血を取り除く働きのある漢方薬が用いられます。
代表的な漢方薬には、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、温経湯(うんけいとう)などがあり、骨盤内の血流を改善して妊娠しやすい子宮環境を整えます。

不妊症・妊活で漢方を始める前に知っておきたいこと

不妊症・妊活で漢方を検討する際、どこで相談すればよいのか、費用はどのくらいかかるのか、といった実践的な疑問が生じます。
様々な種類の中から自分におすすめの漢方薬を見つけるためには、正しい情報を知っておくことが大切です。

ここでは、漢方薬の相談場所、保険適用の有無、そして服用する上での注意点など、実際に漢方治療を始める前に押さえておきたい基本的な知識を解説します。

漢方薬はどこで相談して、もらえる?

漢方薬を入手する方法は、主に医療機関と漢方薬局の2つです。
産婦人科や内科などの医療機関では、医師の診察に基づいて漢方薬が処方され、健康保険が適用される場合があります。

一方、漢方薬局や薬店では、薬剤師や登録販売者などの専門家による詳しいカウンセリング(漢方相談)を通じて、体質や症状に合わせた漢方薬や生薬を選んでもらえます。
こちらは基本的に自費診療となりますが、時間をかけてじっくり相談できる利点があります。
また、不妊・妊活領域で使われている動物生薬は保険適応外になります。

どちらも専門家が関わる点では共通していますが、保険適用の可否や相談のスタイルが異なるため、自分の希望や状況に合わせて選ぶことが重要です。

不妊・妊活における漢方薬の保険適用について

「不妊症」という病名そのもので保険適用が認められている漢方薬は非常に限られています。
しかし、不妊の原因となりうる月経不順や月経困難症、冷え性、更年期障害といった付随する症状に対しては、保険適用の漢方薬が処方されるケースが多くあります。

例えば、当帰芍薬散や加味逍遙散、温経湯などは、婦人科系の不調で広く用いられる保険適用の漢方薬です。
また、体外受精の際に着床環境を整える目的で柴苓湯が処方されることもあります。
保険適用での治療を希望する場合は、漢方薬の処方に積極的な産婦人科や内科などの医療機関を受診する必要があります。

漢方薬を服用する上での注意点

漢方薬は自然の生薬から作られていますが、医薬品であるため、副作用が起こる可能性はゼロではありません。
例えば、甘草(カンゾウ)を含む漢方薬を長期に服用すると、偽アルドステロン症によるむくみや高血圧などが起こることがあります。
自己判断で服用したり、用法・用量を守らなかったりすると、思わぬ不調を招くこともあります。

ツムラやクラシエなどの製薬会社のウェブサイトでも情報は得られますが、必ず医師や薬剤師といった専門家の指導のもとで服用を開始してください。
万が一、服用後に胃の不快感や食欲不振、発疹などの症状が現れた場合は、すぐに服用を中止し、処方や漢方薬を選んでもらった専門家に相談することが大切です。

不妊の漢方に関するよくある質問

漢方による不妊治療を始めるにあたり、多くの方が様々な疑問や不安を抱えています。
効果はいつ頃から感じられるのか、現在受けている西洋医学の治療と併用できるのか、また男性側の不妊にも効果があるのか、といった点は特に気になるポイントです。

ここでは、不妊と漢方に関するよくある質問を取り上げ、それぞれの疑問に対して分かりやすくお答えしていきます。

漢方の効果はどのくらいで実感できますか?

漢方薬は、症状を一時的に抑える対症療法とは異なり、体質そのものを根本から改善していくことを目的としています。
そのため、効果を実感するまでにはある程度の時間が必要です。
個人差はありますが、一般的にはまず冷えや月経痛、疲労感といった自覚症状の改善が見られ始め、身体の変化を感じるまでには最低でも3ヶ月程度はかかるといわれています。

妊娠という目標達成までには、半年から1年以上の期間を要することも少なくありません。
焦らずにじっくりと自分の身体と向き合い、専門家と相談しながら服用を続けることが大切です。

西洋医学の不妊治療と併用は可能ですか?

漢方治療と西洋医学の不妊治療は、それぞれの長所を活かしながら併用することが可能です。
例えば、西洋医学でタイミング法や人工授精、体外受精といった治療を進めながら、漢方薬で妊娠しやすい身体の土台づくりをサポートするケースは多く見られます。

漢方を用いて血流を改善し、子宮内膜を厚くしたり、ホルモンバランスを整えたりすることで、西洋医学の治療効果を高めることが期待できます。
併用を希望する場合は、自己判断で行わず、必ず産婦人科の主治医と漢方の専門家それぞれに相談し、情報を共有しながら連携して治療を進めることが重要です。

男性不妊にも漢方は使えますか?

不妊の原因の約半数は男性側にもあるとされており、漢方は男性不妊の治療にも広く用いられています。
漢方では、精子の数が少ない、運動率が低い、勃起不全(ED)といった症状を、生命エネルギーの根源である「腎」の機能低下や、エネルギー不足である「気虚」、血行不良の「瘀血」などが原因と捉えます。

体質に合わせて、気を補う補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や、腎を補う八味地黄丸(はちみじおうがん)などが処方されるケースもあります。
ストレスや疲労を改善し、身体全体のバランスを整えることで、精子の質や機能の向上を目指します。
夫婦で一緒に漢方に取り組むことも有効です。

まとめ

漢方を用いた不妊へのアプローチは、特定の症状を抑えるだけでなく、身体全体のバランスを総合的に整え、妊娠しやすい身体の土台を築くことを目指します。
食生活や運動、睡眠といった日々の養生と漢方薬を組み合わせることで、その効果はより高まります。

不妊に関連する症状に対しては保険適用で漢方薬が処方される場合もあり、専門家への相談が、自分に適した治療法を見つける第一歩になります。
西洋医学との併用も可能であり、それぞれの長所を活かすことで、妊娠に向けた身体づくりを多角的に進めることが可能となります。

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