顔のむくみにおすすめの漢方薬は?症状別の選び方と原因を解説

顔のむくみにおすすめの漢方薬は?症状別の選び方と原因を解説 漢方

朝起きると目がパンパンに腫れていたり、生理前になると顔がむくんだりするなど、顔のむくみは多くの人が抱える悩みの一つです。
この不快な症状を解消する方法として、体質から改善を目指す漢方薬が注目されています。

漢方では、むくみの原因を体内の水分バランスの乱れや冷えなど、さまざまな角度から捉えます。
この記事では、顔のむくみの原因と、症状別におすすめの漢方薬の選び方について解説しますので、自分に合ったケアを見つける参考にしてください。

漢方で考える顔のむくみが起こる主な原因

漢方では、顔のむくみは体内の水分代謝が滞る「水毒」や、血行不良を指す「血瘀」、気の巡りが悪い「気滞」などが主な原因と考えられています。
これらの不調は、食生活や生活習慣の乱れだけでなく、生理周期や更年期といった女性ホルモンの変化も大きく影響します。

また、むくみやすい体質は、ニキビなどの肌トラブルを併発しやすい傾向もあります。
自分の体がどのような状態にあるのかを知ることが、根本的な改善への第一歩です。

体内の水分バランスの乱れ

漢方では体内の水分が過剰になったり偏って滞ったりする状態を「水滞」または「水毒」と呼びむくみの主な原因と捉えます。
胃腸の働きが弱っていると飲食物から取り入れた水分をうまく全身に巡らせたり、排出したりすることができなくなり顔や手足に溜まってしまいます。
特に冷たいものの摂りすぎや暴飲暴食は、胃腸に負担をかけ水分代謝の機能を低下させる一因となります。

脂っこい食事や味の濃いものを好む人は体内に余分な熱と水分を溜め込みやすいため注意が必要です。
このような体質の改善には余分な熱を取り除きながら水分を排出する働きが期待される防風通聖散などが用いられることがあります。

体の冷えによる血行不良

体の冷えは血行を悪化させ、それが水分代謝の滞りにもつながり、むくみを引き起こす大きな原因となります。
漢方ではこの血行が滞った状態を「血瘀(けつお)」と呼びます。
血液は体中に熱と栄養を運ぶ役割を担っているため、血行不良になると手足の末端が冷えやすくなるだけでなく、体全体の熱産生能力も低下します。
その結果、体内に取り込まれた水分の巡りも悪くなり、顔などの特定の場所に溜まりやすくなるのです。

特に女性は筋肉量が少なく、熱を産生しにくいため、冷えやすい傾向があります。
ツムラやクラシエをはじめとするメーカーからも、体を温めて血行を促すことで、むくみや冷え性を改善する漢方薬が提供されています。

ストレスや疲労の蓄積

過度なストレスや慢性的な疲労は、生命活動のエネルギーである「気(き)」の流れを滞らせたり、気を消耗させたりする原因となります。
気の巡りが悪くなる「気滞(きたい)」や、気が不足する「気虚(ききょ)」の状態に陥ると、体内の水分を正常に巡らせる機能が低下し、むくみが生じやすくなります。

特に自律神経のバランスが乱れると、血管の収縮や拡張がうまくコントロールできなくなり、血行不良や水分代謝の悪化を招きます。
イライラしやすい、ため息が多い、食欲不振、疲れやすいといった症状は、気の異常を示すサインかもしれません。
血行を促進し水分代謝を整える作用を持つ当帰芍薬散は、このようなストレスや疲労からくるむくみにも用いられる漢方薬の一つです。

あなたの体質は?症状から選ぶ顔のむくみに使う漢方薬

漢方薬で顔のむくみを改善する場合、自分の体質やむくみ以外の症状を総合的に見極めて、合ったものを選ぶことが非常に重要です。
漢方では、その人の体力や抵抗力などから「実証」と「虚証」に体質を分類し、薬を決定します。

例えば、のどが渇きやすく水分を多くとるのに尿量が少ない場合は、体内の水分バランスを整える五苓散が適している可能性があります。
単にむくみをとるだけでなく、冷えや疲れやすさ、胃腸の調子など、体全体のバランスを考慮して最適な漢方薬を選択することが、根本的な体質改善につながります。

