春の動悸、原因は自律神経?漢方薬の選び方とセルフケアを紹介
漢方
春は心地よい季節ですが、一部の人にとっては動悸や息切れといった不調が現れやすい時期でもあります。
この季節の変わり目に起こる体調不良は、多くの場合、自律神経の乱れが関係しています。
病院で検査しても異常が見つからない動悸は、漢方薬やセルフケアによって和らげることができるかもしれません。
この記事では、春に動悸が起こる原因を探り、症状に合わせた漢方薬の選び方や、日常生活で取り入れられる養生法を紹介します。
春になると動悸が起こりやすくなるのはなぜ?
春に動悸がする、あるいは症状が悪化するのは、主に「自律神経の乱れ」と「環境の変化によるストレス」が原因です。
冬から夏へと向かうこの時期は、一日の中でも寒暖差が激しく、体は気付かないうちに大きな負担を強いられています。
私たちの体は、この急激な気温の変化に対応しようと自律神経を過剰に働かせるため、バランスが崩れやすくなります。
その結果、心臓の拍動が乱れて動悸として感じられるのです。
原因1:寒暖差の大きさで自律神経が乱れやすくなる
春は「三寒四温」という言葉があるように、暖かい日と寒い日が交互に訪れ、一日の中でも気温が大きく変動します。
体は、この寒暖差に対応するために体温を一定に保とうと、自律神経である交感神経と副交感神経を頻繁に切り替えます。
この急な切り替えが続くことで自律神経のバランスが崩れ、心臓の動きをコントロールする機能に影響が及び、動悸を引き起こすことがあります。
特に、冷えやほてりを感じやすい人は、自律神経の調節機能が乱れているサインかもしれません。
また、女性の場合はホルモンバランスの変動も自律神経に影響を与えやすいため、より注意が必要です。
原因2:新生活など環境の変化によるストレスの増加
春は、就職、異動、引っ越しなど、生活環境が大きく変わる季節です。
これらの変化は、新しい環境への期待とともに、本人も気付かないうちに大きな精神的ストレスとなります。
過度なストレスは自律神経のバランスを乱す主要な原因の一つであり、交感神経が優位な状態が続くことで、心臓が過剰に働き、動悸や息切れを感じやすくなります。
このようなストレス状態が長期化すると、うつ状態につながることもあります。
特に更年期に差しかかった女性は、ホルモンバランスの変化による心身の不調と重なり、症状が強く出ることがあります。
漢方医学で紐解く春の動悸と「肝」の関わり
漢方医学では、春は自然界のエネルギーが活発になる季節であり、人間の体もそれに呼応すると考えられています。
この時期に特に影響を受けやすいのが、五臓の一つである「肝」です。
「肝」は、全身の「気」の流れをスムーズに調整し、精神状態を安定させる働きを担っています。
しかし、春の環境変化やストレスによって「肝」の機能が乱れると、気の巡りが滞り、イライラや気分の落ち込み、そして動悸といった不調が現れやすくなります。
その他にも、めまい、耳鳴り、むくみといった症状が伴うことも少なくありません。
春の不調は「気」と「血」の巡りの悪化が引き起こす
漢方では、私たちの体は「気」「血」「水」の3つの要素で構成されていると考えられています。
春に不調をきたす「肝」は、特に「気」と「血」の流れをコントロールする重要な役割を持っています。
ストレスなどで「肝」の働きが失調すると、まず「気」の流れが滞る「気滞」という状態になります。
これにより、イライラや不安感、喉の詰まり感などが生じます。
さらに「気」の滞りが続くと、「血」の流れも悪化し、「瘀血」という状態を引き起こします。
血行不良は心臓に負担をかけ、動悸や胸の痛みの原因となるため、漢方では「気」と「血」の巡りを整えることが春の不調を改善する鍵となります。
【症状・体質で選ぶ】春の動悸におすすめの漢方薬4選
春の動悸やそれに伴う息切れなどの不調には、漢方薬が有効な場合があります。
漢方療法では、単に症状を抑えるだけでなく、その人の体質や心身の状態を総合的に判断し、根本的な原因にアプローチすることを重視します。
そのため、同じ動悸という症状でも、体質や他の症状によって適した漢方薬は異なります。
ここでは、春の動悸によく用いられる漢方薬を、代表的な症状や体質のタイプ別に4つ紹介します。
イライラや不安感を伴う動悸には「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」
柴胡加竜骨牡蛎湯は、比較的体力があり、精神的なストレスや緊張、不安感が強い方の動悸に適した漢方薬です。
