首の凝り対策に役立つ漢方薬とは?原因・症状別の選び方とおすすめ5選| 不妊・妊活の漢方薬局(岡山) | 福神トシモリ薬局(オンライン相談可)
漢方
デスクワークやストレスで慢性化しやすい、つらい首の凝り。
マッサージやストレッチを試しても、なかなか改善しないとお悩みの方もいるかもしれません。
東洋医学の考えに基づいた漢方薬は、体の内側からバランスを整え、凝りの根本原因にアプローチする方法です。
この記事では、首の凝りが起こる原因から、東洋医学の視点、症状や体質に合わせた漢方薬の選び方、具体的なおすすめの漢方薬までを解説します。
つらい首の凝りはなぜ起こる?考えられる3つの原因
多くの人が悩む首の凝りは、日常生活のさまざまな要因が複雑に絡み合って発生します。
原因を特定しにくい場合もありますが、主に「血行不良」「精神的ストレス」「体の冷えや水分バランスの乱れ」が挙げられます。
これらの原因は単独で起こることもあれば、複数が関連し合って症状を悪化させることもあります。
自分の生活習慣を振り返り、どの原因が当てはまるかを考えることが、適切な対処法を見つける第一歩となります。
長時間のデスクワークなどによる血行不良
パソコンやスマートフォンを長時間使用する際、多くの人は無意識に頭を前に突き出した姿勢になりがちです。
この姿勢は、重い頭を支える首や肩周りの筋肉に大きな負担をかけ、持続的な緊張状態を引き起こします。
筋肉が緊張し続けると、血管が圧迫されて血行が悪化します。
その結果、筋肉に必要な酸素や栄養素が届きにくくなり、代わりに乳酸などの疲労物質が蓄積されてしまいます。
この疲労物質が神経を刺激し、痛みや重だるさといった凝りの症状として現れるのです。
精神的なストレスからくる筋肉の過度な緊張
仕事上のプレッシャーや人間関係の悩みなど、精神的なストレスを感じると、自律神経のうち体を活動的にする交感神経が優位になります。
交感神経が活発になると、体は常に緊張した「戦闘モード」の状態になり、無意識のうちに筋肉がこわばってしまいます。
特に、首や肩、背中周りの筋肉はストレスの影響を受けやすく、知らず知らずのうちに力が入ることで、血行不良を引き起こし、凝りや痛みの原因となります。
リラックスしているつもりでも、ストレスによって筋肉の緊張が解けない状態が続くと、凝りが慢性化しやすくなります。
体の冷えや水分バランスの乱れ
体が冷えると、血管が収縮して血流が悪くなり、筋肉が硬直しやすくなります。
特に、冬場の寒さや夏場の冷房は、知らず知らずのうちに体を冷やし、首の凝りを悪化させる一因です。
また、東洋医学では体内の水分バランスの乱れも凝りの原因と考えます。
水分代謝が滞って体内に余分な水分が溜まると(水滞)、血行不良を助長したり、体が重だるく感じられたりします。
雨の日など湿度が高い日に症状が悪化する場合は、この水分バランスの乱れが関係している可能性が考えられます。
東洋医学における首の凝りの捉え方
西洋医学が凝りの原因を筋肉の緊張や血行不良といった局所的な問題として捉えるのに対し、東洋医学では体全体のバランスの乱れが症状として現れたものと考えます。
そのため、アプローチも凝っている部位だけでなく、不調の根本原因となっている体質そのものに働きかけることを重視します。
東洋医学の基本的な考え方である「気・血・水」の概念を理解することで、漢方薬がどのように首の凝りに作用するのかが見えてきます。
「気・血・水」の滞りが凝りの根本原因
東洋医学では、私たちの体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つの要素で構成され、これらが体内をスムーズに巡ることで健康が保たれていると考えます。
「気」は生命活動の根源となるエネルギー、「血」は血液とその働き、「水」は血液以外の体液全般を指します。
これらのいずれかの巡りが滞ったり、不足したりすると、体の不調として現れます。
例えば、気の巡りが滞る「気滞」、血の流れが滞る「瘀血(おけつ)」、水の巡りが滞る「水滞(すいたい)」は、いずれも痛みや凝りの直接的な原因となります。
首の凝りは、これらの滞りが特に首周りに顕著に現れた状態と捉えられます。
体全体のバランスを整えて不調を改善する漢方のアプローチ
漢方薬による治療は、痛みや凝りといった表面的な症状を抑えるだけでなく、その背景にある体質的な問題、すなわち「気・血・水」の乱れを整えることを目的としています。
例えば、血行不良が原因であれば血の巡りを良くする漢方薬を、ストレスによる気の滞りが原因であれば気の巡りを整える漢方薬を用いるなど、根本原因に合わせたアプローチを行います。
このように、体全体のバランスを正常な状態に戻すことで、首の凝りだけでなく、冷えや疲労感、精神的な不調といった関連する症状も同時に改善する効果が期待できるのが、漢方治療の大きな特徴です。
【症状・体質別】あなたに合う首の凝り対策にオススメな漢方薬の選び方
漢方薬を選ぶ上で最も重要なのは、現在の症状だけでなく、自分の体質(「証」と呼ばれます)に合ったものを選ぶことです。
