逆流性食道炎の漢方療法|症状別のおすすめ漢方薬と市販薬の選び方
漢方
逆流性食道炎によるつらい症状の改善には、漢方を活用することも選択肢の一つです。
西洋医学の薬で効果が不十分な場合や、体質から改善したいと考える方にとって、逆流性食道炎に対して、漢方は有効なアプローチとなり得ます。
この記事では、逆流性食道炎の漢方療法について、症状別のおすすめの漢方薬や市販薬の選び方、日常生活でのセルフケアまで詳しく解説します。
はじめに|逆流性食道炎の症状と西洋医学・漢方医学での考え方の違い
逆流性食道炎は、胃酸が食道へ逆流することで胸やけや呑酸などの不快な症状を引き起こす病気です。
西洋医学では主に胃酸分泌抑制薬で症状を抑えますが、漢方医学では症状だけでなく、体全体のバランスの乱れが原因と考えます。
そのため、一人ひとりの体質や原因に合わせて漢方薬を選び、根本的な体質改善を目指す点が大きな違いです。
胸やけ・胃もたれだけではない逆流性食道炎の主な症状
逆流性食道炎の症状は、胸やけや胃もたれ、酸っぱいものがこみ上げてくる呑酸が代表的です。
しかし、それ以外にも多彩な症状が現れることがあります。
例えば、慢性的な咳や、食べ物がつかえるような喉の違和感、声枯れなども逆流性食道炎が原因の場合があります。
また、吐き気やゲップ、腹部の張り、胃痛を感じる人も少なくありません。
これらの症状は食後に悪化しやすい傾向があります。
胸の痛みを感じることもあり、心臓の病気と間違われるケースもあるため、気になる症状があれば自己判断せずに専門医に相談することが重要です。
漢方医学における逆流性食道炎の原因とは
漢方医学では逆流性食道炎を単なる胃酸過多や胃酸の逆流とは捉えません。
その根本原因は体のバランスの乱れにあると考えます。
主な原因として精神的なストレスによる自律神経の乱れが挙げられます。
これにより「気」の流れが滞り胃腸の働きが低下してしまいます。
また加齢や過労、食生活の乱れによる消化機能そのものの弱りや冷えによる血行不良も胃の働きを悪くする要因です。
これらの要因が複合的に絡み合うことで胃酸のコントロールがうまくいかなくなり、逆流を引き起こすと考えられています。
【症状・タイプ別】逆流性食道炎に用いられる代表的な漢方薬
逆流性食道炎の漢方療法では、個々の症状や体質に合わせて最適な漢方薬が選択されます。
一つの症状でも原因が異なれば、服用する薬も変わってくるのが漢方の特徴です。
ここでは、逆流性食道炎に対して、よく用いられる代表的な漢方薬を、主な症状や体質のタイプ別に分けて紹介します。
自分に当てはまるものを探す際の参考にしてください。
胃腸の機能が低下し食欲不振や疲労感がある方向けの漢方
胃腸の働きが弱り、食欲不振や胃もたれ、食後の眠気、全身の疲労感を伴うタイプの方には、「六君子湯(りっくんしとう)」が用いられます。
この漢方は、消化吸収を担う「脾(ひ)」のエネルギーである「気」が不足した「気虚(ききょ)」の状態を改善する代表的な漢方薬です。
胃腸の機能を高めて消化を助け、水分の滞りを取り除くことで、胃もたれや吐き気、食欲不振を和らげます。
また、体にエネルギーを補うことで、疲れやすさや気力低下の改善も期待できます。
体力がなく、痩せ型で胃腸が弱い方の逆流性食道炎に適しています。
喉のつかえ感や気分がふさぎ込むことがある方向けの漢方
胸やけなどの症状は少ないものの、喉に何かが詰まっているような違和感(梅核気:ばいかくき)があり、気分がふさぎ込んだり不安になったりしやすい方には、「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」が適しています。
この漢方は、ストレスなどによって滞った「気」の流れをスムーズにし、自律神経のバランスを整える働きがあります。
気の巡りを改善することで、喉のつかえ感や息苦しさ、動悸などを和らげます。
また、精神的な不安を落ち着かせる効果も期待できるため、ストレスが原因で症状が悪化するタイプの逆流性食道炎や、機能性ディスペプシアにも用いられます。
みぞおちの不快感やゲップが多い方向けの漢方
みぞおちのあたりがつかえて苦しい感じ(心下痞鞕:しんかひこう)や、頻繁に出るゲップ、胸やけ、吐き気、腹鳴りなどの症状が目立つ方には、「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」が用いられます。
