春の吐き気、原因は自律神経?漢方で体質から改善する方法
漢方
春は過ごしやすい季節ですが、原因不明の吐き気やだるさといった不調を感じる方も少なくありません。
その不快な症状は、季節の変わり目に起こる自律神経の乱れが関係している可能性があります。
漢方では、こうした春特有の不調を体質から見直し、心身のバランスを整えることで改善を目指します。
なぜ春に吐き気がするのか、その原因と漢方薬を用いた対処法について解説します。
春に吐き気が起こりやすいのはなぜ?自律神経の乱れが原因かも
春は寒暖差や気圧の変動が大きく、体温や血圧を調整する自律神経に負担がかかりやすい季節です。
また、進学や就職、異動といった環境の変化による精神的なストレスも、自律神経のバランスを崩す要因となります。
自律神経が乱れると、内臓の働きにも影響が及び、特に胃や腸の機能が低下しやすくなります。
その結果、吐き気や胃もたれ、食欲不振といった症状が現れるのです。
急な寒暖差や気圧の変動が体に与える影響
春は日中の気温が上がっても朝晩は冷え込むなど、一日の中での寒暖差が激しい季節です。
体は頻繁な温度変化に対応しようと自律神経を過剰に働かせるため、エネルギーを消耗し、疲労が蓄積しやすくなります。
また、低気圧と高気圧が頻繁に入れ替わることで、体内の水分バランスが乱れ、吐き気やめまい、頭痛といった症状が引き起こされることもあります。
特に、気圧の変化に敏感な方は、天候が悪化する前後に不調を感じる傾向が見られます。
新生活のストレスや環境の変化も胃腸不調の一因に
春は新生活が始まる季節であり、新しい環境や人間関係への適応には、知らず知らずのうちに精神的な緊張を伴います。
このようなストレスは自律神経の交感神経を優位にし、胃腸の血管を収縮させて働きを鈍らせる原因となります。
その結果、消化不良や胃酸の過剰分泌が起こり、吐き気や胃もたれ、食欲不振につながることがあります。
また、過度な不安や緊張は、喉のつかえ感や胃の不快感として体に現れることも少なくありません。
漢方で考える春の不調は「肝(かん)」の乱れ
漢方における「肝」とは、西洋医学の肝臓だけを指すのではなく、自律神経系やホルモンバランスの調整、感情のコントロールといった幅広い機能を担う概念です。
春は自然界のエネルギーが高まる季節であり、それに呼応して「肝」の働きも活発になります。
しかし、この「肝」が環境の変化やストレスによって過剰に働きすぎたり、機能が滞ったりすると、心身のバランスが崩れ、様々な不調が現れやすくなります。
春に活発になる「肝」が心身のバランスを調整する
漢方では、「肝」は体内のエネルギーである「気」をスムーズに全身へ巡らせる役割を持つと考えられています。
春になり「肝」の働きが活発になると、この気の巡りも促進されます。
しかし、ストレスなどで「肝」の機能が乱れると、気の流れが滞ったり、逆に過剰になったりします。
気が頭の方へ昇りすぎると、のぼせやほてり、イライラ、頭痛といった症状が現れます。
一方で、気の巡りが悪くなると、体の末端までエネルギーが届かず、手足の冷えや気分の落ち込みといった不調につながります。
「気・血・水」の巡りの悪化が吐き気を引き起こす
「肝」の機能が乱れると、生命活動の根源である「気・血・水」のバランスも崩れます。
「気」の流れが滞る「気滞」の状態になると、胃腸の動きが悪くなり、吐き気や腹部の張り、便秘などを引き起こします。
また、水分代謝を担う「水」の流れが滞る「水滞」では、体内に余分な水分が溜まり、めまいやむくみ、下痢、そして胃に溜まった水が原因で吐き気が生じることがあります。
これらの巡りの悪化が、春の胃腸不調の直接的な原因となります。
あなたの吐き気の原因はどれ?3つの体質セルフチェック
春の吐き気と一言でいっても、その原因となる体質は人それぞれ異なります。
漢方では、個々の症状や体質に合わせて適切なアプローチを選ぶことが重要です。
ここでは、吐き気の背景にある主な3つの体質タイプ「気滞」「肝火」「水滞」を紹介します。
ご自身の症状と照らし合わせながら、どのタイプに当てはまるかセルフチェックしてみましょう。
