PMSの胃痛はなぜ起こる?症状の対処法と妊娠との見分け方
漢方
生理前になると胃がキリキリと痛む、なぜだろうと不安に感じていませんか。
その症状は、PMS(月経前症候群)が原因かもしれません。
PMSでは腹痛だけでなく、胃痛が起こることも珍しくありません。
この記事では、PMSで胃痛が起こる原因や症状への具体的な対処法、そして気になる妊娠初期症状との見分け方について、薬剤師の視点から分かりやすく解説します。
生理前に胃がキリキリ…これってPMS(月経前症候群)の症状?
PMS(月経前症候群)とは、生理の3~10日ほど前から始まり、生理が来ると症状が和らぐ、心や体に起こるさまざまな不調のことです。
イライラや気分の落ち込みといった精神的な症状のほか、頭痛やむくみなどの身体的な症状が現れます。
一般的に生理痛は下腹部に痛みが出ますが、PMSの症状の一環として、胃痛や吐き気、胃もたれなどを感じる人も少なくありません。
PMSで胃痛が起こる3つの主な原因
生理周期に伴うホルモンバランスの変化は、自律神経や痛みを引き起こす物質にも影響を与え、それが胃の不調につながります。
なぜ生理前に胃が痛くなるのか、その背景には主に3つの原因が考えられます。
それぞれのメカニズムを理解することで、より的確なセルフケアに繋げることができます。
ここでは、その主な原因について詳しく見ていきましょう。
原因① 女性ホルモン「プロゲステロン」の増加による胃腸機能の低下
排卵後から生理前にかけては、女性ホルモンの一種であるプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が増加します。
このプロゲステロンには、妊娠を維持するために子宮の収縮を抑える働きがありますが、同時に胃腸の蠕動運動も緩やかにしてしまいます。
その結果、食べ物の消化に時間がかかり、胃もたれや便秘、胃の不調といった症状が起こりやすくなるのです。
東洋医学では、このような状態を気の流れが滞る「気滞(きたい)」と捉えることもあります。
原因② 痛みの元「プロスタグランジン」の過剰分泌
生理が近づくと、子宮内膜から「プロスタグランジン」という物質が分泌されます。
これは、経血を体の外へ排出するために子宮を収縮させる役割を担っており、生理痛の主な原因として知られています。
しかし、このプロスタグランジンの分泌量が多いと、血液に乗って全身に運ばれ、胃や腸まで収縮させてしまうことがあります。
胃が過剰に収縮することで、キリキリとした差し込むような痛みが引き起こされるのです。
下痢を伴うこともあります。
原因③ ストレスや自律神経の乱れによる胃酸の過剰分泌
生理前はホルモンバランスが大きく変動するため、心身のバランスを調整する自律神経が乱れやすくなります。
自律神経は、胃酸の分泌をコントロールする役割も担っているため、バランスが乱れると胃酸が必要以上に分泌されてしまうことがあります。
過剰に分泌された胃酸は、胃の粘膜を直接刺激し、胃痛や胸やけの原因となります。
また、PMSによるイライラや気分の落ち込みといった精神的なストレスも、胃酸の分泌を促進させる一因です。
これって妊娠初期症状?PMSの胃痛との違いを見分ける方法
生理前の胃痛や吐き気は、妊娠初期症状(つわり)とよく似ているため、妊娠の可能性がある場合は見分けるのが難しいことがあります。
しかし、いくつかのポイントに注意することで、両者の違いを判断する手がかりになります。
特に、症状が現れるタイミングや基礎体温の変化は重要な指標です。
腹痛の感じ方にも違いが見られる場合があります。
症状が現れるタイミングと基礎体温の変化をチェック
最も分かりやすい違いは、症状が続く期間と基礎体温の変化です。
PMSの症状は、生理が始まるとホルモンバランスが変化するため、数日以内に軽快または消失するのが一般的です。
一方、妊娠初期症状は生理予定日を過ぎても続きます。
また、基礎体温を測る習慣がある場合、PMSでは生理開始とともに体温が下がり低温期に入りますが、妊娠している場合は高温期が2週間以上持続します。
これが、見分けるための大きな判断材料となります。
胃痛以外の症状(胸の張り・おりもの・眠気など)の違い
胃痛以外の症状にも違いが見られます。
例えば、胸の張りはどちらでも起こり得ますが、PMSでは全体的に張って痛むのに対し、妊娠初期は乳首が敏感になったり、チクチクとしたりすることがあります。
おりものは、PMSでは量が減ったり粘り気が出たりする一方、妊娠すると量が増え、水っぽくなる傾向が見られます。
眠気も共通の症状ですが、妊娠初期は日中でも耐えがたいほどの強い眠気に襲われることがあります。