この漢方は、胃腸の機能のバランスが乱れ、熱と冷えが混在している状態を整える働きがあります。胃の炎症を鎮めつつ、消化機能を正常化させることで、みぞおちの不快感や吐き気を改善します。ストレスや不規則な食生活で胃の調子を崩しやすく、口内炎ができやすいといった傾向がある人にも適した漢方薬です。
ストレスによる吐き気や食欲の波がある方向けの漢方
ストレスを感じると症状が悪化し、吐き気や腹痛、お腹の張り、食欲に波がある方には、「四逆散(しぎゃくさん)」が用いられることがあります。
この漢方は、ストレスによって滞った「気」の流れを改善し、自律神経のバランスを整える働きがあります。
気の巡りが悪くなると、熱が上半身にこもり、手足の末端が冷えるといった状態になりがちです。
四逆散はこうした状態を改善し、胸や脇腹の張りや痛み、胃痛、吐き気などを和らげます。
イライラしやすく、ため息が多いといった精神的な症状を伴う逆流性食道炎にも適しています。
体力がありストレスで食べ過ぎてしまう方向けの漢方
比較的体力があり、お腹に脂肪が多く、ストレスが原因でつい食べ過ぎてしまう、そして便秘がちであるという方の逆流性食道炎には、「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」が選択肢となることがあります。
この漢方は、体内にこもった熱や余分なものを便や汗として排泄させることで、体調を整える働きがあります。食生活の乱れからくる胃腸の不調や胸やけを改善するとともに、のぼせや肩こり、肥満の解消にも効果が期待できます。特に、暴飲暴食が習慣化し、便秘を伴う場合に適した漢方薬です。
市販の漢方薬を選ぶときに押さえておきたい3つのポイント
逆流性食道炎の症状緩和のために市販の漢方薬を試したい場合、いくつかのポイントを押さえることが大切です。
漢方薬は自分の体質や症状に合ったものを選ばないと、十分な効果が得られない可能性があります。
ここでは、薬局やドラッグストアで市販薬を選ぶ際に確認すべき3つのポイントを解説します。
適切な薬を選ぶための参考にしてください。
ポイント①:自分の体質や症状に合っているか確かめる
漢方薬を選ぶ上で最も重要なのは、自分の体質(証)や症状に合っているかを確認することです。
漢方では、体力が充実している「実証」タイプか、虚弱な「虚証」タイプかによって用いる薬が異なります。
市販薬のパッケージには、対象となる体力や症状が記載されているため、必ず確認しましょう。
「体力中等度以上で」「胃腸が弱く」といった記載が判断の目安となります。
また、胸やけが主症状なのか、喉の違和感が強いのか、ストレスが関わっているのかなど、自分の最もつらい症状に対応した効能・効果を持つ漢方薬を選ぶことが効果への近道です。
ポイント②:継続して服用しやすい形状(剤形)を選ぶ
漢方薬は、一般的に一定期間継続して服用することで効果が現れます。
そのため、自分が無理なく続けられる形状(剤形)を選ぶことも大切なポイントです。
漢方薬には、生薬を煎じた液体の「煎じ薬」のほか、市販ではお湯に溶かして飲む「顆粒・エキス剤」や、そのまま水で飲める「錠剤」、液体タイプの「ドリンク剤」などがあります。
例えば、ツムラやクラシエといったメーカーからは、様々な剤形の漢方薬が販売されています。
漢方特有の味や香りが苦手な方は錠剤、吸収の速さを重視するなら顆粒など、ライフスタイルや好みに合わせて選びましょう。
ポイント③:迷った場合は薬剤師や登録販売者に相談する
どの漢方薬が自分に合っているか判断に迷う場合は、自己判断で選ばずに専門家に相談することをおすすめします。
薬局やドラッグストアには、漢方薬の知識を持つ薬剤師や登録販売者が常駐しています。
専門家に現在の症状や体質、生活習慣などを詳しく伝えることで、数ある市販薬の中から最適なものを提案してもらえます。
また、他の薬を服用している場合の飲み合わせや、副作用のリスクについてもアドバイスを受けることができます。
安心して適切な漢方薬を選ぶために、専門家のサポートを積極的に活用しましょう。
漢方薬を服用する前に知っておきたい注意点
漢方薬は自然由来の生薬から作られているため、体に優しいイメージがありますが、医薬品であることに変わりはありません。
効果がある一方で、体質に合わなければ副作用が起こる可能性もあります。
安心して服用を始めるために、事前に知っておくべき注意点を理解しておきましょう。
特に副作用の可能性や、効果が見られない場合の対処法は重要です。
副作用が起こる可能性も理解しておく
漢方薬でも体質に合わない場合やアレルギー反応として副作用が起こる可能性があります。