春の環境変化によるプレッシャーで気が高ぶり、イライラや怒りっぽさ、不眠、胸の苦しさを感じるときに用いられます。
この漢方薬は、高ぶった「気」を鎮め、精神を安定させることで、動悸やそれに伴う神経症状を和らげる働きがあります。
ストレスからくる喉のつかえ感や息苦しさが強い場合には、同じく気の巡りを改善する半夏厚朴湯などが選択されることもあります。
神経の高ぶりや不眠が気になるなら「桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」
桂枝加竜骨牡蛎湯は、体力が中等度以下で、繊細で疲れやすく、些細なことが気になってしまう方の動悸や不眠に用いられます。
特に、夜になると不安感が増して目が冴えてしまったり、ちょっとした物音で目が覚めたりするような神経の高ぶりに効果的です。
この漢方薬は、心身のエネルギーである「気」と「血」を補いながら、精神を落ち着かせる働きがあります。
そのため、動悸だけでなく、疲労感や寝汗、朝の目覚めの悪さといった症状にも対応します。
気力や体力を補い、心身のバランスを穏やかに整えます。
めまい・立ちくらみが特徴的な動悸には「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」
苓桂朮甘湯は、体力が中等度以下で、めまい、ふらつき、立ちくらみを伴う動悸に効果的な漢方薬です。
特に、立ち上がった時にクラッとする、頭がフワフワする、乗り物酔いをしやすいといった症状が特徴です。
漢方では、これらの症状は体内の水分代謝の乱れである「水滞」が原因で起こると考えられています。
苓桂朮甘湯は、体内の余分な水分を排出し、気の巡りを整えることで、めまいや動悸、頭痛、吐き気などを改善します。
胃腸が弱く、冷えやすい方の水分代謝異常による不調に適しています。
疲労感が強く食欲不振もある場合は「加味帰脾湯(かみきひとう)」
加味帰脾湯は、体力がなく虚弱体質で、顔色が悪く、貧血気味な方の動悸や精神不安に用いられる漢方薬です。
心身の疲労が激しく、考え事をしてしまうと眠れなくなったり、食欲不振や胃腸の不調を伴ったりする場合に適しています。
この漢方薬は、エネルギーである「気」と栄養である「血」の両方を補うことで、消化器系の働きを整え、心の栄養不足を改善します。
それにより、不安感や焦燥感を和らげ、精神を安定させて動悸を鎮める効果が期待できます。
心身の疲れからくる不調を総合的にケアする処方です。
自分に合った漢方薬を正しく選ぶための注意点
漢方薬は、心身のバランスを整えることで不調を改善するものであり、自分の体質や症状に合ったものを選ぶことが非常に重要です。
もし合わない漢方薬を服用すると、効果が得られないばかりか、かえって体調を崩してしまう可能性もあります。
ドラッグストアなどで手軽に購入できる市販薬もありますが、クラシエなど様々なメーカーから製品が出ているため、どの漢方薬が自分に適しているのかを正しく見極める必要があります。
ここでは、漢方薬を選ぶ際の注意点について解説します。
市販薬を購入する際に確認すべきこと
市販の漢方薬を選ぶ際は、まずパッケージに記載されている「体力」の目安を確認することが大切です。
「体力充実」「体力中等度」「体力虚弱」など、自分の体力のレベルに合ったものを選びましょう。
また、効能・効果の欄を見て、動悸以外に自分が抱えている症状(例えば、イライラ、めまい、不眠など)と合致しているかを確認します。
ツムラやクラシエといったメーカーによって、同じ名称の漢方薬でも生薬の配合量が異なる場合があります。
判断に迷う場合は、自己判断で購入せず、薬局やドラッグストアにいる薬剤師や登録販売者に相談することをおすすめします。
本格的な体質改善を目指すなら専門家への相談が近道
市販薬を試しても改善が見られない場合や、より根本的な体質改善を目指したい場合は、漢方に詳しい医師や薬剤師、あるいは漢方薬局の専門家に相談するのが最善の方法です。
専門家は、問診を通じて症状や生活習慣を詳しく聞き取るだけでなく、舌診で舌の状態を見たり、脈診で脈をみたりするなど、漢方独自の方法で体質を総合的に判断します。
その上で、数多くある漢方薬の中から、その人の体質に最も適したものを選択してくれます。
漢方薬と併用したい!春の動悸を穏やかにする養生法
漢方薬で体質改善を目指す際、その効果を最大限に引き出すためには、日々の生活習慣を見直す「養生」が欠かせません。
養生とは、食事や運動、睡眠といった生活全般に気を配り、心身のバランスを整えることです。