ストレスや不安で喉が詰まるように感じる「気滞(きたい)」タイプ
このタイプは、ストレスや不安によって「気」の巡りが滞っている状態です。
気の流れが喉のあたりで停滞するため、何か詰まっているような異物感(梅核気)を覚え、咳払いをしてもすっきりしないのが特徴です。
吐き気やゲップ、お腹の張りといった胃腸症状に加え、気分が落ち込みやすかったり、ため息が多かったりする傾向があります。
環境の変化に適応しようと頑張りすぎる方や、感情を溜め込みやすい方に多く見られます。
イライラやほてりも気になる「肝火(かんか)」タイプ
「気滞」がさらに悪化し、体内で熱を帯びた状態が「肝火」です。
気の滞りによるイライラが怒りっぽさに変わり、のぼせや顔のほてり、目の充血、頭痛といった熱症状が強く現れます。
吐き気も、下からこみ上げてくるような強いものになることがあります。
また、高ぶった神経が原因で寝つきが悪くなるなど、不眠の悩みを抱えることも少なくありません。
体力があり、普段からエネルギッシュな方がストレスを溜め込むと、このタイプになりやすい傾向があります。
めまいや体のむくみを伴う「水滞(すいたい)」タイプ
体内の水分代謝がうまくいかず、余分な水分が溜まっているのが「水滞」タイプです。
特に、気圧の変化に影響を受けやすく、雨の日やその前日に症状が悪化する傾向があります。
主な症状は、体が重だるい、むくみやすい、頭が重い、ぐるぐる回るようなめまい、水っぽい鼻水などです。
胃に溜まった余分な水分がチャポチャポと音を立てたり、それが原因で吐き気や下痢を引き起こしたりします。
色白で筋肉が少なく、疲れやすい体質の方に多く見られます。
【症状・体質別】春の吐き気改善におすすめの漢方薬
セルフチェックでご自身の体質タイプが把握できたら、それに合った漢方薬を選んでみましょう。
漢方薬は、症状を一時的に抑えるだけでなく、不調の根本原因となっている体質の偏りを整えることを目的としています。
ここでは、春の吐き気によく用いられる代表的な3つの漢方薬を、それぞれのタイプに合わせて紹介します。
専門家と相談の上、ご自身の症状に最適なものを見つける参考にしてください。
喉のつかえ感や不安からくる吐き気には「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」
半夏厚朴湯は、気の巡りが滞る「気滞」タイプの方に適した漢方薬です。
滞った「気」の流れをスムーズにし、喉のつかえ感や異物感、飲み込みにくさといった症状を和らげます。
また、不安や緊張といった精神的なストレスを緩和する働きもあり、神経性の吐き気や動悸を鎮める効果が期待できます。
構成生薬である「半夏(はんげ)」は吐き気を抑える作用に優れており、ストレスが原因で胃腸の不調を感じる場合に用いられます。
気分の落ち込みやイライラを伴う不調には「加味逍遙散(かみしょうようさん)」
加味逍遙散は、気の巡りを整えながら血行を促し、体にこもった余分な熱を冷ます働きがある漢方薬です。
イライラしたり、逆に落ち込んだりと気分の波が激しい方や、のぼせ、肩こり、疲労感などを伴う不調に適しています。
特に女性のホルモンバランスの乱れによる心身の不調によく用いられ、月経前のイライラ(PMS)や更年期の精神不安などにも効果的です。
吐き気に加えて、多彩な精神症状が見られる場合に適しています。
気圧の変化による頭痛やむくみが気になるなら「五苓散(ごれいさん)」
五苓散は、体内の水分バランスを整える働きに優れた漢方薬で、「水滞」タイプの方に適しています。
体に溜まった余分な水分を尿として排出し、吐き気やむくみ、めまい、下痢といった症状を改善します。
特に、気圧の低下によって起こる頭痛(天気痛)に効果的で、乗り物酔いや二日酔いの吐き気にも用いられます。
天気が悪くなると体調を崩しやすい方や、普段からむくみやすい方の常備薬としても役立ちます。
漢方薬とあわせて実践したい春の養生法で不調を乗り切る
漢方薬による体質改善をより効果的にするためには、日々の生活習慣を見直す「養生」が欠かせません。
