排卵痛と漢方薬|痛み止めとして使える市販薬も紹介

排卵痛と漢方薬|痛み止めとして使える市販薬も紹介 漢方

毎月の排卵期に起こる下腹部の痛みや不快感に、悩まされている方もいるかもしれません。
排卵痛の緩和には、体質からアプローチする漢方薬が選択肢の一つです。

漢方は、一時的に痛みを抑えるだけでなく、痛みが起こりにくい体質へと導くことを目的とします。
この記事では、排卵痛のタイプ別に適した漢方薬や、ドラッグストアで購入できる薬の選び方、日常生活でできるセルフケアについて解説します。

そもそも排卵痛とは?主な症状と原因を解説

排卵痛とは、月経と月経の間の排卵期に起こる痛みのことです。
症状には個人差がありますが、下腹部の片側がチクチク痛んだり、重い痛みを感じたりします。

人によっては、少量の出血(中間期出血)やおりものの増加、腰痛、吐き気、頭痛などを伴うこともあります。
主な原因として、卵子が排出される際に卵巣の表面が破れることによる物理的な刺激や、排卵前後のホルモンバランスの急激な変化が関係していると考えられています。

漢方医学で考える排卵痛が起こる3つの体質タイプ

漢方医学では、排卵痛は体全体のバランスの乱れが原因で起こると考えます。
特に、生命エネルギーである「気」、血液とその働きを指す「血」、体内の水分である「水」の巡りが滞ったり、不足したりすることが不調につながると捉えます。

そのため、個々の体質を見極め、その人に合った漢方薬でバランスを整えることで、症状の緩和を目指します。
ここでは、排卵痛の主な原因とされる3つの体質タイプを紹介します。

タイプ1:血の巡りが悪い「気滞血瘀(きたいけつお)」

「気滞血瘀」とは、ストレスや緊張などによって「気」の巡りが悪くなり、その影響で「血」の流れも滞ってしまっている状態です。
このタイプの排卵痛は、お腹の張り感を伴う刺すような鋭い痛みが特徴で、イライラや気分の落ち込み、肩こり、頭痛などの精神的な不調も現れやすくなります。
痛む場所がはっきりしていることも多く、月経前症候群(PMS)の症状が強く出る傾向も見られます。

気の巡りをスムーズにし、滞った血の流れを促すことで、痛みの改善を図ります。

タイプ2:エネルギーが不足している「気血両虚(きけつりょうきょ)」

「気血両虚」は、体を動かすエネルギーである「気」と、全身に栄養を運ぶ「血」の両方が不足している状態を指します。
胃腸が弱く、栄養をうまく吸収できないことや、過労などが原因で起こります。
このタイプの排卵痛は、シクシクとした鈍い痛みがだらだらと続くのが特徴です。
顔色が悪く、疲れやすい、めまい、立ちくらみなどの症状を伴うことも少なくありません。

生理痛が長引きやすく、生理の4日目以降も痛みが続く場合があります。
気と血を補い、体全体に栄養とエネルギーを行き渡らせることで、体質からの立て直しを目指します。

タイプ3:生命エネルギーが消耗している「腎虚(じんきょ)」

漢方でいう「腎」は、生命活動の根源的なエネルギーを蓄え、成長や生殖を司る場所です。
「腎虚」とは、この「腎」の働きが加齢や慢性的な疲労によって低下した状態を指します。
排卵痛の症状としては、下腹部痛に加えて、腰のだるさや重い痛み、足腰の冷え、頻尿、めまい、耳鳴りなどを伴うのが特徴です。

生殖機能とも深く関わるため、「腎」のエネルギーを補うことで、ホルモンバランスを整え、排卵に伴う不調を和らげます。
体を温め、生命エネルギーを充実させることが主なアプローチとなります。

【体質タイプ別】排卵痛の緩和が期待できる代表的な漢方薬

ここでは、先述した3つの体質タイプ別に、排卵痛の緩和に用いられる代表的な漢方薬を紹介します。
漢方薬は、同じ症状であっても個人の体質や体力、その他の症状によって選ぶ漢方薬が異なります。
自分に合った漢方薬を選ぶためには、専門家の知識を借りることが重要です。

市販薬を選ぶ際は薬剤師や登録販売者に、より本格的な体質改善を目指す場合は漢方医や漢方薬局に相談することをおすすめします。

「気滞血瘀」タイプにおすすめの漢方薬

気の巡りを改善し、血行を促進する漢方薬が用いられます。
代表的なものに「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」があり、血の滞りである「瘀血(おけつ)」を改善し、下腹部の抵抗感や押し当てるような痛みを和らげます。

また、ストレスによるイライラや不安感が強い場合には、気の巡りを整える「加味逍遙散(かみしょうようさん)」が適しています。
冷えや貧血傾向も伴う場合は、血を補いながら巡りを良くする「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」が選ばれることもあります。

「気血両虚」タイプにおすすめの漢方薬

不足した気と血を補い、体を元気にする漢方薬が中心となります。
全身の倦怠感が強く、貧血気味で体力が低下している場合には、「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」が用いられます。

胃腸が弱く、食欲不振や寝汗といった症状がある場合は、「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」が適しています。
また、冷え性でむくみやすく、めまいや立ちくらみがある場合には、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」がこのタイプにも応用されることがあります。

「腎虚」タイプにおすすめの漢方薬

生命エネルギーである「腎」を補い、体を温める漢方薬が用いられます。
特に足腰の冷えやだるさ、頻尿といった症状が目立つ場合には、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」が代表的な漢方薬です。

体力がより低下しており、強い冷えや腰痛、むくみがある場合には、八味地黄丸に体を温める作用などを加えた「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」が選択されることがあります。
これらの漢方薬は、加齢に伴う諸症状の改善にも応用されます。

