生理前の喉が詰まる感じは漢方で改善!痛み・イガイガにおすすめ

生理前の喉が詰まる感じは漢方で改善!痛み・イガイガにおすすめ 漢方

生理前だけ喉に何かが詰まる感じがしたり、イガイガや痛みを感じたりする不調に悩む方は少なくありません。
こうした症状は、女性ホルモンの変動が引き起こす月経前症候群(PMS)の一つと考えられます。

西洋薬での対症療法だけでなく、体質から見直すアプローチとして漢方薬がおすすめです。
この記事では、生理前の喉の不調の原因を解説し、症状に合わせた漢方薬の選び方や、日々のセルフケアについて紹介します。

なぜ?生理前に喉が詰まる感じがする3つの原因

生理前に限定して喉の詰まりや違和感を覚えるのは、いくつかの要因が複雑に絡み合っています。
主な原因として挙げられるのが、周期的に変動する女性ホルモンのバランス変化、それに伴う自律神経の乱れ、そして精神的な落ち込みやイライラからくるストレスです。

これらの要因が互いに影響し合い、喉の粘膜や筋肉に作用することで、不快な症状を引き起こします。

女性ホルモンのバランス変化が喉に与える影響

生理周期は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンの分泌量によってコントロールされています。
特に排卵後から生理前にかけての黄体期は、プロゲステロンの分泌が増加する時期です。
このプロゲステロンには体内に水分を溜め込む作用があるため、全身がむくみやすくなります。

喉の粘膜も例外ではなく、むくむことによって気道が狭くなり、詰まるような感覚や圧迫感が生じることがあります。
また、ホルモンバランスの急激な変化は、喉の粘膜の乾燥を引き起こし、外部からの刺激に敏感にさせ、イガイガ感や軽い痛みの原因にもなります。

自律神経の乱れが引き起こす喉の違和感

女性ホルモンのバランスは、心身の状態をコントロールする自律神経と密接に関連しています。
生理前はホルモンバランスが大きく変動するため、自律神経も乱れやすくなります。
自律神経が乱れると、交感神経が過剰に働き、喉周りの筋肉が異常に緊張することがあります。

この筋肉の緊張が、喉に球が詰まっているかのような異物感(ヒステリー球や咽喉頭異常感症とも呼ばれる)を引き起こすのです。
実際には何も異常がないにもかかわらず、飲み込もうとしても取れない不快感が続くのが特徴で、不安感が強いと症状が悪化する傾向が見られます。

精神的なストレスが喉の症状を悪化させる仕組み

生理前は、幸福感に関わる脳内物質セロトニンの分泌が減少し、精神的に不安定になりやすい時期です。
ささいなことでイライラしたり、理由もなく不安になったり、気分が落ち込んだりすることが増えます。
こうした精神的なストレスは、自律神経の乱れをさらに助長し、喉の筋肉の緊張を高める悪循環を生み出します。

特に、不安や抑うつ気分が強く現れる月経前不快気分障害(PMDD)の場合、喉の詰まり感といった身体症状も強く出ることがあります。
精神的な負担が身体症状として現れる代表的な例であり、ストレスが喉の違和感を悪化させる大きな要因となります。

生理前の喉の不快感に漢方薬がアプローチする仕組み

西洋医学が症状そのものを抑えることを目的とするのに対し、漢方医学では症状を体からのサインと捉え、その根本原因である体全体のバランスの乱れを整えることを目指します。
生理前の喉の不快感も、喉だけの問題ではなく、ホルモンバランスや自律神経、精神状態の乱れが引き起こす全身の不調の一つと考えます。

そのため、漢方薬は心と体の両面に働きかけ、体質から改善していくアプローチを取ります。

「気・血・水」の乱れを整えて体質から見直す

漢方では、私たちの体は「気」「血」「水」の3つの要素で構成され、これらがバランス良く体内を巡ることで健康が保たれると考えます。
生理前の喉の詰まり感は、主に生命エネルギーである「気」の流れが滞る「気滞」の状態が原因とされます。
ストレスや不安によって気の巡りが悪くなると、喉のあたりで気が滞り、梅の種が詰まったような異物感(梅核気)として感じられます。

