脱肛の症状・原因・治療法とは?自分でできる正しい戻し方も解説

脱肛の症状・原因・治療法とは?自分でできる正しい戻し方も解説 健康

排便時に肛門から何かが出てきて、これが痔なのか、それとも重大な病気ではないかと不安に感じていませんか。
この記事を読めば、ご自身のいぼ痔の症状が「脱肛」なのか、あるいは似た症状の「直腸脱」なのかを判断し、手術が必要な段階か、それとも市販薬や生活習慣の改善で様子を見られるのかを把握した上で、適切な原因の治療や正しい戻し方を理解し、診療科を受診すべきか判断できるようになります。

▼この記事でわかること
・脱肛と直腸脱の違いおよび主な発症原因
・4段階の進行度から重症度を見極めるセルフチェック基準
・外に出てしまった患部を安全に押し戻すための正しい手順
・保存療法から日帰り手術まで症状に応じた治療法の選び方

脱肛とは?肛門から粘膜が飛び出す「いぼ痔」の一種

脱肛とは、おしりの穴の内側にある粘膜下の血管が集まった部分(静脈叢)がうっ血してできた「いぼ痔(内痔核)」が、排便時などに肛門の外に飛び出してしまう状態を指します。
肛門と直腸の境目である歯状線より内側にできた内痔核と、その支持組織が引き伸ばされることで発生します。
初期段階では痛みを感じないことも多いですが、進行すると出血や痛みを伴うようになります。
脱肛とよく似た症状に直腸脱があるため、両者の違いを理解することが重要です。

脱肛(いぼ痔)と直腸脱の見分け方|症状と見た目の違いを解説

脱肛と直腸脱は、どちらも肛門から何かが飛び出す症状ですが、その正体は異なります。
脱肛が「いぼ痔(痔核)」という血管の塊であるのに対し、直腸脱は直腸そのものの壁が肛門の外に反転して出てきてしまう状態です。
見た目にも違いがあり、脱肛は一部がいぼのようにぷっくりと腫れていることが多いのに対し、直腸脱は同心円状のシワが見られるのが特徴です。

また、直腸脱では粘液で下着が汚れたり、便失禁を伴ったりする症状も現れやすいです。
では、なぜこのような脱肛が引き起こされるのでしょうか。
その主な原因を見ていきましょう。

脱肛を引き起こす4つの主な原因

脱肛の主な原因は、肛門周辺への継続的な物理的負担です。
排便時の強いいきみや長時間同じ姿勢でいることなどが、肛門部の血流を悪化させ、うっ血を引き起こします。
なぜこのような負担がかかるのか、具体的な要因を知ることが予防の第一歩となります。

東洋医学では、体内のエネルギーである「気」が不足し、内臓や組織を定位置に保つ力が弱まる「気虚(ききょ)」の状態も、脱肛の一因と考えられています。

便秘や下痢による排便時の強いいきみ

便秘になると硬い便を排出しようとして、排便時に無意識に強くいきんでしまいます。
この力みすぎが肛門に強い圧力をかけ、うっ血を促進する最大の原因となります。
また、硬い便が肛門を通過する際に粘膜を傷つけ、炎症や腫れを悪化させることもあります。

逆に下痢の場合も、頻繁な排便や勢いよく便を出す行為が肛門への負担となり、脱肛を引き起こす一因です。

便秘や下痢が原因の痔については「痔と漢方薬の選び方」で詳しく紹介しています。

長時間座りっぱなしなどの生活習慣

デスクワークや長時間の運転など、座りっぱなしの姿勢を続ける生活習慣は、肛門周辺の血流を滞らせる大きな要因です。
体重が肛門部にかかり続けることで、静脈が圧迫されてうっ血しやすくなります。

同様に、調理師や販売員など立ちっぱなしの仕事も、重力によって下半身に血液が溜まりやすく、肛門部の負担を増大させるため注意が必要です。

妊娠・出産による腹圧の上昇

妊娠中は、大きくなった子宮が骨盤内の血管を圧迫し、肛門周辺の血流が悪化しやすくなります。
また、妊娠によるホルモンの影響で便秘になりがちなことも要因の一つです。
出産時には、強くいきむことで腹圧が極度に高まり、肛門に大きな負担がかかるため、産後に脱肛を発症したり、悪化したりするケースは少なくありません。

