足のつり・こむら返りを漢方薬で予防!原因別の選び方とおすすめ薬| 不妊・妊活の漢方薬局(岡山) | 福神トシモリ薬局(オンライン相談可)
漢方
夜中や運動中に突然襲われる足のつり(こむら返り)は、激しい痛みを伴うつらい症状です。
その原因は水分不足や冷え、筋肉の衰えなど多岐にわたります。
漢方では、こうした症状の根本にある体質に目を向け、バランスを整えることで改善を目指します。
この記事では、足のつりが起こる原因を探りながら、それぞれの体質や症状に合った漢方薬の選び方を解説します。
日常生活で取り入れられる予防策も併せて紹介するので、つらい症状の緩和と再発防止に役立ててください。
そもそも「足のつり(こむら返り)」が起こる仕組みとは?
足のつり、いわゆる「こむら返り」とは、主にふくらはぎの筋肉が本人の意思とは関係なく異常に収縮し、けいれんを起こす状態を指します。
通常、筋肉の伸び縮みは、筋肉内にあるセンサーが脳からの指令を微調整することでスムーズに行われています。
しかし、疲労や栄養不足、冷えなど何らかの原因でこの調整機能に乱れが生じると、筋肉が過剰に収縮し続けてしまい、激しい痛みを伴うけいれんが発生します。
漢方薬の中には、この筋肉の異常な興奮を鎮める働きを持つものがあり、特に芍薬甘草湯は、即効性が期待できる代表的な漢方薬として知られています。
つらい足のつりを引き起こす4つの主な原因
足のつりは、単一ではなく複数の要因が絡み合って起こることが多いです。
主な原因としては、汗をかいた後の水分やミネラルの不足、体の冷えによる血行不良、そして加齢や運動不足に伴う筋肉量の減少が挙げられます。
特に、夏場の脱水や冬場の冷えは、足のつりを誘発しやすい環境といえます。
また、妊娠中の妊婦のように体内のミネラルバランスが変化しやすい時期や、糖尿病や血管系の病気など、特定の疾患が背景に隠れているケースも存在します。
これらの原因を正しく理解することが、適切な予防や対策を見つけるための第一歩となります。
原因①:体内の水分やミネラルが不足している
筋肉が正常に収縮・弛緩するためには、カルシウムやマグネシウム、カリウムといったミネラルイオンが重要な役割を担っています。
激しい運動や夏場の暑さで大量に汗をかくと、水分とともにこれらのミネラルも体外へ排出されてしまいます。
また、就寝中も無意識に発汗しているため、知らず知らずのうちに水分とミネラルが失われています。
体液中のミネラルバランスが崩れると、筋肉の動きを調整する神経伝達に異常が生じ、筋肉が過剰に興奮しやすい状態になります。
これが、足のつりを引き起こす直接的な原因の一つです。
利尿作用のある薬の服用や、アルコールの過剰摂取も脱水状態を招き、ミネラル不足につながるため注意が必要です。
原因②:体の冷えによる血行の悪化
体の冷えは血行不良を招き、足のつりを誘発する大きな要因となります。
冬の寒さや夏の冷房などで体が冷えると、血管が収縮して血流が悪くなります。
特に、心臓から遠い足先は冷えやすく、血行不良の影響を受けやすい部位です。
血行が悪化すると、筋肉を動かすために必要な酸素や栄養素が十分に行き渡らなくなり、同時に乳酸などの疲労物質が筋肉内に溜まりやすくなります。
このような状態では筋肉が硬直しやすく、少しの刺激でもけいれんを起こしやすくなってしまいます。
日頃から体を冷やさない服装を心がけ、入浴で体を温めるなどの対策は、血行を改善し、足のつりを予防するために効果的です。
原因③:加齢や運動不足による筋肉の衰え
年齢を重ねるにつれて全身の筋肉量は徐々に減少します。
特にふくらはぎの筋肉は下半身の血液を心臓に送り返すポンプのような役割を担っているため「第二の心臓」とも呼ばれています。
加齢や運動不足によってこの筋肉が衰えるとポンプ機能が低下し足の血行が悪化します。
その結果、足が冷えやすくなったり、疲労が溜まりやすくなったりしてこむら返りが起こりやすくなるのです。
また筋肉量の減少は筋肉の収縮をコントロールする神経系の働きにも影響を与え、筋肉のセンサーが誤作動を起こしやすくなります。
これがけいれんを引き起こす一因と考えられています。
適度な運動を習慣づけ筋肉量を維持することが予防につながります。
原因④:頻繁に繰り返す場合は病気の可能性も
一時的な足のつりは多くの人が経験しますが、頻繁に繰り返す、痛みが強い、安静時にも起こるなどの場合は、背後に何らかの病気が隠れている可能性を考慮する必要があります。
例えば、糖尿病による神経障害、甲状腺機能の低下、肝臓や腎臓の疾患は、体内のミネラルバランスや血行に影響を及ぼし、足のつりを引き起こすことがあります。
