自家感作性皮膚炎を漢方薬で改善|選び方と相談のポイント
漢方
自家感作性皮膚炎は、強い痒みを伴う湿疹が全身に広がるつらい皮膚疾患です。
ステロイド外用薬などで一時的に症状が治まっても、再発を繰り返すことも少なくありません。
西洋医学の治療で改善が見られない場合、体の内側から体質を見直す漢方薬が有効な選択肢となり得ます。
この記事では、自家感作性皮膚炎の根本原因を漢方医学の視点から解説し、症状に合わせた漢方薬の選び方や、信頼できる専門家への相談ポイントを紹介します。
繰り返すつらい痒み、自家感作性皮膚炎の基本的な症状
自家感作性皮膚炎は、まず体の一部にできた湿疹や皮膚炎(原発巣)が悪化し、そこからアレルギー反応が起こることで、全身に細かいブツブツとした発疹(散布疹)が広がる疾患です。
この散布疹は非常にかゆみが強く、掻き壊すことでさらに症状が悪化する悪循環に陥りやすい特徴があります。
一般的な治療ではステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬が用いられますが、症状を繰り返すケースも少なくありません。
漢方薬は、こうした対症療法と並行し、皮膚炎を起こしにくい体質へと導くことを目指します。
そもそも自家感作性皮膚炎はなぜ発症するのか
自家感作性皮膚炎の発症には、最初にできた皮膚炎、いわゆる原発巣が深く関わっています。
例えば、すねや足にできた湿疹、あるいは貨幣状湿疹などを掻き壊してしまうと、そこから細菌や真菌、あるいはそれらの分解物が体内に吸収されます。
この物質に対して体がアレルギー反応を起こし、感作が成立すると、血液を介して全身の皮膚にアレルギー反応が広がり、痒みの強い散布疹が現れます。
漢方薬によるアプローチでは、目に見える皮膚症状だけでなく、このようなアレルギー反応を起こしやすい体質そのものに働きかけ、根本的な改善を図ります。
漢方医学が捉える自家感作性皮膚炎の根本的な原因
漢方医学では、自家感作性皮膚炎を単なる皮膚の病気とは考えません。
皮膚の症状は、体全体のバランスが崩れた結果として現れる「内臓の鏡」と捉えます。
そのため、炎症を抑えるだけでなく、なぜ炎症が起きやすい体質になっているのかという根本原因を探ります。
その原因は一人ひとり異なり、体内に過剰な熱がこもる「熱」、血の巡りが滞る「瘀血」、余分な水分が溜まる「湿」などが複雑に絡み合っていると考えます。
適切な漢方薬を選ぶためには、これらの原因を正確に見極めることが重要です。
体内に熱がこもり炎症を引き起こす「熱」
漢方でいう「熱」とは、体内に過剰な熱エネルギーがこもり、炎症を引き起こしやすい状態を指します。
自家感作性皮膚炎では、この「熱」が皮膚の赤みや強い痒み、熱感といった症状の直接的な原因となることがあります。
ストレスや疲労、脂っこい食事、アルコールの過剰摂取などが「熱」を生む引き金となり得ます。
漢方治療では、黄連解毒湯などに代表される、体の熱を冷ます「清熱」作用を持つ漢方薬を用いることで、皮膚の炎症を鎮め、痒みを和らげます。
同時に、生活習慣を見直して「熱」を生み出さないようにすることも、根本的な改善には欠かせません。
血の巡りの滞りが皮膚の栄養不足を招く「瘀血」
瘀血とは、血の流れが滞り、古くなった血液が体の特定の部分に溜まっている状態です。
血行が悪くなると、皮膚の隅々にまで十分な栄養や酸素が行き渡らなくなり、新陳代謝が低下します。
その結果、皮膚は乾燥してカサカサになったり、湿疹が治りにくく色素沈着を起こしたり、暗い赤紫色の発疹が出たりします。
自家感作性皮膚炎が慢性化する一因とも考えられます。
この場合、血行を促進して瘀血を取り除く作用のある漢方薬、例えば桂枝茯苓丸などが用いられます。
漢方薬で血の巡りを整えることは、健康な皮膚を再生させるための土台作りとなります。