養生とは、食事や睡眠、運動などを通じて心身のバランスを整え、病気を未然に防ぐという漢方の考え方です。
ここでは、春の不調を乗り切るために日常生活で簡単に取り入れられる3つの養生法を紹介します。
漢方薬の服用と並行して実践し、健やかな毎日を目指しましょう。
「肝」の働きを助ける酸味や香りの良い食材を取り入れる
春は肝の働きが乱れやすいため、食事でその機能をサポートすることが有効です。
漢方では、梅干しや柑橘類、お酢などの酸味のある食材が、肝の働きを穏やかに調整するとされています。
また、セロリや三つ葉、ミント、春菊といった香りの良い野菜は、滞った気の巡りをスムーズにする働きがあります。
これらの食材を日々の食事に意識的に取り入れることで、ストレスを和らげ、心身のリフレッシュを促します。
夜更かしは避けて十分な睡眠で自律神経を整える
質の良い睡眠は、乱れた自律神経のバランスを整えるために不可欠です。
漢方では、夜は「血」を養い、「肝」を休ませるための重要な時間と考えられています。
夜更かしをすると「肝」に負担がかかり、気の高ぶりやイライラにつながりやすくなります。
できるだけ日付が変わる前には布団に入り、十分な睡眠時間を確保するよう心がけましょう。
就寝前のスマートフォンやパソコンの使用は交感神経を刺激するため、控えることが望ましいです。
心と体の緊張をほぐす簡単なツボ押しマッサージ
ツボ押しは、気の流れを整え、心身の不調を和らげる手軽なセルフケアです。
吐き気に効果的なツボとして知られるのが、手首の内側にある「内関」です。
手首のしわから指3本分ひじ側の中央にあり、乗り物酔いやつわりにも使われます。
また、ストレスやイライラには、足の親指と人差し指の骨が交わる手前のくぼみにある「太衝」がおすすめです。
心地よいと感じる強さで、ゆっくりと5秒ほど押して離す動作を繰り返します。
春の吐き気に関するよくある質問
春の吐き気に対して漢方薬を試してみたいけれど、服用期間や飲み合わせ、副作用など、気になる点がある方もいるかもしれません。
ここでは、漢方薬を始めるにあたって多く寄せられる質問について、簡潔にお答えします。
疑問や不安を解消し、安心して漢方薬を取り入れるための参考にしてください。
漢方薬はどのくらいの期間で効果を実感できますか?
体質や症状によりますが、早いものでは24時間以内に効果の兆しが見える場合もあります。
しかし、体質改善が目的の場合は、一般的に2週間から1ヶ月程度の継続服用が目安となります。
お悩みの期間が長い場合はそれ以上の期間が必要な場合もあります。
効果の現れ方には個人差があるため、専門家と相談しながら経過を見ることが重要です。
病院で処方された胃薬と一緒に服用しても問題ありませんか?
自己判断での併用は避けてください。
薬の成分が重複したり、予期せぬ相互作用を起こしたりする可能性があります。
漢方薬を服用する際は、必ず医師、薬剤師、または登録販売者に現在服用中の薬を伝え、飲み合わせについて相談することが必要です。
漢方薬を飲む上で副作用の心配はありませんか?
漢方薬も医薬品のため、副作用が起こる可能性はゼロではありません。
体質に合わない場合、食欲不振や胃の不快感、発疹などが出ることがあります。
何か異変を感じたらすぐに服用を中止し、処方した医師や薬を選んでもらった薬剤師に相談してください。
適切な漢方薬を選ぶことが副作用のリスクを減らします。
まとめ
春に起こる原因不明の吐き気は、寒暖差やストレスによる自律神経の乱れが大きく関係しています。
漢方では、この不調を「肝」の機能の乱れと捉え、「気・血・水」のバランスを整えることで根本的な改善を目指します。
ストレスや不安が強い「気滞」タイプには半夏厚朴湯、イライラやほてりを伴う場合は加味逍遙散、めまいやむくみが気になる「水滞」タイプには五苓散が適しています。
漢方薬の服用と並行し、食事や睡眠などの養生法を実践することで、変化の多い春を健やかに乗り切ることができます。
不調が長く続く場合は、一人で悩まず専門家に相談することも検討しましょう。