特に春は、自律神経が乱れやすい季節であるため、意識的に心と体をいたわる習慣を取り入れることが、動悸などの不調を和らげる助けになります。
ここでは、漢方薬と併せて行いたい、春におすすめの養生法をいくつか紹介します。
食事でケア!積極的に摂りたい食材と控えたい食材
春の養生では、乱れがちな「肝」の働きを助け、「気」と「血」の巡りを良くする食事が基本となります。
気の巡りを促進するセロリ、三つ葉、春菊などの香味野菜や、柑橘類を積極的に取り入れましょう。
また、消耗しやすい「血」を補うために、ほうれん草、人参、黒ごまなどの食材もおすすめです。
漢方では、当帰や棗も血を補う生薬として知られています。
一方で、体を冷やす生ものや冷たい飲み物、胃腸に負担をかける脂っこい食事、交感神経を刺激する辛いものやカフェインの過剰摂取は控えるように心がけましょう。
乱れた自律神経を整える3つの生活習慣
自律神経のバランスを整えるためには、日々の生活リズムを意識することが重要です。
まず、質の良い睡眠を確保しましょう。
就寝1〜2時間前にはスマートフォンやパソコンの使用をやめ、リラックスできる環境を整えます。
次に、適度な運動を取り入れることです。
ウォーキングやストレッチなど、心地よいと感じる程度の運動は、血行を促進しストレス解消にもつながります。
最後に、ぬるめのお湯での入浴を習慣にしましょう。
38〜40度程度のお湯に15分ほどゆっくり浸かることで、副交感神経が優位になり、心身のリラックスを促し、動悸の緩和に役立ちます。
気持ちを落ち着かせるリラックスできるツボ
動悸や不安感を感じたとき、手軽にできるセルフケアとしてツボ押しがあります。
精神的な緊張を和らげ、気持ちを落ち着かせる効果が期待できるツボをいくつか紹介します。
一つ目は、手首の内側のしわから指3本分下にある「内関」です。
ここは乗り物酔いや吐き気にも効果があるとされ、精神を安定させる働きがあります。
二つ目は、手首の小指側のくぼみにある「神門」で、不眠やイライラを鎮めるのに役立ちます。
三つ目は、手のひらの真ん中あたりにある「労宮」で、心労を和らげます。
いずれのツボも、心地よい強さで5秒ほどゆっくり押して離す、を数回繰り返してみてください。
春の動悸と漢方薬に関するよくある質問
春の動悸や漢方薬の服用について、疑問や不安を感じる方もいるかもしれません。
ここでは、効果を実感できるまでの期間や副作用の有無、医療機関を受診する際の目安など、よく寄せられる質問について簡潔にお答えします。
漢方薬を正しく、そして安心して活用するために、ぜひ参考にしてください。
疑問点が解消されない場合は、必ず医師や薬剤師などの専門家に相談することが大切です。
漢方薬はどのくらいの期間で効果が出始めますか?
効果が現れる期間は、個人の体質や症状の重さ、漢方薬の種類により異なります。
一般的に、2週間から1ヶ月程度の服用で何らかの変化を感じ始める方が多いですが、これはあくまで目安です。
体質改善を目的とする場合は、数ヶ月単位で継続することが必要になる場合もあります。
焦らず、専門家の指示に従って服用を続けることが大切です。
漢方薬を服用する際に副作用はありますか?
漢方薬は天然の生薬から作られていますが、薬である以上、体質に合わなければ副作用が起こる可能性があります。
代表的な副作用には、食欲不振、胃もたれ、下痢、便秘、皮膚の発疹やかゆみなどがあります。
もし、服用を始めてから体に異変を感じた場合は、すぐに服用を中止し、処方した医師や薬を選んでもらった薬剤師に相談してください。
動悸が続く場合、何科の病院を受診すればよいですか?
動悸が続く場合、まずは心臓や甲状腺などの病気が隠れていないかを確認することが重要です。
そのため、最初に循環器内科や一般内科を受診することをおすすめします。
検査で特に異常が見つからず、ストレスや自律神経の乱れが原因と考えられる場合は、心療内科や精神科、あるいは漢方外来のある医療機関への相談が選択肢になります。
まとめ
春に起こりやすい動悸は、寒暖差による自律神経の乱れや、新生活などの環境変化に伴うストレスが主な原因です。
漢方医学では、春に活動が活発になる「肝」の機能が失調し、「気」や「血」の巡りが悪化することで不調が生じると考えられています。
対処法としては、個人の体質や症状に合わせて「柴胡加竜骨牡蛎湯」や「苓桂朮甘湯」などの漢方薬を選ぶことが有効です。
さらに、食事や生活習慣を見直す「養生」を漢方薬と併用することで、心身のバランスを整え、不調の根本的な改善につながります。
症状が続く場合は、自己判断せず専門家へ相談してください。
