妊娠のための漢方を、症状別にご紹介します
漢方は妊娠しやすい身体づくりに適しています
妊娠成功のカギは、「妊娠できる身体づくり」にあります。
夫婦共に病気や異常は見つからないのに妊娠しないのは、新たな生命を授かる身体の準備がまだ整っていなかったためです。
妊娠して赤ちゃんが生まれるとなれば、赤ちゃんを育てるために、オムツや衣類や寝具などの準備、生活環境を整えますよね。
それと同じで、赤ちゃんを迎えるための身体の準備、子宮の環境を整えることが非常に大切です。
まずは体質を改善し、妊娠しやすい身体に変化させることが、妊娠・子宝への近道だと私たちは考えます。
不妊の状態を引き起こす要因
漢方を含む東洋医学の視点からすると、不妊状態を引き起こす大きな要因は「精の不足」にあると言えます。
精とは、生長・発育などの生命エネルギーの源で、「腎」に貯蔵されます。
東洋医学で「腎」は単に腎臓のことではなく、内分泌系、泌尿生殖器系、免疫に対する働きなどが含まれ、身体を健康に保つ調節器の役目をしています。
疲労や寝不足、食生活の乱れなどで精が不足した状態を「腎虚」と呼び、不妊などの症状を引き起こしてしまいます。
また、血の不足や、血流を悪くしてしまう「冷えやストレス」も、妊娠を妨げる要因となります。
血流は、全ての臓器に酸素や栄養素を運び、不要で有害な二酸化炭素や老廃物を身体の外に運び出す役割を担っています。
血流が悪くなれば、十分に栄養が行き渡らないことで子宮や卵巣の働きが低下し、卵子を育てる力が不足します。
その結果、妊娠が困難になるというわけです。
漢方は自然治癒力を高めることで妊娠する力を取り戻します
漢方の特徴は、身体の症状の「一部」ではなく、身体全体を診ることです。
人には本来、自分を自分で治す力(自然治癒力)が備わっており、身体全体のバランスを整え、自然治癒力を高めることで病気を治療・予防するのが、漢方です。
つまり、西洋医学では病気と考えない「冷え」や、体質に大きく依存するような病気なども漢方では対応することができるので、妊娠しやすい身体づくりに非常に適しているのです。
では、妊娠につながる漢方を具体的にご紹介していきましょう。
※福神トシモリ薬局では、漢方はカウンセリングの上、個人個人に合ったものをお渡ししております。
下記はあくまでも一例ということを踏まえた上、参考程度になさってください。
冷えや胃腸虚弱などに、附子理中湯(ぶりしちゅうとう)
【このような症状の方に】
●手足などが冷えやすい
●よく下痢をする
●胃腸虚弱
●食欲がない
附子理中湯は、主薬の附子(ぶし)と人参(にんじん)をはじめとし、胃腸に良いとされる5種類の生薬からなります。
附子理中湯は、身体の中を温めて痛みを鎮め、胃腸機能を高めます。
主に身体全身(深部)の冷えや、胃腸虚弱による栄養不足の方におすすめしております。
主薬の附子(ぶし)は、身体を強く温める作用があります。
人参(にんじん)には滋養強壮作用や胃腸機能を高める作用、また体力や気力を補います。
白朮(びゃくじゅつ)は水分の巡りを良くする作用があります。
これに、乾姜(かんきょう)は身体を芯から温め、健胃作用や食欲増進作用があります。
甘草(かんぞう)は緩和作用があり、身体をリラックスさせてくれます。
【組成】
人参(にんじん)/甘草(かんぞう) /白朮 (びゃくじゅつ)/ 乾姜(かんきょう)/ 附子(ぶし)
貧血や冷えなどに、人参養栄湯(にんじんえいようとう)
【こんな症状の方に】
●少し動くと動悸や息切れが起こるという方
●貧血や冷え性
●疲労からくる食欲不振
●ストレスが原因の不眠
●疲労倦怠感
人参養栄湯は、身体を温め、消化器系、特に胃腸の働きを高める働きがあります。
胃腸消化力の低下、貧血、疲労衰弱が酷い時、手足が冷えるなどの症状や、病後・術後の体力が低下した時に用います。
主薬の人参(にんじん)に養栄(栄養状態や全身機能を回復させる作用)があることから、人参養栄湯(にんじんようえいとう)という名がつけられました。
人参(にんじん)や黄耆(おうぎ)には滋養強壮の効能があり、当帰(とうき)と地黄(じおう)は血の巡りを良くして貧血改善を助け、白朮(びゃくじゅつ)や茯苓(ぶくりょう)は身体の水分のめぐりを改善します。
【組成】
人参(にんじん)/ 当帰(とうき)/ 芍薬(しゃくやく)/ 地黄(じおう)/ 白朮(びゃくじゅつ)/ 茯苓(ぶくりょう)/ 甘草(かんぞう)/ 桂皮(けいひ)/ 黄耆(おうぎ)/ 遠志(おんじ)/陳皮(ちんぴ)/五味子(ごみし)
血行不良による冷えなどに、冠心逐瘀丹(かんしんちくおたん)
【このような症状の方に】
●血の巡りが悪く、冷えを感じている
●頭痛や肩こり
●めまいや貧血
●動悸
●ストレスによる体調不良
私たちの血液は、身体の末端やすみずみまで栄養を運んでくれています。
この血液が滞り血行が悪くなると、末端や内臓に十分新鮮な血液が行き届かなくなり、さまざまな症状を引き起こしたり、身体が弱ったりします。
漢方において、この状態を「瘀血(おけつ)」といいます。
冠心逐瘀丹(かんしんちくおたん)は、さまざまな理由で起こるこの瘀血(おけつ)を解消し、本来の血のめぐりに戻すはたらきをしてくれます。(活血、といいます)