出産後も、授乳や育児で座っている時間が長くなることが影響します。

加齢に伴う肛門周りの筋力低下

年齢を重ねるとともに、体を支える筋力が全体的に低下します。
同様に、肛門周辺の組織や、肛門を支える骨盤底筋などの支持組織も弱くなります。
この加齢による支持組織の緩みが、痔核を本来の位置に留めておく力を弱め、脱肛を引き起こしやすくします。

特に高齢者の場合、長年の排便習慣の積み重ねも相まって、脱肛を発症するリスクが高まる傾向にあります。
これらの原因によって引き起こされた脱肛は、その進行度によって症状が異なります。

【セルフチェック】脱肛の進行度と重症度別の症状

脱肛の重症度は、一般的に「Goligher(ゴリガー)分類」という指標を用いて4段階に分けられます。
この分類は、脱出の程度によって判断され、軽症から重症まで症状が異なります。
自分の症状がどの段階にあるかを把握することで、適切な治療法を選択する目安になります。

軽度であれば生活習慣の改善で様子を見ることも可能ですが、悪化して腫れや痛みがひどくなる前に、進行度を知っておくことが大切です。
大きさだけでなく、戻りやすさも重要な判断基準です。

グレードⅠ:排便時に脱出するが自然に戻る段階

グレードⅠは最も軽い段階です。
排便時に強くいきんだ際に内痔核が肛門の外に少し顔を出しますが、排便後には自然に肛門内に戻ります。
痛みを感じることは少なく、主な症状は排便時の出血です。

この段階では、多くの人が痔であることに気づかないか、気づいても放置しがちです。
生活習慣の改善や保存療法で悪化を防ぐことが重要になる、軽い状態です。

グレードⅡ:排便時に脱出し、手で押さないと戻らない段階

グレードⅡになると、排便時に脱出した痔核が自然には戻らなくなります。
指で押し込むなどの処置をしないと、元に戻らない状態です。
排便のたびに脱出と還納を繰り返すことになり、日常生活で不快感を感じるようになります。

出血や痛みを伴うことも増え、この段階で医療機関を受診する人が多くなります。
手で戻す必要が出てきたら、悪化のサインと捉えるべきです。
押し込む際は清潔な指で行う必要があります。

グレードⅢ:常に脱出しており、手で押しても戻らない段階

グレードⅢは、排便時だけでなく、重いものを持ったり、長時間歩いたりといった日常生活の動作でも脱出するようになり、常に肛門の外に出たままの状態を指します。
指で押し込んでもすぐに出てきてしまったり、戻らない場合もあります。

粘液が下着に付着して不快感を覚えたり、炎症を起こして痛みや腫れを伴うことも多く、生活の質が著しく低下します。
この段階になると、手術が治療の選択肢として検討されます。

嵌頓(かんとん)痔核:脱出したまま戻らず激しい痛みを伴う状態

嵌頓痔核は、脱出した痔核が肛門括約筋によって締め付けられ、血流が滞ってしまった状態です。
脱出した部分が戻らないだけでなく、激しい痛みと強い腫れを伴い、炎症を起こして赤黒く腫れ上がります。
この状態を放置すると、組織が壊死する危険性もあり、緊急の処置や手術が必要となる非常に危険な状態です。

もし嵌頓痔核が疑われる場合は、すぐに専門医を受診する必要があります。

外に出てしまった脱肛の正しい戻し方と応急処置

脱肛が肛門の外に出てしまった場合、自分で元に戻す「還納」という応急処置があります。
ただし、これは一時的な対処法であり、根本的な治療ではありません。
正しい戻し方を実践することで、痛みや不快感を和らげることができますが、無理に行うと症状を悪化させる危険もあるため注意が必要です。

特に、嵌頓痔核のように激しい痛みを伴う場合は、自分で無理に押し込むことは避けてください。

指で優しく押し込む際の具体的な手順

脱肛を戻す際は、まず手指を石鹸でよく洗い、清潔な状態にします。
お風呂上がりなど、体が温まってリラックスしている時に行うのがおすすめです。
指にワセリンや軟膏などを塗って滑りを良くし、中腰などの楽な姿勢をとります。