余分な水分がジュクジュクした湿疹につながる「湿」
漢方における「湿」とは、体内の水分代謝がうまくいかず、余分な水分や老廃物が溜まっている状態を指します。
胃腸の機能が低下すると、飲食物から取り入れた水分の処理が追いつかなくなり、「湿」が生じやすくなります。
この「湿」が皮膚に影響すると、ジュクジュクとした浸出液を伴う湿疹や水ぶくれ、むくみといった症状として現れます。
自家感作性皮膚炎で見られる、滲出液の多いタイプの湿疹は、この「湿」が主な原因と考えられます。
治療には、体内の余分な水分を排出し、水分代謝を整える漢方薬、例えば越婢加朮湯などが用いられます。
症状別に見る!自家感作性皮膚炎に用いられる代表的な漢方薬
自家感作性皮膚炎の治療では、現れている皮膚症状と、その人の体質を総合的に判断して漢方薬が選ばれます。
赤みや痒みが強いのか、ジュクジュクしているのか、それとも乾燥しているのかによって、用いる漢方薬は異なります。
また、体力があるかないか、胃腸の状態、冷えの有無なども考慮されるため、同じ病名でも漢方薬は一人ひとり違います。
ここでは、症状のタイプ別に用いられることの多い代表的な漢方薬をいくつか紹介しますが、あくまで一例として参考にしてください。
赤みと炎症が強い皮膚には「温清飲(うんせいいん)」
温清飲は皮膚の赤みや熱感が強く乾燥してカサカサするような症状に適した漢方薬です。
この処方は体の熱を冷まして炎症を鎮める作用を持つ「黄連解毒湯」と血を補いその巡りを良くする「四物湯」という二つの漢方薬を組み合わせたものです。
炎症を抑えながら皮膚に栄養と潤いを与えるため熱による炎症と血行不良による乾燥が同時に見られる慢性的な皮膚疾患に効果を発揮します。
体力が中等度くらいでのぼせ気味でありながら皮膚は乾燥しているといった場合に用いられることが多い漢方薬です。
ジュクジュクして痒みが激しいなら「消風散(しょうふうさん)」
消風散はその名の通り痒みの原因となる風を取り除くことを主目的とした漢方薬です。
特に分泌物が多くジュクジュクとした湿疹で赤みと我慢できないほどの強い痒みを伴う場合に適しています。
体内の過剰な熱や湿を取り除き炎症を鎮める作用を持つ生薬が多く配合されているため自家感作性皮膚炎の急性期で症状が激しい時に用いられることがあります。
体力が中等度以上あり患部に熱感を持つようなタイプの皮膚炎に対して効果が期待できる漢方薬とされています。
乾燥肌でカサカサする痒みには「当帰飲子(とうきいんし)」
当帰飲子は、血行を促進して体に潤いを与えることで、皮膚の乾燥を改善する漢方薬です。
体内の血が不足している血虚の状態がベースにある、乾燥性の皮膚疾患に用いられます。
特に、皮膚がカサカサして粉をふき、夜になると痒みが強くなるような場合に適しています。
高齢者やもともと乾燥肌体質の方に処方されることが多いです。
血を補い巡りを良くすることで、皮膚に栄養を届け、バリア機能を高める働きが期待できます。
体力が低下気味で、冷えやすい方の慢性的な痒みに有効な漢方薬です。
化膿しやすい皮膚症状には「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」
十味敗毒湯は、化膿性の皮膚疾患の初期段階に広く使われる日本で生まれた漢方薬です。
皮膚の赤み、腫れ、痒みがあり、掻き壊してじゅくじゅくしたり、膿を持ったりしやすいタイプの湿疹やじんましんに適しています。
体表の炎症を和らげながら、解毒する働きを助けます。
体力が中等度の方で、比較的初期の皮膚炎に用いられることが多い処方です。
自家感作性皮膚炎においても、原発巣や散布疹が化膿傾向にある場合に選択肢の一つとなる漢方薬です。
西洋薬で改善しないのは体質が関係しているから
ステロイド外用薬や抗アレルギー薬といった西洋薬は、今ある炎症や痒みを抑えるのに非常に有効な対症療法です。
