産後のPMSは漢方で改善|酷いイライラ・ホルモンバランスの乱れに

産後のPMSは漢方で改善|酷いイライラ・ホルモンバランスの乱れに 漢方

産後に生理が再開してから、以前よりPMS(月経前症候群)の症状がひどいと感じる方は少なくありません。
特に、コントロールできないほどのイライラや気分の落ち込みは、育児中の心身にとって大きな負担となります。
その主な原因は、出産による急激なホルモンバランスの乱れや体力消耗、慣れない育児のストレスです。

漢方薬は、乱れた心身のバランスを整え、体質から不調の根本的な改善を目指すため、産後のつらいPMS症状の緩和に適しています。

なぜ?産後にPMS(月経前症候群)の症状がひどくなる3つの原因

産後、初めてPMSを発症したり、以前よりも症状がひどくなったと感じたりする女性は多くいます。
PMS(月経前症候群)とは、月経の3~10日ほど前から始まる精神的・身体的な不調で、月経が始まると症状が和らぐのが特徴です。
産後に症状が悪化する背景には、出産という大きな体の変化と、育児という新しい生活環境が複雑に関係しています。

主な原因として「ホルモンバランスの変化」「心身の疲労とストレス」「気と血の不足」の3つが挙げられます。

原因①:出産と授乳による急激なホルモンバランスの変化

妊娠から出産にかけて、女性の体内のホルモン環境は劇的に変化します。
特に出産後は、妊娠中に分泌が抑えられていた女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が再開し、そのバランスが不安定になりがちです。

この急激なホルモンの変化が自律神経の乱れを引き起こし、感情の起伏が激しくなったり、身体的な不調が現れたりするなど、PMS症状を悪化させる直接的な原因となります。

原因②:慣れない育児による心身の疲労とストレスの蓄積

出産後は、昼夜を問わない授乳やおむつ替え、赤ちゃんの夜泣き対応など、慣れない育児によって慢性的な睡眠不足に陥りがちです。
自分のペースで生活できないことや、社会から孤立しているような感覚は、大きな精神的ストレスとなります。
このような心身の疲労とストレスの蓄積は、ホルモンバランスの乱れをさらに助長し、イライラや不安感、気分の落ち込みといったPMSの精神症状をよりつらいものにします。

症状が重くなると産後うつにつながる可能性もあるため、注意が必要です。

原因③:出産で消耗した体力「気」と栄養「血」の不足

東洋医学では、出産は多量のエネルギーである「気」と、血液や栄養素を指す「血」を消耗する、体に大きな負担をかける行為と考えられています。
この気と血がともに不足した状態を「気血両虚」と呼びます。
気血が不足すると、激しい疲労感やめまい、立ちくらみ、不眠、冷えといった全身の不調が現れやすくなります。

この産後の体力低下がベースにあることで、生理前になるとPMS特有の強い眠気や頭痛、腹痛といった身体症状がより顕著に感じられるようになります。

産後のつらいPMSには体質から整える漢方薬がおすすめ

産後のPMSに対して、西洋医学では痛み止めや低用量ピル、精神安定剤などが用いられますが、これらは症状を一時的に抑える対症療法が中心です。
一方、漢方薬は、心と体のバランスの乱れを根本的な原因と捉え、体質そのものを改善していくことを目指します。
産後の体力低下(気血の不足)を補い、ホルモンバランスの乱れを整え、ストレスによる気の滞りを解消するなど、一人ひとりの状態に合わせて多角的にアプローチできるのが漢方薬の強みです。

つらい症状の緩和と再発予防の両面から、産後のPMS対策として有効な選択肢となります。

【症状・悩み別】産後のPMS改善に使われる代表的な漢方薬

産後のPMSに用いられる漢方薬は、現れている症状やその人の体質によって異なります。
感情のコントロールが難しい、疲れが取れない、体が冷えるなど、自身の悩みに合わせて適切な漢方薬が選ばれます。

ここでは、産後のPMS改善によく使われる代表的な漢方薬を、具体的な症状や悩みに沿って紹介します。
ただし、最適な薬は専門家による判断が必要なため、あくまで参考情報としてご覧ください。