同じ首の凝りという症状でも、体力がある人とない人、冷えを感じる人と感じない人では、適した漢方薬が異なります。
ここでは、代表的な原因や症状のタイプ別に、どのような漢方薬が適しているかの選び方の目安を紹介します。
自分の状態をよく観察し、最も近いものを見つける参考にしてください。
血行不良が原因で首筋がガチガチに固まる方向け
デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けることで、首から肩にかけての筋肉が常に緊張し、血流が滞っているタイプです。
東洋医学では、血の流れが停滞した状態を「瘀血(おけつ)」と呼び、これが凝りや痛みの原因と考えます。
触ると硬く、重たいような凝りを感じ、マッサージをすると一時的に楽になるものの、すぐに元に戻ってしまうのが特徴です。
このような場合は、滞った血の巡りをスムーズにし、体を温めることで筋肉の緊張を和らげる作用を持つ漢方薬が適しています。
のぼせや手足の冷え、女性の場合は月経トラブルなどを伴うこともあります。
ストレスや緊張で首が張りやすい方向け
精神的なプレッシャーやイライラ、不安などによって、気の巡りが滞る「気滞(きたい)」が原因で起こる首の凝りです。
自律神経のバランスが乱れ、無意識のうちに首や肩に力が入ってしまい、張るような痛みを感じることが特徴です。
凝りの程度がその日の気分やストレスの度合いによって変動しやすい傾向もあります。
ため息が多い、喉に何かがつかえたような感じがする、お腹が張るなどの症状を伴う場合は、気の巡りを改善し、高ぶった神経を鎮めてリラックスさせる効果のある漢方薬が適しています。
体全体の緊張を解きほぐすことで、凝りを和らげます。
冷えやむくみを伴う首の凝りにお悩みの方向け
もともと冷え性で、特に手足が冷えやすい体質の人がこのタイプに当てはまります。
体が冷えることで血管が収縮し、血行が悪化して凝りが生じます。
また、体内の水分代謝がうまくいかず、余分な水分が溜まる「水滞(すいたい)」の状態も、冷えや血行不良を助長し、重だるい凝りの原因となります。
雨の日や寒い日に症状が悪化しやすく、むくみやめまい、疲労感などを伴うことも多いです。
この場合は、体を内側から温めて血行を促進すると同時に、水分代謝を整えて余分な水分を排出する作用のある漢方薬が効果的です。
風邪のひきはじめで首や肩がこわばる方向け
風邪の初期症状として、ゾクゾクとした寒気や発熱、頭痛などとともに、首筋から肩、背中にかけて強いこわばりや痛みを感じる場合があります。
これは、東洋医学でいう「風寒の邪(ふうかんのじゃ)」が体の表面に侵入し、気血の流れを阻害している状態と考えられます。
このような急性の凝りに対しては、体を温めて発汗を促し、体表にある邪気を追い出す作用を持つ漢方薬が用いられます。
あくまで風邪の初期段階で、まだ汗をかいていない状態に用いるのがポイントで、体力を消耗させることなく、体の防御機能を助けて症状を改善します。
首の凝り改善におすすめの漢方薬5選
ここでは、首の凝りの改善によく用いられる代表的な漢方薬を5つ紹介します。
それぞれの漢方薬がどのような症状や体質の人に向いているか、その特徴を解説します。
薬局やドラッグストアなどで市販されているものも多いですが、自分の状態に合っているかを確認し、選択する際の参考にしてください。
複数の症状が当てはまる場合や、判断に迷う場合は、専門家への相談も検討しましょう。
【葛根湯(カッコントウ)】急な首の痛みや風邪の初期症状に
風邪のひきはじめにというフレーズで広く知られる葛根湯ですが、実は首や肩の凝りに対する効果も持ち合わせています。
特に、急に始まった首の痛みや、寝違え、そして風邪の初期に見られる悪寒や頭痛を伴う首筋のこわばりに適しています。
配合されている葛根や麻黄といった生薬には、体を温めて血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる作用があります。
発汗を促すことで体表の邪気を発散させるため、汗をかいていない風邪の初期段階に用いるのが効果的です。
比較的体力がある人向けの処方とされています。
【桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)】血の巡りを改善し冷えやのぼせを伴う凝りに
桂枝茯苓丸は、東洋医学における「瘀血」、すなわち血の巡りが滞った状態を改善する代表的な漢方薬です。
血行不良が原因で起こる慢性的な首や肩の凝りに用いられ、特に、足は冷えるのに顔はのぼせるといった「冷えのぼせ」の症状がある方に適しています。
その他にも、月経痛や月経不順、子宮筋腫、しみなど、瘀血が関連する婦人科系のトラブルにも広く応用されます。
血の巡りを良くすることで、凝りや痛みの原因に直接働きかけます。
比較的体力があり、のぼせや赤ら顔の傾向がある人に向いています。
【当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)】冷え性で疲れやすい方の慢性的な凝りに