そして、脱出した部分全体を指の腹で包むように持ち、ゆっくりと肛門内に押し込んでいきます。
このやり方で、焦らず優しく行うことが重要です。
一度で戻らない場合は、無理に押し込むのはやめましょう。

脱肛を戻す際にやってはいけないNG行動

脱肛の戻し方で絶対に避けるべきなのは、無理やり力ずくで押し込むことです。
組織を傷つけ、炎症や腫れを悪化させるリスクがあります。
また、トイレットペーパーで強く押さえつけるのも、粘膜を傷つける原因となるため避けるべきです。

痛みや腫れがひどい場合や、押し込んでもすぐに出てきてしまう場合は、自己判断での対処を中止し、速やかに専門医に相談してください。
放置することで嵌頓痔核に至る危険性もあります。

脱肛の治療法|手術は必要?薬や日帰り治療も解説

脱肛の治療法は、症状の進行度によって異なります。
比較的症状が軽い初期段階では、薬物療法や生活習慣の改善といった保存療法が中心となります。
しかし、症状が進行し、日常生活に支障をきたすようになると、注射による硬化療法や手術が必要になる場合があります。

近年では、患者の負担が少ない日帰りでの治療も可能になっており、脱肛を治すための選択肢は広がっています。

症状が軽い場合の保存療法(薬物療法・生活習慣改善)

グレードⅠやⅡなどの軽症な脱肛の場合、まずは保存療法から開始します。
炎症や腫れを抑える軟膏や坐薬といった塗り薬、血行を改善する飲み薬などが処方されます。
同時に、便秘や下痢を防ぐための食生活の見直しや、正しい排便習慣を身につけるといった生活習慣の改善指導が行われます。

漢方では、炎症を抑え血流を促す「乙字湯」や、内臓を引き上げる力を補う「補中益気湯」など、体質に合わせた薬が用いられることもあります。

いぼ痔の漢方薬については「[乙字湯の効果と選び方](https://toshimori.jp/blog/6047)」で詳しく紹介しています。

日帰りも可能?脱肛の主な手術方法と費用

保存療法で改善が見られない場合や、グレードⅢ以上の進行した脱肛には手術が検討されます。
代表的な手術には、痔核を根元から切り取る「結紮切除術」があります。
これは根治性が高い方法ですが、術後の痛みがあり、数日間の入院が必要な場合があります。

一方、近年増えているのが「ALTA(アルタ)療法」という注射による硬化療法です。
これは痔核に直接薬剤を注射して硬化・縮小させる治療法で、切開を伴わないため痛みが少なく、日帰りでの手術が可能です。
費用は保険適用で数万円程度が目安となります。

病院は何科を受診すべき?まずは肛門科へ相談を

脱肛の症状に気づいたら、まずは肛門科や肛門外科を受診するのが最も適切です。
近くに専門の科がない場合は、消化器外科や胃腸科でも対応してもらえます。
専門医は、視診や指診、肛門鏡を使った検査などにより、脱肛の進行度や直腸脱など他の病気との鑑別を正確に行います。

羞恥心を感じるかもしれませんが、自己判断で放置すると症状が悪化する可能性があるため、勇気を出して専門医へ相談することが早期解決への近道です。

脱肛の再発を防ぐための生活習慣のポイント

手術などで脱肛の治療を行っても、根本的な原因である生活習慣が改善されなければ、再発のリスクは残ります。
肛門への負担を減らし、健康な状態を維持するためには、日々の暮らしを見直すことが不可欠です。
東洋医学には「未病」という考え方があり、本格的な病気になる前に体の不調を整えることを重視します。

脱肛を防ぐには、まさにこの考えに基づいたセルフケアが重要です。

食物繊維と水分を意識した食事で便秘を改善する

脱肛の最大の原因である便秘を改善するためには、食生活の見直しが基本です。
便のかさを増やし、柔らかくするために、野菜、きのこ、海藻、果物などに含まれる食物繊維を積極的に摂取しましょう。
同時に、1日に1.5〜2リットルを目安に十分な水分を摂ることで、便が硬くなるのを防ぎます。

