心因性嘔吐とは?ストレスが原因の症状・何科を受診すべきか解説

心因性嘔吐とは?ストレスが原因の症状・何科を受診すべきか解説 健康

心因性嘔吐は、主に精神的なストレスが原因で吐き気や嘔吐が起こる心身症の一つです。
身体的な検査では異常が見つからないにもかかわらず、特定の状況下で症状が現れるのが特徴です。
この記事では、心因性嘔吐の具体的な症状から原因、適切な改善方法、そして何科を受診すべきかについて詳しく解説します。

この記事でわかること
・ストレスが原因で吐き気が起こる心因性嘔吐の症状と特徴
・まず消化器内科、次に心療内科という適切な受診の流れ
・心理療法や薬物療法を中心とした専門的な改善方法
・症状の緩和に役立つセルフケアとストレスへの向き合い方

 

心因性嘔吐とは?ストレスによって引き起こされる吐き気のこと

心因性嘔吐とは、胃や腸に病気などの器質的な問題がないにもかかわらず、心理的な要因によって吐き気(悪心)や嘔吐を繰り返す状態を指します。
「神経性嘔吐症」とも呼ばれ、不安や緊張といった精神的ストレスが引き金となって自律神経が乱れ、胃の働きに影響を与えることで発症します。
身体の病気ではないため、周囲から理解されにくいという側面も持ち合わせています。

あなたはどれに当てはまる?心因性嘔吐の具体的な症状

心因性嘔吐には、他の消化器疾患とは異なるいくつかの特徴的な症状が見られます。
大人だけでなく子供にも起こりうるもので、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
以下に挙げる症状が自分に当てはまるかチェックし、状態を客観的に把握するための参考にしてください。

特定の状況で吐き気がこみ上げる(朝、仕事・学校の前など)

心因性嘔吐の症状は、常に現れるわけではなく、特定の状況や時間帯に限定して起こりやすい傾向があります。
例えば、「朝、出勤や登校の準備をしているとき」「大事な会議や試験の前」「人前に立つとき」など、強いプレッシャーや不安を感じる場面で吐き気がこみ上げてきます。
症状が悪化すると、通学や通勤が困難になり、不登校や休職につながるケースも見られます。

検査を受けても身体的な異常が見つからない

心因性嘔吐の最も大きな特徴は、吐き気や嘔吐といった症状があるにもかかわらず、医療機関で胃カメラや血液検査などを受けても、身体的な異常が全く見つからない点です。
原因となる病名が特定できないため、複数の病院を転々とすることも少なくありません。
身体的な問題がないと診断されることで、かえって「気のせいなのか」と悩み、一人で抱え込んでしまう方もいます。

吐き気は頻繁に起こるが、実際に嘔吐することは少ない

喉のあたりに何かが詰まったような不快感や、こみ上げてくるような強い吐き気が頻繁に起こりますが、実際に吐いてしまうことは比較的少ないという特徴があります。
吐き気は強いものの、腹痛や下痢といった他の消化器症状を伴わない場合も多いです。
この「吐きそうで吐けない」状態が続くことで、心身ともに疲弊してしまうことが問題となります。

食事はとれるため体重が大きく減ることはない

特定の状況下で吐き気が起こる一方で、リラックスしているときなどは問題なく食事ができるため、体重が著しく減少するケースは稀です。
特定の食べ物が原因で吐き気が起こるわけではないので、食事が全くできなくなるわけではありません。
体重減少を伴う摂食障害とはこの点で区別されます。

ただし、症状が長引くことで食欲不振に陥る可能性はあります。

なぜ起こるの?心因性嘔吐を引き起こす主な原因

心因性嘔吐は、単一の原因でなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
その根底には、精神的なストレスと、それが身体に影響を及ぼすメカニズムとして自律神経の乱れが深く関わっています。
ここでは、心因性嘔吐を引き起こす主な原因を3つの側面から解説します。

過度な精神的ストレスや環境の変化

心因性嘔吐の最も大きな引き金となるのが、精神的なストレスです。
職場や学校での人間関係、仕事上のプレッシャー、学業への不安、家庭内の不和などが慢性的に続くことで、心身のバランスが崩れてしまいます。

また、進学、就職、結婚、転居といった大きな環境の変化も、本人が気づかないうちにストレスとなり、症状を発症させるきっかけになることがあります。

不安やトラウマなどの心理的要因

もともと不安を感じやすい、完璧主義で責任感が強いといった性格傾向も、心因性嘔吐の発症に関係している場合があります。
また、過去のつらい体験が、特定の状況と結びついて吐き気を誘発することもあります。
さらに、うつ病や不安障害、パニック障害といった他の精神疾患の一つの症状として、嘔吐や吐き気が現れることも少なくありません。