当帰芍薬散は、体力があまりなく、痩せ型で疲れやすく、冷え性の方によく用いられる漢方薬です。
血を補う「補血」作用と、血行を促進する作用、そして水分代謝を整える作用を併せ持ちます。
血行不良と水分代謝の悪化が原因で起こる慢性的な首の凝りに加え、貧血気味で顔色が悪く、めまいや立ちくらみ、むくみ、月経不順といった症状がある場合に適しています。
体を内側から温め、栄養と水分のバランスを整えることで、体質からくる不調を総合的に改善し、凝りを和らげていきます。
【加味逍遙散(カミショウヨウサン)】イライラや気分の落ち込みが原因の凝りに
加味逍遙散は、ストレスやホルモンバランスの乱れによる心身の不調に効果的な漢方薬です。
精神的な緊張やイライラ、不安感、気分の落ち込みといった症状とともに、首や肩が張って凝るという方に適しています。
気の巡りが滞る「気滞」を改善し、さらに体にこもった余分な熱を冷ますことで、精神状態を安定させます。
自律神経のバランスを整えることで、ストレスによる無意識の筋肉のこわばりを和らげ、それに伴う凝りを改善します。
更年期障害や月経前症候群(PMS)に伴う不調にもよく用いられます。
【二朮湯(ニジュツトウ)】腕の痛みやしびれも感じる四十肩・五十肩に
二朮湯は、首や肩の凝りに加えて、腕が上がらない、腕に痛みやしびれがあるといった、いわゆる四十肩・五十肩の症状に用いられることが多い漢方薬です。
東洋医学では、痛みやしびれの原因の一つに体内の余分な「湿(水分)」が関係していると考えます。
二朮湯は、この湿を取り除き、気血の巡りを良くすることで、関節や筋肉の痛み、こわばりを和らげます。
特に、湿度の高い日や体が冷えた時に症状が悪化するタイプの方に適しています。
慢性化した肩周りの痛みや動かしにくさに悩んでいる場合に選択肢となります。
漢方薬を服用する前に押さえておきたい3つのポイント
漢方薬は自然由来の生薬から作られているため、体に優しいイメージがありますが、医薬品であることに変わりはありません。
効果を最大限に引き出し、安全に使用するためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
自己判断で服用を始める前に、ここで紹介する3つの注意点を確認し、正しく漢方薬と付き合うための知識を身につけましょう。
自分の体質や症状に合ったものを選ぶことが大切
漢方薬の効果は、その処方が個々の体質や症状のパターン(証)に合っているかどうかに大きく左右されます。
同じ「首の凝り」という症状でも、その原因が血行不良なのか、ストレスなのか、冷えなのかによって、選ぶべき漢方薬は全く異なります。
また、体力が充実している「実証」タイプか、虚弱な「虚証」タイプかによっても適した処方は変わります。
テレビCMなどでよく聞く有名な漢方薬が、必ずしも自分に合うとは限りません。
まずは自分の体が出しているサインをよく観察し、体質に合ったものを選ぶ意識を持つことが重要です。
用法・用量を守って正しく服用する
漢方薬は医薬品であり、製品ごとに定められた用法・用量を守ることが基本です。
一般的には、胃に食べ物が入っていない食前(食事の約30分前)や食間(食事と食事の間)に、水または白湯で服用することが推奨されています。
これは、有効成分の吸収を良くするためです。
自己判断で量を増やしたり減らしたり、飲み忘れた分を一度にまとめて飲んだりすることは、予期せぬ副作用を招く可能性があります。
製品のパッケージや添付文書をよく読み、記載された指示に従って正しく服用を続けることが、安全かつ効果的な利用につながります。
体に異変を感じたらすぐに服用を中止して専門家に相談する
漢方薬は副作用が少ないとされていますが、体質に合わない場合には、胃の不快感や食欲不振、下痢、発疹やかゆみといった症状が現れることがあります。
まれに、間質性肺炎や肝機能障害などの重篤な副作用が起こる可能性もゼロではありません。
もし服用を始めてから、何らかのいつもと違う体調の変化を感じた場合は、直ちに服用を中止してください。
そして、その漢方薬を購入した薬局の薬剤師や、かかりつけの医師、漢方の専門医に相談することが不可欠です。
特に、他の薬を服用中の方や持病がある方は、事前に専門家へ相談しましょう。
まとめ
首の凝りは、血行不良やストレス、冷えなど様々な原因で起こり、東洋医学では「気・血・水」のバランスの乱れが根本にあると捉えます。
漢方薬は、この乱れを整え、体質から改善することで、つらい凝りにアプローチする方法です。
葛根湯や桂枝茯苓丸など、原因や体質によって適した処方は異なります。
漢方薬を選ぶ際は、自分の症状や体質をよく見極めることが不可欠です。
服用にあたっては用法・用量を守り、もし体に合わないと感じた場合は速やかに専門家へ相談してください。
セルフケアの一つとして漢方薬を検討する際は、この記事で紹介した情報を参考にしつつ、必要に応じて薬剤師や医師のアドバイスを求めるのが賢明です。