顔のむくみ解消が期待できる代表的な漢方薬3選

顔のむくみに対して用いられる漢方薬は数多くありますが、ここでは特に代表的な3つの漢方薬を紹介します。
それぞれの漢方薬は、得意とする体質や症状が異なります。

例えば、疲れやすく汗をかきやすい「水太り」タイプには防已黄耆湯が適しているなど、個人の状態に合わせた選択が重要です。
これから紹介する漢方薬の特徴を理解し、自分の体力や冷えの有無、胃腸の状態などと照らし合わせながら、どのタイプが自分に近いかを確認するための参考にしてください。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):冷えやすく疲れがちな方向け

当帰芍薬散は、体力がなく、冷え性で貧血傾向のある「虚証」タイプの方に適した漢方薬です。
血の巡りを良くして体を温める作用と、体内の水分バランスを整える作用を併せ持っています。
そのため、顔のむくみだけでなく、手足の冷え、月経不順、月経痛、更年期障害、頭重感、肩こり、めまいといった女性特有のさまざまな不調の改善に用いられます。

特に、ホルモンバランスが変動しやすい生理前や生理中にむくみがひどくなる方におすすめです。
血を補いながら水分代謝を促すことで、根本的な体質改善を目指し、むくみにくい体づくりをサポートします。

五苓散(ごれいさん):水分の摂りすぎでむくみやすい方向け

五苓散は、体内の水分バランスを調整する働きに優れた漢方薬で、体力に関わらず幅広い体質の人に用いられます。
のどが渇いて水分をたくさん摂取するものの、尿の出が悪く、体内に余分な水分が溜まってしまう「水滞」の状態を改善します。
顔のむくみはもちろん、頭痛、めまい、吐き気、下痢といった水分の偏りによって起こる様々な症状に効果が期待できます。

特に、お酒を飲んだ翌日の二日酔いによるむくみや吐き気にもよく使われることで知られています。
体に必要な水分は保持しつつ、不要な水分だけを排出するよう促すため、脱水症状を起こす心配が少ないのが特徴です。

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう):汗をかきやすく水太り体質の方向け

防已黄耆湯は色白で筋肉が柔らかく疲れやすくて汗をかきやすい、いわゆる「水太り」体質の方に適した漢方薬です。
体力が中等度以下で胃腸の働きが弱く体内の水分代謝が滞りがちな方のむくみや膝の痛みなどに用いられます。

生命エネルギーである「気」を補い胃腸の機能を高めることで体の中から元気にし水分を巡らせる力をサポートします。
また利尿作用によって体に溜まった余分な水分を排出しむくみを改善します。
運動不足で筋力が低下しむくみやすいと感じている方にも適しています。

漢方薬を飲む前に知っておきたいポイント

漢方薬は自然由来の生薬から作られていますが、医薬品であることに変わりはなく、誰にでも合うわけではありません。
効果を最大限に引き出し、安全に使用するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。

特に、自分の体質に合わない漢方薬を選ぶと、効果がないばかりか、かえって体調を崩す可能性も考えられます。
また、むくみが長引く場合は、背景に何らかの病気が隠れていることもあり、注意が必要です。

自分の体質に合うか専門家に相談する

漢方薬を選ぶ上で最も重要なのは、自分の体質(証)に合ったものを選ぶことです。
同じ顔のむくみという症状でも、体が冷えているのか、胃腸が弱いのか、ストレスが原因なのかによって、適した漢方薬は全く異なります。
自己判断で市販薬を選ぶと、体質に合わずに十分な効果が得られなかったり、まれに副作用が出たりする可能性もあります。

そのため、購入前には漢方に詳しい医師や薬剤師、登録販売者に相談することが不可欠です。
専門家は、むくみ以外の自覚症状や生活習慣、食事内容などを総合的に判断し、その人に最適な漢方薬を提案してくれます。
まずはかかりつけの医師や、薬局・ドラッグストアの専門家に気軽に声をかけてみましょう。

長期間改善しない場合は病院の受診を検討する

漢方薬を服用したり、生活習慣を見直したりしても顔のむくみが一向に改善しない場合や、急に症状が悪化した際には、何らかの病気が隠れている可能性があります。
むくみは、腎臓病、心不全、肝臓病、甲状腺機能低下症といった病気のサインとして現れることがあるためです。