また、ホルモンバランスの乱れは、栄養を運ぶ「血」や体内の水分である「水」の巡りにも影響を与え、症状を複雑化させます。
漢方薬はこれらの乱れを整え、体質から改善を図ります。

心と体の複数の不調にまとめて働きかける

漢方薬の大きな特徴は、一つの処方で心と体に現れる複数の症状に同時にアプローチできる点です。
生理前には、喉の詰まり感以外にも、イライラ、不安感、頭痛、肩こり、むくみ、冷えといった様々な不調が現れることが少なくありません。

例えば、気の巡りを改善する漢方薬は、喉の異物感を和らげると同時に、気分の落ち込みや不安感を落ち着かせる効果も期待できます。
このように、症状を個別に捉えるのではなく、全身のつながりの中で捉え、根本原因に働きかけることで、心身全体のバランスを整え、不快な症状をまとめて改善へと導きます。

【症状別】生理前の喉の詰まり感におすすめの漢方薬3選

生理前の喉の不調と一言でいっても、その症状の現れ方や、同時に起こる他の不調は人によって様々です。
漢方治療では、個々の症状や体質(証)に合わせて最適な処方を選びます。

ここでは、喉の詰まり感によく用いられる代表的な漢方薬を、ツムラやクラシエなどの医療用漢方製剤としても処方や販売されている3種類、症状別に紹介します。
自分に合うものを見つけるための参考にしてください。

喉の異物感や不安感には「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」

半夏厚朴湯は、気の巡りを良くして、喉のつかえ感を取り除く代表的な漢方薬です。
喉に何かが詰まっているような、飲み込もうとしても飲み込めず、吐き出そうとしても出ない異物感(梅核気)に特に効果的です。
精神的なストレスや不安感が強く、気分がふさぎがちで、動悸やめまいを伴う場合にも適しています。

体力が中等度くらいの方で、胃腸が弱いわけではない場合に用いられることが多い処方です。
ストレスによって気の流れが滞りやすい方の、神経性の喉の症状を和らげるのに役立ちます。
漢方的には、胃内停水といって、胃に水が溜まりやすい状態の方にオススメです。

イライラやほてりを伴うなら「加味逍遙散(かみしょうようさん)」

加味逍遙散は、気の巡りを整えるだけでなく、滞った血の巡りを改善し、体内にこもった余分な熱を冷ます働きがあります。
喉の詰まり感に加えて、生理前に特にイライラが強くなる、怒りっぽい、顔がのぼせたりほてりを感じたりする、頭痛や肩こりがひどいといった症状がある場合におすすめです。

体力があまりなく、疲れやすい虚弱体質な方向けの処方で、月経前症候群(PMS)や更年期障害など、女性特有のホルモンバランスの乱れに伴う精神神経症状に幅広く用いられます。

冷えやむくみも気になる場合は「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」

当帰芍薬散は、血を補いその巡りを良くするとともに、体内の余分な水分を排出して水分のバランスを整える働きがあります。
そのため、喉の症状のほかに、手足が冷えやすい、顔や足がむくむ、めまいや立ちくらみがする、疲れやすいといった症状を伴う場合に適しています。

血行不良や水分の滞りが原因で起こる不調を改善します。
特に、体力がなく痩せ型で、貧血傾向のある女性の月経不順やPMSによく用いられる漢方薬です。
全身の巡りを良くすることで、喉の不調を含む様々な症状を緩和します。

漢方薬を服用する前に知っておきたい注意点

漢方薬は自然の生薬から作られているため、体に優しいイメージがありますが、医薬品であることに変わりはありません。
効果を最大限に引き出し、安全に使用するためには、いくつかの注意点があります。

特に、自分の体質に合ったものを選ぶこと、副作用の可能性を理解しておくこと、そして専門家への相談が重要です。
これらを理解した上で、正しく漢方薬を取り入れることが求められます。

