なかなか妊娠に至らないという方は、不妊症のセルフチェックを行いましょう
妊娠を望む方の中には、なかなか赤ちゃんに恵まれず、不妊症なのではないかと不安になってしまって…という方がいらっしゃると思います。
いわゆる「不妊」の状態にお悩みの方は、セルフチェックを行いましょう。
ご自身のお身体の状態を把握されることが、妊娠への第一歩です。
妊娠は男性と女性、どちらかだけで成立するものではありませんから、ご夫婦双方でチェックを行うことをおすすめいたします。
女性は基礎体温表をつけることから始めましょう
妊娠は排卵された卵子と精子が出会い受精卵となり、受精卵が子宮内膜に着床することで成立するため、女性側の排卵のタイミングで夫婦生活を持たなければ、精子と卵子は出会うことができません。
ご自身でタイミングを見て夫婦生活を持つ場合、女性側は基礎体温表をつけましょう。
これまで排卵日を把握していなかったのであれば、基礎体温表から割り出した排卵日の前後に夫婦生活を持つことで、自然妊娠が期待できます。
基礎体温の測定方法
基礎体温とは、朝目が覚めた直後に測る、身体が一番安静な状態のときの体温のことです。
正しい検温を行うためには、通常の体温計ではなく小数点第2位まで表示することのできる基礎体温計を用意します。
朝目が覚めた直後に検温を行えるよう、夜眠る前に、枕元に基礎体温計を置いておきます。
目が覚めたらすぐに舌の裏側に体温計を差し込んで、口を閉じた状態でなるべくじっとしたまま測定終了を待ちます。
2ヶ月程度の短い期間でも丁寧に基礎体温表を記入していれば、排卵が正常に行われているかどうかなどを判断することができます。
基礎体温表をつけることは、自宅で行うことのできる不妊症のセルフチェックなのです。
正常な基礎体温のグラフは、二層に分かれている状態
「低温期」と「高温期」が14日前後の感覚で交互に繰り返されていて、グラフが二層に分かれている状態が、正常な基礎体温と言えます。
基礎体温が正常である場合、低温期から高温期に移行したあとは、高温期が10日以上続きます。
また、そのときの低温期と高温期の温度差は0.3度以上あります。
基礎体温がきれいな二相に分かれている場合には、卵巣の働きは正常で、排卵もきちんと行われていると考えられるでしょう。
基礎体温表に異常が見られない場合には、基礎体温表をもとに、排卵期に合わせて夫婦生活を持つことで、自然妊娠が期待できます。
排卵期
排卵は低温期の中でもっとも体温が低い日に起こる、と言われていますが、ほとんどの方は低温期から高温期に移行するまでの1~3日間のどこかで排卵が起きています。
月経が終わってから次の月経が始まるまでのちょうど真ん中あたり、つまり排卵日の前2、3日は、もっともおりものの量が増える期間とされ、いわゆる「排卵期」に当たります。
この排卵期に、卵胞から卵子が飛び出す「排卵」が起こります。
基礎体温表が二相に分かれていない場合に考えられること
基礎体温のグラフが二層に分かれない場合には、無排卵の可能性が考えられます。
また、グラフの高温期が短く、10日以内である、という場合、黄体ホルモンの働きが低下している可能性が考えられます。
黄体ホルモンの働きが低下すると、受精卵が着床しにくい状態であったり、卵胞の育成が十分に行われないことがあります。
この状態が長く続いている場合には妊娠は難しく、医療機関で不妊症と診断されます。
月経の状態を確認する
不妊を疑う場合には、女性側の月経周期にも注目しましょう。
月経が始まったその日から、次の月経が始まる前日までが「月経周期」です。
正常な月経周期は25~38日とされ、24日以内の周期が短いものを頻発月経、39日以上開いた場合には稀発月経と呼ばれます。
また、正常な月経の期間は、3~7日間です。
1~2日で終わってしまう場合を過短月経、8日以上続く場合には、過長月経と言われます。