しかし、薬の使用をやめると症状が再発する場合、その背景には皮膚炎を起こしやすい根本的な体質が隠れている可能性があります。
漢方治療は、この体質そのものにアプローチすることを目的とします。
体の内側からバランスを整え、炎症が起きにくい状態、アレルギー反応が過剰に出ない状態へと導くことで、症状の根本改善と再発予防を目指します。
そのため、漢方薬は西洋薬と併用しながら、体質改善のために役立てることができます。
自分に合う漢方薬を見つけるための相談先の選び方
漢方薬は同じ病名でも個人の体質や症状の現れ方によって最適な漢方薬が異なります。
テレビCMやインターネットの情報だけで自己判断して選ぶと効果が得られないばかりかかえって症状を悪化させる可能性もあります。
自分に合った漢方薬を見つけるためには漢方の専門知識を持つ医師や薬剤師に相談することが不可欠です。
丁寧なカウンセリングを通じて自分の体質を正確に見極めてもらうことが自家感作性皮膚炎改善への第一歩となります。
専門知識を持つ漢方薬局やクリニックに相談しよう
自家感作性皮膚炎の漢方治療を考えるなら、漢方薬に関する深い知識と豊富な相談経験を持つ専門家がいる漢方薬局やクリニックを選ぶことが重要です。
良い相談先を見極めるポイントとして、時間をかけた丁寧なカウンセリングが挙げられます。
皮膚の症状だけでなく、食事や睡眠、便通、ストレスの状況といった生活全般について詳しく質問し、体質を総合的に判断しようとしてくれるかどうかが大切です。
また、漢方独自の方法である、舌の状態を見る「舌診」や脈の状態を診る「脈診」などを取り入れているかも、専門性の高さを示す一つの指標となります。
これらの情報から、その人に合った漢方薬を選んでくれます。
相談時に伝えるべき自身の症状と体調
漢方の専門家に相談する際は、できるだけ詳細な情報を提供することが、的確な漢方薬の選択につながります。
皮膚症状については、いつから始まったか、痒みの強さや時間帯(日中か夜間か)、赤みの度合い、ジュクジュクしているかカサカサしているか、温まると悪化するかなどを具体的に伝えます。
さらに、皮膚以外の全身状態も重要な判断材料です。
例えば、冷え性か暑がりか、胃腸の調子、食欲の有無、睡眠の質、便通の状態、女性の場合は月経周期や生理痛の有無などを細かく伝えるようにします。
これらの情報が、体全体のバランスを評価し、最適な漢方薬を見つけるための貴重な手がかりとなります。
漢方治療の効果を高める毎日のスキンケア方法
自家感作性皮膚炎の改善には、漢方薬による内側からの体質改善と、日々のスキンケアによる外側からのアプローチを組み合わせることが効果的です。
皮膚のバリア機能が低下しているため、外部からの刺激に非常に敏感になっています。
洗浄力の強すぎる石鹸やボディソープは避け、低刺激性のものをよく泡立てて優しく洗いましょう。
熱いお湯は痒みを増強させるため、ぬるま湯での入浴やシャワーを心がけます。
入浴後は、皮膚が乾燥する前に、すぐに保湿剤を塗布して水分が逃げないように保護することが重要です。
漢方薬と並行して適切なスキンケアを続けることで、皮膚の状態を安定させます。
まとめ
自家感作性皮膚炎は、皮膚表面のトラブルだけでなく、体内の免疫バランスの乱れが根本にある複雑な疾患です。
漢方薬は、個々の体質や症状に合わせて選ばれ、体の内側から炎症を起こしにくい健康な状態を目指す治療法です。
西洋医学の治療で症状の改善が見られなかったり、再発を繰り返したりする場合には、漢方薬が有効な選択肢となり得ます。
治療には一定の期間が必要となることもありますが、専門家と相談しながら、食事や生活習慣の見直しと合わせて取り組むことで、つらい症状の根本的な改善が期待できます。
信頼できる専門家を見つけ、自身の体と向き合うことが重要です。