朝食を抜かない、バランスの取れた食事を3食規則正しく摂ることも、腸の働きを整える上で効果的です。

便秘解消における漢方薬の活用については「[補中益気湯の便秘への効果](https://toshimori.jp/blog/6116)」で詳しく紹介しています。

トイレに長居しない正しい排便習慣を身につける

便意を感じたら我慢せず、すぐにトイレに行く習慣をつけましょう。
便意を逃すと便が硬くなり、排便が困難になります。
トイレでは、スマートフォンを持ち込むなどして長居することは禁物です。

3〜5分以上いきみ続けることは肛門に大きな負担をかけます。
もし便が出ない場合は一度トイレから出て、再び便意が来てから試すように心がけることが大切です。
正しい排便を意識することが予防につながります。

体を冷やさず血行を促進する

体の冷えは血行不良を招き、肛門部のうっ血を悪化させる原因となります。
毎日の入浴で湯船に浸かり、腰回りをしっかりと温める習慣をつけましょう。
血行促進には、適度な運動も効果的です。

ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことで、全身の血流が改善されます。
また、骨盤底筋を鍛えるトレーニングは、肛門周りの支持組織を強化し、脱肛の予防に役立ちます。

脱肛に関してよくある質問

ここでは、脱肛や痔に関して多くの方が抱く疑問について解説します。
脱肛になると重大な病気につながるのではないか、市販薬で対処できないか、手術は痛いのかといった不安や疑問にお答えします。
正しい知識を持つことで、過度な心配を減らし、適切な行動をとれるようになります。

脱肛を放置すると癌になる可能性はありますか?

脱肛(いぼ痔)が直接、直腸がんになることはありません。
脱肛の症状である出血や違和感が、実は直腸がんの初期症状である可能性も否定できません。

自己判断で「ただの痔だ」と放置すると、重大な病気の見逃しにつながるリスクがあります。
症状が続く場合は、必ず専門医の診察を受けて正確な診断をしてもらうことが重要です。

脱肛は市販薬を使って自力で治せますか?

症状がごく軽い初期段階であれば、薬局などで購入できる市販薬で一時的に出血や腫れを和らげることは可能です。
しかし、市販薬で脱肛を根本的に治すことは難しく、進行してしまった脱肛には効果が期待できません。
症状が改善しない場合や、繰り返す場合は自己判断を続けず、医療機関を受診して適切な治療を受けることをお勧めします。

脱肛の手術は痛いですか?また、入院は必要ですか?

手術方法によりますが、近年は痛みも少なく日帰りで可能な治療法も増えています。
ALTA療法のような注射による治療は切開しないため、手術中の痛みはほとんどありません。

従来から行われている結紮切除術の場合も、麻酔を使用するため術中の痛みはなく、術後の痛みも鎮痛剤でコントロールできます。
入院の必要性も手術法によって異なり、日帰りから数日程度の入院まで様々です。

まとめ

脱肛は、内痔核が肛門の外に飛び出す状態であり、放置すると悪化する可能性があります。
その原因の多くは、便秘によるいきみや長時間の座り姿勢といった生活習慣にあります。
治療法は進行度によって異なり、軽度であれば薬や生活習慣の改善による保存療法が、進行した場合は日帰りも可能な手術や注射療法が選択されます。

いぼ痔の再発予防には、食事や排便習慣の見直しが重要です。
肛門からの脱出や出血といった症状があれば、自己判断せずに肛門科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

歳森 三千代
(としもり みちよ)
/ 薬剤師

岡山県岡山市にある不妊・妊活専門の漢方相談薬局 福神トシモリ薬局で、漢方と体質改善による妊活支援・身体づくりを専門とする薬剤師。これまで延べ1,300名以上の妊娠相談実績を持つ(全国からの相談対応あり)。 ブログでは「漢方や健康に関する豆知識」「妊活・不妊のお役立ち情報」「体質に合わせた漢方の使い方」など、専門知識に基づく実践的な情報を発信しています。読者の生活に寄り添い、長年の相談実績をもとに分かりやすく解説することを心がけています。
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