コントロールできないイライラや不安感を鎮めたいなら「加味逍遙散」

加味逍遙散は、乱れた気の巡りを整え、体内にこもった余分な熱を冷ますことで、精神的な高ぶりを鎮める漢方薬です。
特に、体力が中等度以下で疲れやすく、イライラ、怒りっぽさ、不安感、不眠、のぼせ、肩こりといった多彩な精神神経症状に効果が期待できます。
ツムラの医療用医薬品では製品番号24として知られており、産後や更年期など、ホルモンバランスが乱れやすい女性の不調に広く用いられる処方です。

怒りっぽく子どもに当たってしまう自己嫌悪には「抑肝散」

抑肝散(よくかんさん)は、高ぶった神経を鎮め、筋肉の緊張を和らげる働きがあります。
もともとは子どもの夜泣きやひきつけに用いられていましたが、現在では怒りやすい、イライラが激しい、不眠、歯ぎしりなど、大人の神経症や更年期障害、認知症の周辺症状にも応用されています。
理由もなくカッとなり、子どもに当たってしまった後に自己嫌悪に陥るような、感情のコントロールが難しい場合に適しています。

心身の緊張を解きほぐし、穏やかな気持ちを取り戻す手助けをします。

強い疲労感や体の冷え・むくみが気になるなら「当帰芍薬散」

当帰芍薬散は、不足した血を補い、全身の血行を促進するとともに、体内の水分代謝を整える働きを持つ漢方薬です。
産後の体力低下に加え、貧血気味で疲れやすく、めまい、立ちくらみ、頭重感、肩こり、冷え、そして特に足腰のむくみなどが気になる場合に適しています。
体を内側から温め、栄養を与えることで、PMSに伴う身体的な不調を改善に導きます。

体力虚弱な女性の聖薬とも呼ばれ、産前産後の不調に幅広く用いられます。

産後の体力低下と貧血気味からくる不調には「芎帰調血飲」

芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)は、その名の通り「血」の巡りを整えることで、産後の様々な不調を改善するために作られた漢方薬です。
出産で消耗した「気」と「血」を補い、血行を促進することで、産後の体力低下、疲労倦怠、貧血、めまい、食欲不振、悪露が長引くといった症状を和らげます。
産後の「血の道症」に広く用いられる代表的な漢方薬です。

同じく血の巡りに関わる症状には桂枝茯苓丸などもありますが、芎帰調血飲は特に産後の体力消耗を補う点に特徴があります。

授乳中に漢方を服用しても赤ちゃんに影響はない?

「漢方薬は自然由来だから安全」というイメージがあるかもしれませんが、薬であることに変わりはなく、有効成分が含まれています。
服用した漢方薬の成分の一部は母乳に移行する可能性があり、赤ちゃんに影響を与えることも否定できません。
特に、下剤成分である大黄(だいおう)や、発汗を促す麻黄(まおう)などが含まれる処方は、授乳中は避けるべきとされる場合があります。

自己判断での服用は絶対に避け、まずはかかりつけの産婦人科や漢方に詳しい医師、薬剤師に相談することが重要です。

自己判断は危険!服用前には必ず医師や薬剤師に相談を

漢方薬は、その人の体質や症状に合った「証(しょう)」を見極めて選択されることで、初めて効果を発揮します。
自己判断で選んだ薬が体質に合っていない場合、効果がないばかりか、胃もたれや下痢、発疹などの副作用を引き起こす可能性があります。
特に授乳中は、赤ちゃんへの安全性を最優先に考える必要があります。

産後のデリケートな時期の不調には、産婦人科や漢方に詳しい婦人科を受診し、授乳中であることを明確に伝えた上で、専門家の診断のもとで適切な漢方薬を処方してもらうようにしましょう。

母乳への影響を最小限にするための服用タイミング

授乳中に漢方薬を服用する場合、医師や薬剤師から服用タイミングについて特別な指示があるかもしれません。
一般的に、母乳への影響をできるだけ少なくする方法として、授乳の直後に漢方薬を服用することが推奨されることがあります。
これは、服用から時間が経つにつれて薬の血中濃度が下がり、次の授乳時間には母乳中へ移行する成分量を最小限に抑えられる可能性があるためです。