腰痛や背中の痛みも両方で現れる可能性がありますが、症状の現れ方には個人差があります。
PMSだけじゃない!胃痛を引き起こす可能性のある病気
生理前の胃痛は多くの場合PMSによるものですが、中には注意が必要なケースも存在します。
もし、毎月のように繰り返す、市販薬を飲んでも一向に改善しない、または、これまでに経験したことのないような激しい痛みがある場合は、他の病気が隠れている可能性も考えられます。
例えば、急性胃炎や胃潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシアといった消化器系の疾患でも同様の症状が現れるため、自己判断せずに医療機関を受診することが重要です。
今すぐできる!PMSのつらい胃痛を和らげる5つのセルフケア
PMSによるひどい胃痛は、日常生活にも支障をきたすつらい症状です。
しかし、薬に頼るだけでなく、日々の生活の中で少し工夫するだけで、痛みを和らげることができる場合があります。
食事や服装、リラックス方法など、胃への負担を減らし、心と体のバランスを整えるセルフケアを取り入れてみましょう。
ここでは、今日からすぐに実践できる5つの方法を紹介します。
消化の良い食べ物を選び、胃への負担を減らす
胃痛があるときは、胃腸に負担をかけない食事が基本です。
おかゆやよく煮込んだうどん、豆腐、白身魚、ささみ、野菜スープなど、温かくて消化の良いものを選びましょう。
反対に、揚げ物などの脂っこい食事、唐辛子などの香辛料、コーヒーや緑茶に含まれるカフェイン、アルコール、冷たい飲み物は胃を刺激し、症状を悪化させる可能性があるため避けるのが賢明です。
特に胃のむかつきや吐き気を伴う場合は、一度にたくさん食べず、少量ずつ数回に分けて食べるように工夫してください。
体を温めて血行を促進し、痛みを緩和する
体の冷えは血行不良を招き、痛みを増強させる原因となります。
特に、お腹周りを温めることは、胃腸の働きを助け、痛みの緩和につながります。
腹巻やブランケット、カイロなどを活用して、腰やお腹を直接温めましょう。
また、常温の水や白湯、ハーブティーなどの温かい飲み物を摂ることも効果的です。
ぬるめのお湯にゆっくり浸かる入浴も、全身の血行を促進し、心身のリラックスに繋がります。
東洋医学では「冷えは万病のもと」と考えられており、体を内側と外側から温める意識が大切です。
リラックスできる時間を作ってストレスを軽減する
ストレスや自律神経の乱れは、胃酸の過剰分泌を引き起こし、胃痛の大きな原因となります。
そのため、意識的に心と体を休ませ、リラックスする時間を作ることが非常に重要です。
好きな音楽を聴いたり、アロマオイルの香りで癒されたり、深呼吸を繰り返したりするだけでも、副交感神経が優位になり、心身の緊張がほぐれます。
読書や軽いストレッチなど、自分が心地よいと感じる方法を見つけて、生理前のデリケートな時期を穏やかに過ごす工夫をしましょう。
胃の圧迫を避ける楽な姿勢で過ごす
胃痛があるときは、服装や姿勢にも注意が必要です。
ベルトやウエストがタイトなスカート、補正下着など、お腹を締め付ける服装は胃を圧迫し、不快感を増す原因になります。
できるだけワンピースやウエストがゴムのズボンなど、ゆったりとした楽な服装で過ごしましょう。
また、デスクワークなどで長時間前かがみの姿勢を続けることも胃への負担となります。
背筋を伸ばすことを意識し、時には立ち上がって体を動かしたり、クッションを背中に当てたりして、楽な姿勢を保つように心がけてください。
症状の緩和が期待できるツボを押してみる
東洋医学では、体の特定の点を刺激することで、関連する臓器の不調を整える「ツボ(経穴)」という考え方があります。
胃痛の緩和には、いくつかのツボが効果的とされています。
代表的なものに、膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみから指4本分下にある「足三里(あしさんり)」や、みぞおちとおへその真ん中にある「中脘(ちゅうかん)」があります。
これらのツボを、気持ちいいと感じる程度の強さで、ゆっくりと5秒ほど押して離す動作を数回繰り返してみてください。
薬に頼りたいときの選び方|市販の胃薬や鎮痛剤について
セルフケアを試しても胃痛が改善しない場合は、市販薬を上手に活用するのも一つの方法です。
ただし、ひとくちに胃薬や鎮痛剤といっても様々な種類があるため、自分の症状の原因に合った薬を選ぶことが大切です。
ドラッグストアなどで購入する際は、薬剤師や登録販売者に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