ドラッグストアで買える?排卵痛に使える市販薬の選び方

排卵痛の症状を和らげる薬はドラッグストアなどでも購入可能です。
漢方薬は体質改善を目指す選択肢として急な痛みには鎮痛剤が役立ちます。

ただし市販薬はあくまでセルフケアの一環です。
症状が長引いたり悪化したりする場合は自己判断を続けずに医療機関を受診しましょう。
ここでは市販薬を選ぶ際のポイントについて解説します。

漢方薬を市販で購入するときのチェックポイント

市販の漢方薬を選ぶ際は、まず製品のパッケージに記載されている「効能・効果」を確認します。
「月経痛」や「月経不順」「婦人科諸症」「血の道症」などの記載があるものが、排卵痛にも応用できる可能性があります。
次に、自分の体質に合っているかを見極めます。
例えば、冷え性か、体力はあるか、胃腸は丈夫か、イライラしやすいかといった点を考慮し、製品の「体力」の目安や説明文を参考にします。

判断に迷う場合は、自己判断せず、必ず店舗にいる薬剤師や登録販売者に相談してください。

痛みがひどい場合は市販の鎮痛剤を服用する選択も

漢方薬は体質を根本から改善することを目的としているため、効果が現れるまでに時間がかかる場合があります。
日常生活に支障が出るほどの強い痛みや、急な痛みに対しては、即効性のある市販の鎮痛剤を服用するのも有効な手段です。

鎮痛剤の成分には、ロキソプロフェンナトリウム水和物やイブプロフェンなどがあり、痛みの原因物質であるプロスタグランジンの生成を抑える働きがあります。
ただし、これらは一時的に痛みを抑える対症療法です。
毎月のように鎮痛剤が必要な場合は、婦人科を受診して痛みの原因を調べてもらうことが望ましいです。

漢方と合わせて試したい!排卵痛を和らげるためのセルフケア

漢方薬による体質改善とあわせて、日々の生活習慣を見直すことで、排卵痛の症状をより効果的に和らげることが期待できます。
特に「冷え」「食事」「ストレス」は、女性の体のバランスに大きく影響します。

無理のない範囲で生活に取り入れられることから始めるのが、継続のコツです。
ここでは、今日からでも実践できるセルフケアの方法を3つ紹介します。

体を温めて血行を良くする

体の冷えは血行不良を招き、痛みを悪化させる大きな原因となります。
特に骨盤周りを冷やさないように意識することが重要です。
ぬるめのお湯にゆっくり浸かる入浴は、全身の血行を促進し、リラックス効果も得られます。
シャワーだけで済ませず、湯船に浸かる習慣をつけると良いでしょう。

また、腹巻やカイロ、レッグウォーマーなどを活用して、お腹や腰、足首を重点的に温めるのも効果的です。
ストレッチやウォーキングなどの軽い運動も、血流を良くし、冷えの改善に役立ちます。

バランスの取れた食事を意識する

食生活は、体質に直接影響を与えます。
体を冷やす冷たい飲み物や食べ物、白砂糖を多く含む甘いもの、スナック菓子などは控えめにしましょう。
また、炎症対策のためにグルテン(小麦製品に含まれる)、カゼイン(乳製品に含まれる)なども避けれる場合は、一度控えてみるのも良いでしょう。
代わりに、ショウガやネギ、カボチャ、ゴボウといった体を温める作用のある食材を積極的に取り入れることをおすすめします。

また、血液の材料となる鉄分(レバー、赤身肉、ほうれん草など)やタンパク質、ホルモンバランスを整える働きが期待されるビタミンE(ナッツ類、アボカドなど)や大豆イソフラボン(豆腐、納豆など)を意識して摂ることも有効です。

心と体を休めるリラックス時間を作る

ストレスは自律神経のバランスを乱し、血行不良やホルモンバランスの乱れを引き起こす一因となります。
排卵期は心身ともにデリケートになりやすい時期なので、意識的にリラックスする時間を持つことが大切です。
好きな香りのアロマを焚いたり、ゆったりとした音楽を聴いたり、ハーブティーを飲んだりするなど、自分が心地よいと感じる方法を見つけましょう。

また、スマートフォンの使用時間を減らし、夜は十分な睡眠をとって脳と体をしっかりと休ませることも、ホルモンバランスを整える上で欠かせません。

ただの排卵痛じゃないかも?婦人科を受診すべき症状

多くの女性が経験する排卵痛ですが、その痛みが別の病気のサインである可能性も考慮しなくてはなりません。
セルフケアや市販薬を試しても痛みが改善しない場合や、だんだん痛みが強くなっている場合は注意が必要です。

特に、日常生活に支障をきたすほどの激しい痛み、排卵期以外にも続く下腹部痛、鎮痛剤が効かない、出血量が多いといった症状がある場合は、子宮内膜症や卵巣嚢腫などの婦人科疾患が隠れていることもあります。
気になる症状があれば、自己判断で放置せず、一度婦人科を受診して専門医に相談してください。

まとめ

排卵痛の緩和には、漢方薬を用いた体質改善が有効なアプローチの一つです。
漢方では、痛みの原因を「気滞血瘀」「気血両虚」「腎虚」といった体質の乱れと捉え、個々に合った漢方薬で体のバランスを整えます。
市販の漢方薬や鎮痛剤も選択肢になりますが、自分の体質を正しく見極めることが重要です。

また、体を温める、バランスの取れた食事を心がける、リラックスする時間を持つといったセルフケアを併行すると、より効果が期待できます。
ただし、痛みが非常に強い場合や、症状が悪化する際には、子宮内膜症などの病気の可能性も考えられるため、早めに婦人科を受診することが求められます。

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