ただし、これはあくまで一般的な考え方であり、薬の種類によっても異なるため、必ず専門家の指示に従ってください。

漢方と併せて実践したい!産後のPMS症状を和らげるセルフケア

漢方薬で体質改善を目指すとともに、日々の生活習慣を見直すことで、PMSの症状はより和らぎやすくなります。
育児に追われる中で自分の時間を確保するのは難しいかもしれませんが、心と体のバランスを整えるために、無理のない範囲でセルフケアを取り入れることが大切です。
食事や運動、そして周囲のサポートを得ながら、つらい時期を乗り越えていきましょう。

栄養バランスを意識した食事で心と体を満たす

食生活は、心身の状態に直接影響します。
特に、血糖値の急激な上昇と下降は、イライラや気分の落ち込みを招きやすいため、白米やパン、甘いお菓子などの精製された糖質の摂りすぎには注意が必要です。
野菜やきのこ、海藻類、玄米など、血糖値の上昇が緩やかな食品を意識的に選びましょう。

また、精神を安定させる働きのあるカルシウムやマグネシウム、女性ホルモンの代謝を助けるビタミンB6、血液の材料となる鉄分などを積極的に摂ることも、PMS症状の緩和につながります。

無理のない範囲の軽い運動で気分転換を図る

産後の体力回復や気分転換には、軽い運動が効果的です。
天気の良い日に赤ちゃんと一緒に散歩に出かけたり、室内でできるストレッチやヨガを行ったりするだけでも、血行が促進され、心身のリフレッシュになります。
運動には、幸福感をもたらす神経伝達物質「セロトニン」の分泌を促す効果もあり、憂うつな気分を和らげるのに役立ちます。

体調や天候に合わせて、決して無理をせず、「気持ちいい」と感じる範囲で行うことが継続のコツです。

一人で抱え込まずパートナーや家族に協力を求める

産後の母親は、育児の責任感から「自分がすべてやらなければ」と一人で頑張りすぎてしまう傾向があります。
しかし、一人でストレスや疲労を抱え込むことは、PMSの症状を悪化させる大きな要因となります。
つらい時は、「つらい」と声に出してパートナーや家族に伝え、家事や育児の協力を求めましょう。

一時的に赤ちゃんを預けて一人の時間を作る、話を聞いてもらうだけでも、心の負担は大きく軽減されます。
地域の産後ケアサービスやファミリーサポートなどを利用するのも良い方法です。

産後のPMSと漢方に関するよくある質問

ここでは、産後のPMSに対する漢方療法を検討する際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。

漢方薬は飲み始めてからどのくらいで効果を実感できますか?

体質や症状によりますが、一般的に2週間から1ヶ月程度で何らかの変化を感じ始めることが多いです。
漢方薬は、症状を一時的に抑えるのではなく、体質を根本から改善していくため、即効性は期待しにくいです。
効果を実感するためには、まず一定期間、焦らずに服用を続けることが大切です。

病院で処方される漢方と市販の漢方薬では何が違いますか?

病院で処方されるのは医療用医薬品で、医師が診断に基づいて選び、健康保険が適用されます。
一方、市販薬は一般用医薬品(OTC医薬品)で、薬剤師のアドバイスのもと自己判断で購入できます。

漢方薬に副作用はありますか?

はい、漢方薬にも副作用はあります。
天然由来の生薬が原料ですが、体質に合わない場合は、食欲不振や胃もたれ、下痢などの消化器症状や、皮膚の発疹、かゆみなどが起こる可能性があります。
まれに肝機能障害などの重篤な副作用もあるため、服用後に異変を感じたら直ちに中止し、医師や薬剤師に相談してください。

まとめ

産後にPMSの症状が悪化する主な原因は、ホルモンバランスの急激な変化、育児による心身のストレス、そして出産による体力と栄養の消耗です。
漢方薬は、これらの根本原因に働きかけ、心身のバランスを整えることで体質からの改善を目指すため、産後のPMSの改善において有効な選択肢となります。
症状に合わせて加味逍遙散や抑肝散、当帰芍薬散などが用いられますが、授乳中の服用には注意が必要です。

服用前には必ず医師や薬剤師に相談し、適切薬を受けるようにしてください。
また、漢方薬と並行して、栄養バランスの取れた食事や軽い運動、周囲への協力要請といったセルフケアを実践することも、症状緩和には重要です。

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