代表的な症状としては発疹、かゆみ、食欲不振、胃の不快感、下痢などが挙げられます。
また、まれに間質性肺炎や肝機能障害といった重篤な副作用が起こることもあります。
特に複数の薬を併用する場合や、妊娠中・授乳中の妊婦、そして5歳未満の幼児などへの使用は慎重な判断が必要です。
服用を開始して体に異変を感じた場合はすぐに服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。
事前に専門家へ相談することが安全な使用につながります。
一定期間服用しても改善しない場合は医療機関を受診する
市販の漢方薬を服用しても症状が一向に改善しない場合は、自己判断で長期間服用を続けるのは避けるべきです。
一般的に、1ヶ月から長くとも8週間程度を目安に服用を続け、効果が見られない場合は医療機関の受診を検討してください。
症状が改善しない背景には、選んだ漢方薬が体質に合っていない可能性や、逆流性食道炎以外の病気が隠れている可能性も考えられます。
専門医による正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立てることができ、完治への道筋が見えてきます。
安易な自己判断は、根本的な原因の発見を遅らせるリスクもあります。
薬の効果をサポートする日常生活のセルフケア
逆流性食道炎の改善には漢方薬の服用と合わせて日常生活を見直すことが非常に重要です。
食事の内容や食べ方日中の姿勢就寝時の工夫などセルフケアを実践することで薬の効果を高め症状の再発を防ぐことにつながります。
ここでは胃への負担を減らし胃酸の逆流を防ぐために今日から始められる具体的なセルフケアの方法を紹介します。
胃への負担を減らす食生活の工夫
逆流性食道炎の症状を和らげるためには、胃に負担をかけない食生活が基本です。
脂肪分の多い食事やチョコレート、柑橘類、香辛料などの刺激物は、胃酸の分泌を促進したり、食道と胃のつなぎ目を緩めたりするため、控えるようにしましょう。
食べ過ぎや早食いは胃の内圧を高める原因となるため、腹八分目を心がけ、よく噛んでゆっくり食べることが大切です。
特に夏場は冷たい飲み物や食べ物を摂りがちですが、胃腸を冷やして機能を低下させる恐れがあるため、過剰な摂取は避けるべきです。食後すぐに横になると逆流しやすいため、最低でも2時間は体を起こした状態を保ちましょう。
腹圧をかけない姿勢や服装を心がける
日常生活での姿勢や服装も逆流性食道炎の症状に大きく影響します。
デスクワークなどで長時間前かがみの姿勢を続けたり猫背になったりすると腹部が圧迫されて胃の内圧が高まり胃酸の逆流を引き起こしやすくなります。
日頃から背筋を伸ばすことを意識し適度に休憩を挟んで体を動かすようにしましょう。
またベルトをきつく締めたりコルセットやガードルなど体を締め付ける服装も腹圧を上げる原因となります。
お腹周りにゆとりのある服装を選ぶことも症状を悪化させないための重要なポイントです。
重いものを持ち上げる動作も腹圧を高めるため注意が必要です。
就寝時の体勢を調整して胃酸の逆流を防ぐ
夜間や就寝中に胸やけなどの症状が出やすい方は、寝るときの体勢を工夫することで症状を軽減できる場合があります。
胃の中に食べたものが残っている状態で横になると胃酸が逆流しやすくなるため、就寝前の2~3時間は食事を控えることが理想的です。
また、完全に平らな状態で寝るよりも、上半身を少し高くすると、重力によって胃酸の逆流が起こりにくくなります。
枕を高くするだけでなく、バスタオルやクッションを背中から頭にかけてなだらかに置き、上半身全体を10~15度ほど高くすると効果的です。
体の左側を下にして寝ることも、胃の形状から逆流防止に有効とされています。
まとめ
逆流性食道炎の改善において、漢方薬は症状の緩和だけでなく、根本的な体質改善を目指す上で有効な選択肢です。
漢方療法では、胃腸の機能低下やストレス、冷えといった個々の原因に合わせた漢方薬が選ばれます。
市販薬を利用する際は、自分の体質や症状に合ったものを選び、継続しやすい形状のものを選ぶことが重要です。
しかし、漢方薬にも副作用のリスクはあり、一定期間服用しても改善が見られない場合は、医療機関を受診する必要があります。
また、薬の効果を最大限に引き出すためには、食生活の改善や姿勢の工夫といったセルフケアを並行して行うことが不可欠です。
不明な点があれば、医師や薬剤師などの専門家に相談しましょう。