自分の体質に合った漢方を選ぶことが最も重要

漢方治療の根幹は、「証」と呼ばれる個人の体質や状態を見極め、それに合った薬を選ぶことにあります。
同じ喉の詰まりという症状でも、体力があり、がっちりしたタイプ(実証)か、体力がなく疲れやすいタイプ(虚証)かによって、適した漢方薬は異なります。

また、体が冷えているのか、熱がこもっているのかといった点も重要な判断材料です。
インターネットの情報などを見て自己判断で選んでしまうと、効果が得られないだけでなく、かえって体調を悪化させてしまう可能性もあります。
症状だけでなく、全身の状態を総合的に見て、自分の体質に合った漢方薬を選ぶことが何よりも大切です。

副作用の可能性と体に合わない場合のサイン

漢方薬にも副作用は存在します。
比較的多いのは、胃の不快感、食欲不振、下痢、便秘といった消化器系の症状や、皮膚の発疹やかゆみなどです。
これらは、漢方薬が体に合っていないサインである可能性があります。

また、頻度は低いものの、偽アルドステロン症(手足のしびれ、むくみ、高血圧)、間質性肺炎(空咳、息切れ、発熱)、肝機能障害(だるさ、黄疸)といった重篤な副作用が起こることも報告されています。
服用を開始してから、いつもと違う気になる症状が現れた場合は、すぐに服用を中止し、処方した医師や薬を選んでもらった薬剤師に相談することが必要です。

まずは医師や薬剤師などの専門家に相談しよう

最適な漢方薬を選ぶためには、専門家のアドバイスを受けるのが最も安全で確実な方法です。
漢方に詳しい医師や薬剤師は、症状だけでなく、体格、顔色、声の調子、生活習慣などを総合的に診て、その人の体質に最も合った漢方薬を選んでくれます。

医療機関で処方してもらうほか、漢方薬局や一部のドラッグストアでも専門の薬剤師に相談できます。
特に、他に治療中の病気があったり、常用している薬があったりする場合は、飲み合わせの問題もあるため、必ず専門家に伝えるようにしてください。
自己判断で始める前に、一度相談することをおすすめします。

漢方とあわせて実践したい!喉の詰まり感を和らげるセルフケア

漢方薬で体質改善を目指すと同時に、日々の生活習慣を見直すことで、より効果的に症状を和らげることができます。
特に生理前のデリケートな時期は、少しの工夫が心と体の安定につながります。

ここでは、喉の乾燥対策、リラックス法、食事のポイントという3つの観点から、今日からでも始められるセルフケアの方法を紹介します。
漢方薬による内側からのアプローチと、セルフケアによる外側からのケアを組み合わせましょう。

喉の乾燥を防ぐための加湿とこまめな水分補給

喉の粘膜が乾燥すると、外部からの刺激に対して敏感になり、イガイガや詰まる感じといった症状が悪化しやすくなります。
空気が乾燥する季節や、エアコンの効いた室内では、加湿器を使用したり、洗濯物を室内に干したりして、湿度を50~60%程度に保つように心がけましょう。
外出時にはマスクを着用するだけでも、自分の呼気で喉の湿度を保つ効果があります。

また、喉を内側から潤すことも重要です。
カフェインやアルコールは利尿作用があり、かえって体の水分を奪ってしまうため控えめにし、水や白湯、ノンカフェインのお茶などでこまめに水分を補給してください。

心身の緊張をゆるめるリラックス法を取り入れる

生理前の喉の違和感は、ストレスや自律神経の乱れによる筋肉の緊張が大きく関わっています。
そのため、意識的に心と体をリラックスさせる時間を作ることが症状の緩和につながります。
ぬるめのお湯(38~40℃)にゆっくりと浸かる入浴は、副交感神経を優位にし、全身の血行を促進します。

深い呼吸を意識する腹式呼吸や、簡単なストレッチ、ヨガなども、心身の緊張をほぐすのに効果的です。
また、好きな音楽を聴く、アロマオイルの香りを楽しむなど、自分が心地よいと感じる方法を見つけ、日々の生活に積極的に取り入れることが、自律神経のバランスを整える助けになります。