頻発月経の場合には黄体機能不全、稀発月経の場合には排卵障害などの不妊症の可能性が考えられます。
月経量が多いことや強い月経痛がある場合に考えられること
月経量が多い、月経痛が強いといった症状がある方の場合、子宮筋腫や子宮内膜症の可能性が考えられます。
「子宮内膜症」とは、子宮内膜以外のところに子宮内膜ができてしまう病気です。
子宮内膜というのは名前の通り、子宮の内側で育てられる「膜」のことを指します。
女性ホルモンの作用によって子宮内膜がふかふかになり、受精卵を着床しやすくなるよう準備が進みます。
妊娠に至らなかった場合には、この子宮内膜が剥がれ落ち、月経となるわけですが、子宮内膜が子宮の内側以外の、卵巣や卵管、あるいは子宮の外にできることがあります。
この場合にも同じように子宮内膜は厚くなり、剥がれ落ちることで出血に至ります。
子宮の内側以外にできた子宮内膜の発育、剥離が何度も繰り返されることで、炎症が起こり、プロスタグランジンという、強い痛みの原因となる物質の分泌量を増加させることがあります。
また、子宮筋腫それ自体は良性の腫瘍ですが、筋腫ができた場所によっては不妊症の原因ともなります。
子宮筋腫の主な症状として月経量の増加と月経痛が挙げられますが、漿膜(しょうまく)という、子宮の外側を覆う膜に筋腫が出来た場合、大きくなるまで何も症状が現れないということも少なくありません。
男性側に何らかの原因が潜んでいる場合もあります
避妊をせずに夫婦生活を持っているにもかかわらず妊娠しない、という場合、考えられるのはもちろん、女性側の問題だけではありません。
妊娠を妨げている何らかの原因が男性側にある場合、先天性と後天性のものがあります。
男性側の先天性の原因として、体質や遺伝的要因、発育の過程で受けた影響などによる「性機能不全」が考えられます。
「性機能不全」には、勃起障害や射精困難の症状も含まれています。
マスターベーションは可能だが夫婦生活が困難という場合には、男性側の不妊症のひとつである勃起障害が疑われます。
また、射精に至っても精液の量が少ないという方の場合、精液減少症、あるいは無精子症の可能性があります。
無精子症とは精液中に精子が全く存在しない状態のことを指し、造精機能障害の中でも重い症状とされています。
精巣に精子自体が存在している場合には、顕微授精などの不妊治療を行うことで受精・妊娠が可能です。
一方で後天性の男性不妊の場合にはストレスや過労、睡眠不足、過度の飲酒や喫煙、偏った食生活などの生活習慣が原因となっている場合が考えられます。
不規則な生活習慣は身体機能をも乱れさせる
生活習慣が不妊の原因となるのは、男性だけではなく、女性も同様です。
男女双方ともに、現代ではフルタイムで働いている方が大勢いらっしゃいます。
日中東奔西走したのち、深夜の遅い時間に帰宅するといったストレスフルな生活を送っているという方も少なくないと思います。
ストレスや睡眠不足は自律神経を乱れさせる大きな原因となります。
女性の場合、卵巣機能と関係のあるホルモンの分泌は、脳の視床下部が司令塔となって行われています。
この視床下部は、同時に自律神経も司っています。
そのため、自律神経が乱れることで、視床下部の下にある脳下垂体からのホルモン分泌が不安定になり、月経異常や排卵障害を引き起こしてしまうのです。
不妊の状態にお悩みの方にとっては、ご自身の生活を省みることが、一番のチェック方法とも言えます。
不規則な生活により自分の身体の機能を低下させていないかを振り返ってみましょう。
基礎体温表や月経周期に不安のある女性の方や、精液の状態が気になるという方は、医療機関を受診することで、妊娠を妨げている原因が判明する場合もあります。
いずれの場合にもおひとりで抱え込まず、ご夫婦で互いの理解を深めながら妊娠を目指しましょう!