また、足の血管が動脈硬化で細くなる閉塞性動脈硬化症や、腰の神経が圧迫される腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなども、足のつりやしびれの原因となり得ます。
セルフケアを行っても症状が改善しない場合は、自己判断で放置せず、一度医療機関を受診して原因を特定することが重要です。
【原因別】足のつりに効果が期待できる漢方薬の選び方
漢方では、足のつりは筋肉を養う「血(けつ)」の不足(血虚)や、血や水分の巡りが滞ることで起こると考えます。
そのため、治療では表面的な症状を抑えるだけでなく、その原因となっている体質そのものに働きかけることを目的とします。
急な痛みに対応するものから、冷えや体力低下といった根本的な問題にアプローチするものまで、原因や体質によって用いられる漢方薬は異なります。
ここでは、代表的な処方を紹介し、どのような状態の方に適しているかを解説します。
自分の症状や体質と照らし合わせながら、漢方薬選びの参考にしてください。
急な筋肉のけいれんに使われる「芍薬甘草湯」
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は、こむら返りをはじめとする急性の筋肉のけいれんに対して、即効性が期待できる代表的な漢方薬です。
「芍薬」と「甘草」という二つの生薬で構成されており、芍薬には筋肉の緊張を緩める作用、甘草には痛みを和らげ、芍薬の働きを助ける作用があります。
漢方的に見ると、筋肉の栄養源である「血(けつ)」を補い、急激な筋肉の収縮を鎮める働きがあるとされています。
そのため、就寝中に突然足がつった時や、スポーツ中の筋肉のけいれんなど、突発的な症状が起きた際に頓服として用いられることが一般的です。
非常に効果が高い反面、甘草の成分により長期連用には注意が必要なため、継続して使用する場合は医師や薬剤師への相談が求められます。
冷えや血行不良が気になる方向けの「当帰芍薬散」
当帰芍薬散は、体力がなく、冷え性で貧血傾向のある方の足のつりに適した漢方薬です。
この処方は、体を温めて血行を促進する「当帰」や「川芎」、筋肉の栄養となる「血」を補う「芍薬」、そして体内の余分な水分の巡りを改善する「蒼朮」や「茯苓」などが配合されています。
血行不良と水分代謝の乱れを同時に改善することで、冷えが原因で起こる足のつりや、むくみといった症状にアプローチします。
特に、月経不順やめまい、立ちくらみなど、女性特有の不調を伴う場合によく用いられます。
煎じ薬の場合、甘草を加え、当帰芍薬散加甘草にすることで、芍薬甘草湯の方意を含ませることも出来、体質から改善しながら、足がつりにくい状態を目指すことも出来ます。
体力低下や気力の衰えを感じる方向けの「八味地黄丸」
八味地黄丸は、加齢に伴う足腰の衰えや体力低下を感じる方の足のつりに用いられることが多い漢方薬です。
漢方では、生命活動の根源的なエネルギーを貯蔵する「腎」が加齢などによって衰える(腎虚)と、足腰の弱り、頻尿、冷えといった様々な老化現象が現れると考えます。
八味地黄丸は、体を温めながら「腎」の働きを補う生薬で構成されており、全身の血行と新陳代謝を促します。
これにより、筋肉への栄養供給を改善し、加齢による足のつりや腰痛、しびれなどの症状を和らげる効果が期待されます。
特に、疲れやすく手足が冷え、夜間にトイレで目が覚めることが多い中高年の方の体質改善に適しています。
漢方薬を服用する際に知っておきたい注意点
漢方薬は自然由来の生薬を原料としていますが、医薬品であることに変わりはなく、体質に合わなければ副作用が起こる可能性もあります。
安全かつ効果的に使用するためには、いくつかの基本的な注意点を理解しておくことが不可欠です。
最も重要なのは、自分の体質や症状に合った漢方薬を正しく選ぶこと、そして効果が見られない場合に漫然と服用を続けないことです。
ここでは、漢方薬を服用する上で最低限知っておきたいポイントについて説明します。
適切な知識を持つことで、より安心して漢方薬を活用できるようになります。
自分の体質に合った漢方薬を選ぶことが重要
漢方治療の大きな特徴は、同じ症状であっても、その人の体質(証)によって用いる薬が異なる点にあります。
例えば、足のつりという症状一つをとっても、体が冷えやすく体力がない「虚証」タイプの人と、比較的体力があり体に熱がこもりやすい「実証」タイプの人では、適した漢方薬が全く異なります。
自分の証に合わない漢方薬を服用しても期待する効果は得られず、かえって胃腸の不調やむくみといった新たな症状を引き起こすこともあります。
そのため、市販薬を選ぶ際には、パッケージの効能書きだけでなく、どのような体質の人向けかを確認することが求められます。