喉に負担をかけない食生活のポイント

食事の内容も、喉のコンディションに影響を与えます。
唐辛子などの香辛料を多く使った刺激の強い食べ物や、熱すぎるもの、冷たすぎる飲み物は、喉の粘膜を直接刺激し、症状を悪化させる可能性があるため、生理前はなるべく避けるようにしましょう。
逆に、喉の粘膜を潤し、炎症を和らげる効果が期待できる食材を摂るのがおすすめです。

はちみつや大根、れんこん、しょうがなどは、古くから喉に良いとされています。
これらの食材をスープや飲み物に加えるなど、工夫して食事に取り入れてみてください。
栄養バランスの取れた食事を三食きちんと摂ることが、体全体の調子を整え、不調の改善につながります。

こんな症状は要注意!医療機関を受診するべきサイン

生理前に起こる喉の不調は、多くの場合、ホルモンバランスの変化による一過性のものですが、中には注意が必要なケースもあります。
単なるPMSの症状と自己判断せず、他の病気が隠れていないかを見極めることが重要です。

これから挙げるような症状が見られる場合は、セルフケアで様子を見るのではなく、早めに耳鼻咽喉科や内科などの医療機関を受診することを検討してください。

痛みが強く、食べ物や飲み物が飲み込みにくい場合

喉の詰まる感じやイガイガ感だけでなく、唾を飲み込むのもつらいほどの強い痛みがある場合は、注意が必要です。
食べ物や飲み物がスムーズに飲み込めない、声がかすれるといった症状も伴う場合、単なるホルモンバランスの影響ではなく、扁桃炎や咽頭炎、喉頭炎といったウイルスや細菌による感染症が起きている可能性があります。

これらの炎症は、放置すると悪化することもあるため、適切な診断と治療を受けることが大切です。
特に痛みが日に日に強くなるようであれば、速やかに耳鼻咽喉科を受診してください。

発熱や全身の倦怠感など他の症状もみられるとき

喉の症状に加えて、38度を超えるような発熱、強いだるさ(倦怠感)、関節の痛みといった全身症状が現れた場合も、医療機関の受診が必要です。
これらの症状は、インフルエンザをはじめとする全身性の感染症のサインであることが考えられます。

また、喉の痛みや圧迫感とともに首の前側(甲状腺のあるあたり)に腫れや痛みがある場合は、亜急性甲状腺炎などの病気の可能性も考慮されます。
PMSの症状とは明らかに異なる体調の変化を感じたときは、自己判断せずに内科や耳鼻咽喉科で相談しましょう。

セルフケアや市販薬を試しても症状が改善しないケース

生理前の不調だと思って漢方薬やセルフケアを1ヶ月以上続けてみても、症状が全く良くならない、あるいは悪化していく場合も注意が必要です。
また、生理が終わっても喉の違和感がすっきりと解消されず、慢性的に続く場合も、他の原因を探る必要があります。

考えられる病気としては、胃酸が食道へ逆流することで喉に炎症を起こす逆流性食道炎や、まれではありますが、喉頭や咽頭にポリープや腫瘍ができている可能性も否定できません。
不安な症状が長引く場合は、原因を特定するためにも一度専門医による診察を受けましょう。

まとめ

生理前の喉が詰まる感じは、女性ホルモンの変動をきっかけに、自律神経の乱れや精神的なストレスが複雑に絡み合って生じる症状です。
漢方薬は、こうした心身のバランスの乱れを全体的に捉え、体質から改善するアプローチを取ります。
喉の異物感や不安感が強い場合は「半夏厚朴湯」、イライラやほてりを伴うなら「加味逍遙散」、冷えやむくみが気になる場合は「当帰芍薬散」などが選択肢となります。

ただし、漢方薬の効果を最大限に引き出すには、自分の体質に合ったものを選ぶことが不可欠なため、医師や薬剤師などの専門家への相談が重要です。
また、漢方薬の服用と並行して、加湿や水分補給、リラックスできる時間を持つなどのセルフケアも症状緩和に役立ちます。
強い痛みや発熱を伴う場合や、症状が長引く場合は他の病気の可能性も考え、医療機関を受診してください。

toshimori