主薬である丹参(たんじん)は中国では古くから使われてきた生薬で、活血を促す作用があります。
また、川芎(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)、紅花(こうか)にも活血させる働きがあるとされています。
木香(もっこう)、香附子(こうぶし)は身体に滞った気を晴らす働きがあるとされています。
【組成】
丹参(たんじん)/芍薬(しゃくやく)/ 川芎(せんきゅう)/ 紅花(こうか)/木香(もっこう)/香附子(こうぶし)
精力減退や全身症状などに、鹿茸(ろくじょう)
【このような症状の方に】
●四肢が冷えやすい
●腰や膝がだるい
●尿の回数が多い
●めまい・耳鳴り
鹿茸は、生殖機能を活発化させる効果が期待できることから、精力減退や不妊症改善に用いられる漢方です。
世界的に有名な薬物書「本草網目」には、鹿茸は、生命の根源となる「精」を補い生命力を高める効果があると書かれています。
「精の不足」から生じる卵子の発育不足、不妊の症状を引き起こす生殖機能の低下、ホルモンバランスや免疫の異常、または老化に伴って生じる様々な症状の改善に効果が期待できます。
男性不妊の改善にも用いられる漢方です。
精神不安や胃腸症状に、逍遥散(しょうようさん)
【このような症状の方に】
●疲れやすく精神が不安定
●ガスが溜まりやすい、ゲップが出やすい
●場所が変わると便秘する
逍遙散(しょうようさん)は、弱った肝を補うことで気の流れを改善し、身体全体の新陳代謝をリセットしてくれる漢方です。
また、胃腸の状態を改善する手助けもしてくれます。
柴胡(さいこ)は肝気を整え、気を巡らせます。
茯苓(ぶくりょう)には利水作用や胃腸を元気にする作用があります。
当帰(とうき)には血(けつ)を補い、月経を調節する働きがあります。
芍薬(しゃくやく)は肝を養い、肝気を巡らせます。
白朮(びゃくじゅつ)は、健胃、利尿作用があり、水分の巡りをよくします。
生姜(しょうきょう)は身体を温め、発汗させる作用があります。
甘草(かんぞう)は他の生薬の効能を調和させる機能があります。
薄荷(はっか)はゆるやかな発汗作用があり、解熱・鎮痛の効能もあります。
【組成】
柴胡(さいこ)/ 薄荷(はっか)/ 当帰(とうき)/ 芍薬(しゃくやく)/ 白朮(びゃくじゅつ)/ 茯苓(ぶくりょう)/ 甘草(かんぞう)/ 生姜(しょうきょう)
倦怠感や虚弱体質に、複宝霊黄参丸(ふくほうれいおうさんがん)
【こんな症状の方に】
●だるくて朝起きるのがつらい
●胃腸が弱く、食欲がない
●手足が冷えがち
●虚弱体質で病気をしやすい
複方霊黄参丸は、古来から強壮薬として用いられてきた牛黄や紅参をはじめ、10種類の動物性及び植物性生薬を配合した滋養強壮剤です。
虚弱体質で病気をしやすい方、食生活の乱れからくる栄養不良の方、貧血や低血圧など血の巡りが悪く手足が冷たい方などの滋養強壮に効果が期待でき、男性不妊にも用いられる漢方です。
牛黄(ごおう)は、牛の胆のう中でつくられる結石で、強壮滋養の効果があります。
紅参(こうじん)は古くから漢方の生薬として幅広く用いられ、疲労回復・食欲増進などの働きがあります。
当帰(とうき)は、血を補い、血の巡りを良くし、月経を整える働きがあります。
防風(ぼうふう)は身体を温め、倦怠感を和らげます。
川芎(せんきゅう)は血の巡りを良くし、さまざまな痛みを和らげます。
甘草(かんぞう)は胃腸の働きを活発にし、けいれん性のある痛みを抑えます。
芍薬(しゃくやく)は血を補い、血の巡りも改善します。痛みを緩和する作用もあります。
桂皮(けいひ)は身体を温め、冷えを改善します。
【組成】
牛黄(ごおう)/ 紅参(こうじん)/ 当帰(とうき)/ 防風(ぼうふう)/ 川芎(せんきゅう)/ 甘草((かんぞう)/ 芍薬(しゃくやく)/ 桂皮(けいひ)/ 動物胆(どうぶつたん)/ 鹿茸(ろくじょう)
オーダーメイドの漢方で、妊娠できる身体づくりをしていきましょう!
漢方は、自然界に存在する植物や動物、鉱物などの自然の恵みです。
科学的に作られた西洋薬に比べると、副作用は少ないです。
とはいえ、ご自身の体質や、身体の状態に合った漢方でなければ、思ったような効果が期待できないだけでなく、不快な症状が出ることもあります。
例えば、どんなに素晴らしい靴だとしても、自分の足の形に合わない靴を履き続けていれば、歩きづらく、靴擦れを起こしてしまいます。
自分にぴったりの靴は歩きやすく、無理なく自然と大地を踏み締め、歩みを進めることができます。
漢方はオーダーメイドだからこそ、その力が十分に発揮されます。
自覚症状だけでは本当に自分にあった漢方というのは分かりません。
自己判断で購入するのではなく、漢方の専門家に今の身体がどのような状態なのかを判断してもらい、どのようにしたら効果的に妊娠できるのか、アドバイスにしたがって、漢方を飲むことをおすすめします。
また、全ての漢方薬局が、妊娠につながる漢方を取り揃えているわけではありません。
漢方で妊活を始める方や、病院での不妊治療と併用される方は、子宝・不妊専門の漢方薬局で相談することが、子宝の夢を叶える近道です。