判断に迷う場合は、漢方に詳しい医師や薬剤師、登録販売者に相談し、専門的な視点からアドバイスを受けるのが確実です。
長期間の服用や症状が改善しない場合は専門医に相談
漢方薬を一定期間服用しても症状が改善しない、あるいはかえって悪化するような場合は、その服用を続けるべきではありません。
考えられる理由として、選んだ漢方薬が体質に合っていないか、もしくは足のつりの背後に別の病気が隠れている可能性があります。
特に、芍薬甘草湯などに含まれる「甘草」という生薬は、長期にわたって大量に摂取すると、血圧の上昇やむくみなどを引き起こす「偽アルドステロン症」という副作用のリスクがあります。
市販の漢方薬を試しても効果が見られない、または頻繁に症状を繰り返す場合は、自己判断で服用を続けず、一度服用を中止して整形外科や内科などの医療機関を受診し、根本的な原因を調べることが重要です。
漢方と合わせて実践したい!足のつりを予防する生活習慣
足のつりの根本的な改善と再発予防のためには、漢方薬による体質改善と並行して、日々の生活習慣を見直すことが非常に効果的です。
漢方薬が体の内部環境を整えるアプローチだとすれば、生活習慣の改善は、足のつりを引き起こす外的な要因を減らす直接的なアプローチといえます。
特に「筋肉のケア」「血行促進」「栄養補給」の3つの観点から、日々の生活を見直すことが勧められます。
これから紹介する簡単な習慣を取り入れることで、漢方薬の効果を高め、よりつりにくい体づくりを目指すことができます。
就寝前や運動後のストレッチで筋肉をほぐす
日中の活動や運動によって蓄積された筋肉の疲労や緊張は、足のつりの直接的な引き金になります。
特にふくらはぎの筋肉は硬くなりやすいため、意識的にほぐす習慣が予防に有効です。
就寝前や運動後などに、アキレス腱やふくらはぎをゆっくりと伸ばすストレッチを取り入れましょう。
壁に手をついて片足を後ろに引き、かかとを床につけたままアキレス腱を伸ばすストレッチは手軽に行えます。
この時、反動をつけず、痛気持ちいいと感じる程度で20〜30秒間静止するのがポイントです。
ストレッチによって筋肉の柔軟性が高まり、血行も促進されるため、特に睡眠中に起こりやすいこむら返りの予防に効果が期待できます。
継続することが筋肉の状態を良好に保ちます。
体を温めて血の巡りを良くする
体の冷えは血管を収縮させ、血行不良を引き起こすため、筋肉が硬直しやすくなります。
足のつりを予防するためには、日頃から体を温めて血の巡りを良くすることが欠かせません。
最も効果的な方法の一つが、ぬるめのお湯(38~40℃)にゆっくり浸かる入浴です。
湯船に浸かることで全身が温まり、リラックス効果と共に筋肉の緊張が和らぎます。
また、夏場でも冷房の効いた室内では靴下やレッグウォーマーを活用する、冬場はカイロや厚手の衣類で防寒対策を徹底するなど、服装の工夫も重要です。
食事では、生姜やネギ、根菜類など体を温める食材を積極的に取り入れることで、体の内側から血行を促進する助けになります。
バランスの取れた食事とこまめな水分補給を心がける
筋肉の正常な働きには、カルシウム、マグネシウム、カリウムといったミネラルが不可欠です。
これらのミネラルが不足すると、筋肉の収縮・弛緩のバランスが崩れ、けいれんが起こりやすくなります。
カルシウムは乳製品や小魚、マグネシウムはナッツや海藻類、カリウムはバナナやアボカドなどに豊富に含まれています。
これらの食品を日々の食事にバランス良く取り入れることが重要です。
また、脱水はミネラルバランスの乱れを助長するため、こまめな水分補給も忘れてはなりません。
特に汗をかきやすい夏場や運動時、そして就寝前と起床後には、コップ1杯程度の水分を摂る習慣をつけましょう。
喉の渇きを感じる前に、少量ずつ補給するのが効率的です。
まとめ
足のつりは、体内の水分やミネラルの不足、冷えによる血行不良、加齢に伴う筋肉量の減少など、様々な要因が複合的に関わって発生します。
漢方薬は、これらの背景にある個々の体質に着目し、根本からの改善を目指す選択肢の一つです。
急な痛みには「芍薬甘草湯」、冷え性の方には「当帰芍薬散加甘草」、加齢による衰えには「八味地黄丸」といった漢方薬が代表的ですが、自分の体質に合ったものを選ぶことが不可欠です。
漢方薬の服用と同時に、ストレッチで筋肉をほぐし、入浴で体を温め、バランスの取れた食事と水分補給を心がけるといった生活習慣の見直しを行うことで、再発の予防効果が高まります。
症状が改善しない場合は、背後に別の疾患が隠れている可能性もあるため、医療機関への相談が推奨されます。