自律神経の乱れによる身体への影響

過度なストレスは、身体の機能を自動的に調整している自律神経のバランスを乱します。
自律神経は、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経から成り立っていますが、ストレス状態が続くと交感神経が過剰に働き続けます。

この状態が胃腸の正常な運動を妨げ、蠕動運動の異常や胃酸の過剰分泌などを引き起こし、結果として吐き気や嘔吐という身体症状につながります。
自律神経の乱れについては「春の吐き気と自律神経の乱れ」で詳しく紹介しています。

何科に行けばいい?心因性嘔吐で受診すべき診療科の選び方

「吐き気」という身体症状があるため、どの診療科を受診すればよいか迷うことが多いかもしれません。
心因性嘔吐の適切な診断を受けるためには、段階を踏んで受診することが重要です。
まずは身体的な病気の可能性を否定し、その上で心の問題を専門とする診療科へつなげていくのが一般的な流れです。

内科的な検査は、正しい診断への第一歩となります。

まずは消化器内科で身体的な病気の可能性を調べる

最初に受診すべきなのは、消化器内科や一般内科です。
吐き気を引き起こす可能性のある、逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんといった消化器系の病気がないかを調べる必要があります。
問診に加え、必要に応じて血液検査、腹部エコー、胃内視鏡検査などが行われます。

これらの検査で身体的な異常がないことを確認することが、心因性嘔吐の診断において不可欠です。

異常がなければ心療内科や精神科で専門的な相談をする

消化器内科での検査の結果、特に異常が見つからなかった場合に、心療内科や精神科の受診を検討します。
心療内科は、心理的な要因が身体症状として現れる「心身症」を専門としており、心因性嘔吐の診断と治療の中心となります。
精神科では、うつ病や不安障害など、背景にある精神疾患の可能性も含めて診断・治療を行います。

心因性嘔吐の治し方|病院で行われる主な治療法

心因性嘔吐の治療は、一つの方法に頼るのではなく、心理的なアプローチと身体症状を和らげるアプローチを組み合わせて行われます。
主な治療法として、心理療法、薬物療法、そして磁気刺激治療(TMS)などが挙げられます。
症状が強く、食事がとれない場合には、一時的に点滴で水分や栄養を補給することもありますが、根本的な解決にはつながりません。

抗不安薬などの薬を用いながら、ストレスの根本原因に働きかける治療を進めます。

心理療法(カウンセリング)でストレスへの向き合い方を見つける

治療の基本となるのが、カウンセリングなどの心理療法です。
専門家との対話を通じて、自分自身が抱えているストレスの原因や、無意識の不安に気づくことを目指します。
特に認知行動療法では、ストレスを感じやすい思考の癖や行動パターンを客観的に見つめ直し、より柔軟な捉え方ができるように働きかけます。

ストレスへの適切な対処法を身につけることは、症状の再発防止に向けた重要な対策となります。

症状を和らげるための薬物療法(抗不安薬・漢方薬など)

吐き気や不安感が強く、日常生活に大きな支障が出ている場合には、症状を緩和するための薬物療法が併用されます。
主に、不安を和らげる抗不安薬や、気分を安定させる抗うつ薬(SSRIなど)が用いられます。
また、胃腸の働きを調整する消化管機能改善薬が処方されることもあります。

体質や症状に合わせて、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)などの漢方薬が選択される場合もあります。

磁気刺激治療(TMS)のような新しいアプローチ

薬物療法で十分な効果が得られない場合や、薬の副作用が心配な場合の選択肢として、磁気刺激治療(TMS)があります。
これは、磁気コイルを頭部に当て、脳の特定領域を刺激することで、乱れた神経ネットワークの働きを正常化させる治療法です。
副作用が少なく、心因性嘔吐の原因となる不安やストレスに関連する脳の機能を直接整える効果が期待される新しいアプローチとして注目されています。

症状を緩和するために自分でできる対処法

医療機関での専門的な治療と並行して、日常生活の中で自分自身でできる工夫を取り入れることも、症状の緩和とコントロールに役立ちます。
セルフケアは、つらい症状への直接的な対策になるだけでなく、ストレスそのものへの抵抗力を高めることにもつながります。
自分に合った対応方法を見つけ、継続的に実践することが重要ですす。