特に、顔だけでなく足や全身にもむくみが広がっている、息切れや動悸がする、尿の量が極端に減った、急激に体重が増加したなどの症状を伴う場合は、自己判断をせずに速やかに医療機関を受診してください。
まずは内科などを受診し、むくみの原因を正確に突き止めてもらうことが重要です。

漢方と併用したい!顔のむくみを和らげる生活習慣

漢方薬による体質改善と合わせて、日々の生活習慣を見直すことは、顔のむくみを根本から解消するために非常に効果的です。
食事やマッサージ、運動などを日常生活に取り入れることで、漢方薬の効果をより高め、むくみにくい体づくりをサポートできます。

漢方薬だけに頼るのではなく、生活全体で体を整えていく意識を持つことで、より健やかな状態を目指すことが可能です。
ここでは、今日からでも始められる簡単なセルフケアを紹介します。

体を内側から温める食事を意識する

体の冷えは血行や水分代謝を悪化させ、むくみの大きな原因となります。
そのため、食事を通じて体を内側から温めることを意識しましょう。
食材には体を温める性質を持つものと冷やす性質を持つものがあり、温める性質の食材を積極的に取り入れることが推奨されます。
具体的には、生姜、ネギ、ニラ、かぼちゃ、ごぼうなどの根菜類が挙げられます。
調理法も、生で食べるよりは加熱したスープや煮物にするのがおすすめです。

反対に、トマトやきゅうりなどの夏野菜、南国の果物、冷たい飲み物、白砂糖は体を冷やす傾向があるため、摂りすぎには注意が必要です。
また、塩分の過剰摂取は体内に水分を溜め込むので、カリウムを多く含む海藻やバナナなどを食事に加えると良いでしょう。

顔周りの巡りを促す簡単なマッサージを取り入れる

顔や首周りのリンパの流れが滞ると、老廃物や余分な水分が溜まり、むくみの原因となります。
朝のスキンケアのついでなどに、簡単なマッサージを取り入れて巡りを促しましょう。
乳液やクリーム、マッサージオイルなどをつけて肌の滑りを良くしてから行うのがポイントです。
まず、耳の下にあるくぼみを優しく押し、そこから首の側面を通って鎖骨のくぼみまで、指でゆっくりとリンパを流します。

眉頭の内側のくぼみにある「攅竹(さんちく)」や、小鼻の横にある「迎香(げいこう)」といったツボを、気持ち良いと感じる程度の強さで指圧するのも効果的です。
力を入れすぎず、優しく丁寧に行うことで、すっきりとしたフェイスラインを目指せます。

適度な運動で血行を促進する

運動不足による筋力の低下は、全身の血行不良を招き、むくみを引き起こす一因です。
特に、ふくらはぎの筋肉は血液を心臓に送り返すポンプの役割を担っているため、「第二の心臓」とも呼ばれています。
ウォーキングやジョギング、ヨガといった全身運動を習慣にすることで、このポンプ機能が活性化し、血液やリンパの流れがスムーズになります。

まとまった運動時間が取れない場合でも、日常生活の中でこまめに体を動かす意識が大切です。
デスクワークの合間に立ち上がって足首を回したり、階段を使ったり、かかとの上げ下ろし運動をしたりするだけでも、血行促進に役立ちます。
無理のない範囲で継続することが、むくみにくい体質への近道です。

まとめ

顔のむくみは、漢方の視点では体内の水分バランスの乱れ、血行不良、ストレスによる気の滞りなど、複合的な原因によって引き起こされると考えられています。
そのため、当帰芍薬散、五苓散、防已黄耆湯といった漢方薬も、個々の体力や冷えの有無などの体質に合わせて慎重に選ぶ必要があります。

漢方薬の力を借りると同時に、体を温める食事、顔周りのマッサージ、適度な運動といった生活習慣の見直しを並行して行うことが、根本的な改善には不可欠です。
漢方薬を選ぶ際は薬剤師などの専門家に相談し、症状が改善しない場合は背景にある病気の可能性も考えて医療機関を受診することも忘れないようにしてください。

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