胃酸を抑えるタイプの胃薬を選ぶ
ストレスや自律神経の乱れからくる、キリキリとした差し込むような胃痛には、出過ぎた胃酸の働きを抑えるタイプの胃薬が適しています。
市販薬では「H2ブロッカー」や「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」と呼ばれる成分が含まれたものがこれにあたります。
これらは胃酸の分泌そのものを強力に抑制する作用があります。
また、過剰な胃酸を中和する「制酸薬」や、胃の粘膜を保護・修復する成分が含まれた胃薬も、胃の不快感を和らげるのに役立ちます。
痛みが強い場合は鎮痛剤を服用する
胃痛の原因が、痛みの元となる物質「プロスタグランジン」の過剰分泌にあると考えられる場合は、鎮痛剤の服用が効果的です。
「イブプロフェン」や「ロキソプロフェン」などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、プロスタグランジンの生成を抑えることで、生理痛だけでなく胃の収縮による痛みも和らげます。
ただし、これらの鎮痛剤は副作用として胃の粘膜を荒らすことがあるため、必ず食後に服用するか、胃粘膜を保護する成分が配合された胃薬と一緒に飲むなどの工夫が必要です。
症状がひどい場合は婦人科へ
毎月繰り返すつらい胃痛や、日常生活に支障が出るほど症状がひどい場合は、我慢せずに婦人科を受診しましょう。
PMSによる症状は、適切な方法によって改善が期待できます。
婦人科では、ホルモンバランスの乱れという根本的な原因にアプローチする方法が可能です。
低用量ピルや漢方薬など、一人ひとりの症状や体質に合わせた改善方法を相談できます。
ホルモンバランスを整える低用量ピルや漢方薬の服用
婦人科でのPMS治療では、主に低用量ピルや漢方薬が用いられます。
低用量ピルは、排卵を抑制することで、PMSの原因となる女性ホルモンの急激な変動を抑え、胃痛を含むさまざまな症状を根本から改善する効果が期待できます。
一方、漢方薬は、東洋医学的な視点から心と体のバランスを整えることを目的とします。
薬は個々の体質や症状に合わせて選薬されます。
こんな症状は要注意!病院を受診すべきサイン
PMSによる胃痛だと思っていても、注意が必要なケースがあります。
例えば、立っていられないほどの激痛、市販薬を飲んでも全く効果がない、痛みがどんどん強くなる、といった症状は危険なサインです。
また、胃痛に加えて、嘔吐や下痢、38度以上の発熱を伴う場合や、便が黒くなるなどの症状が見られる際は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、感染性胃腸炎などの消化器系の病気の可能性も考えられます。
これらの症状がある場合は、速やかに婦人科または消化器内科を受診してください。
pms 胃痛に関するよくある質問
ここでは、PMSによる胃痛に関して、多くの方が疑問に思う点についてお答えします。
PMSによる胃痛はいつからいつまで続きますか?
PMSによる胃痛は、一般的に排卵後から生理が始まるまでの約2週間の「黄体期」に起こりやすくなります。
特に生理開始直前の数日間に症状が強まる傾向があります。
多くの場合は、生理が始まるとホルモンバランスが変化するため、症状は自然に軽快または消失します。
症状の期間や強さには個人差があります。
生理前の胃痛に、手持ちの胃薬や鎮痛剤を飲んでも大丈夫ですか?
原因に合った薬を選ぶことが重要です。
胃酸過多が原因のキリキリした痛みなら胃酸を抑える薬、痛みが主体の場合は鎮痛剤が有効です。
ただし、鎮痛剤の中には胃を荒らす副作用を持つものもあるため注意が必要です。
使用前に薬剤師に相談し、用法用量を守って服用することが大切です。
低用量ピルはPMSの胃痛にも効果が期待できますか?
はい、効果が期待できます。
低用量ピルは、排卵を抑制して女性ホルモンの量を一定に保つ作用があります。
PMSの原因であるホルモンの急激な変動自体をなくすため、胃腸機能の低下や自律神経の乱れを防ぎ、結果として胃痛を含むPMSのさまざまな症状を改善します。
まとめ
生理前に起こる胃痛は、女性ホルモンの変動や痛みを引き起こす物質、自律神経の乱れなど、複数の要因が絡み合って生じるPMSの症状の一つです。
まずは体を温め、消化の良い食事を心がけるなどのセルフケアを試みてください。
症状がつらい場合は、原因に合った市販薬を利用するのも有効な手段です。
それでも改善しない、あるいは痛みが激しい場合は、婦人科や消化器内科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