深呼吸や瞑想でリラックスできる時間を作る

強い吐き気や不安感に襲われたときは、まずその場から離れ、意識的にリラックスする時間を作ることが有効な対応です。
ゆっくりと鼻から息を吸い、口から時間をかけて吐き出す腹式呼吸は、副交感神経を優位にし、高ぶった神経を鎮める効果が期待できます。
また、マインドフルネス瞑想やヨガなどを日常的に取り入れることで、ストレスを受け流しやすい心身の状態を育むことができます。

ストレスの原因から一時的に距離を置くことも大切

もしストレスの原因が特定の環境や人間関係であると明確にわかっている場合は、そこから物理的・心理的に距離を置く勇気も必要です。
例えば、職場環境が原因であれば、配置転換を申し出たり、思い切って休職制度を利用したりすることも検討します。
心と体を休ませるための時間を確保し、エネルギーを回復させることが、結果的に症状の改善への近道となる場合があります。

吐き気を和らげる効果が期待できるツボを押す

東洋医学では、吐き気を抑える効果があるとされるツボが知られています。
代表的なのは、手首の内側のしわから指3本分ひじ側にある「内関(ないかん)」というツボです。
乗り物酔いにも効くとされ、反対側の手の親指で少し痛みを感じる程度の強さでゆっくりと押します。

急な吐き気が起きた際の応急処置として覚えておくと、外出時などでも安心材料になります。

生活リズムを整えて心身のバランスを保つ

心身の健康を保つための基本的な対策として、生活リズムを整えることは非常に重要です。
毎日決まった時間に起きて朝日を浴び、夜は質の良い睡眠を十分にとることを心がけます。

栄養バランスの取れた食事を3食規則正しく摂り、ウォーキングなどの軽い運動を習慣にすることで自律神経の働きが安定し、ストレスに対する抵抗力が高まります。

心因性嘔吐に関するよくある質問

心因性嘔吐は、本人だけでなく周囲の家族もどのように関わればよいか悩むことが多い症状です。
ここでは、病気への理解を深め、適切な対応をとるために役立つ、よくある質問とその回答をまとめました。

子供が心因性嘔吐になった場合、親はどのように対応すべきですか?

まずは症状を頭ごなしに否定せず、「つらいね」と気持ちに寄り添い、安心できる環境を作ることが最も重要です。
無理に登校・登園させず、まずは小児科や消化器科で身体的な病気がないか確認してください。
その上でスクールカウンセラーや児童精神科の専門家と連携し、子供が抱えるストレスの原因を丁寧に見つけていく対応が求められます。

改善にはどのくらいの期間がかかりますか?完治は可能ですか?

改善までの期間は個人の症状の重さやストレス要因によって大きく異なり、数ヶ月で改善する人もいれば、数年単位で取り組む必要がある人もいます。
焦らずじっくり治療を続けることが大切です。
症状が完全になくなる「完治」を目指すより、ストレスへの対処法を身につけ、症状をコントロールできる状態(寛解)を目指すことが現実的な目標となります。

周囲に「気のせい」と誤解されないために、どう説明すれば良いですか?

「ストレスが原因で自律神経が乱れ、胃が正常に動かなくなる身体の病気です」と具体的に説明するのが有効です。
また、「内科の検査では異常はなかったけれど、心療内科で心身症という医学的な診断を受けている」と伝えることで、単なる気分の問題ではないことを理解してもらいやすくなります。
医師から家族へ直接説明してもらう対応も一つの方法です。

まとめ

心因性嘔吐は、精神的ストレスが引き起こす身体のサインであり、決して「気のせい」や「甘え」ではありません。
まずは消化器内科で身体的な異常がないことを確認し、次に心療内科や精神科といった専門機関で相談することが重要です。

改善のためには、心理療法や薬物療法などがあり、生活習慣の見直しやリラックス法といったセルフケアを組み合わせることで症状の改善が期待できます。
一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら、自分の心と体に向き合っていくことが回復への第一歩です。

歳森 三千代
(としもり みちよ)
/ 薬剤師

岡山県岡山市にある不妊・妊活専門の漢方相談薬局 福神トシモリ薬局で、漢方と体質改善による妊活支援・身体づくりを専門とする薬剤師。これまで延べ1,300名以上の妊娠相談実績を持つ(全国からの相談対応あり)。 ブログでは「漢方や健康に関する豆知識」「妊活・不妊のお役立ち情報」「体質に合わせた漢方の使い方」など、専門知識に基づく実践的な情報を発信しています。読者の生活に寄り添い、長年の相談実績をもとに分かりやすく解説することを心がけています。
※掲載内容は一般的な情報であり、効果には個人差があるため、効果を必ずしも証するものではありません。