自己免疫疾患と漢方療法|副作用を軽減し、体質から症状改善を目指しましょう
漢方
自己免疫疾患は、免疫システムが自身の正常な組織を誤って攻撃してしまう病気の総称です。
現代の西洋医学ではステロイドや免疫抑制剤を用いた治療が主流ですが、副作用や長期服用への不安を感じる方も少なくありません。
漢方療法は、そのような西洋医学的な治療を補完する選択肢の一つです。
このブログ記事では、自己免疫疾患に対する漢方薬の考え方や、体質から症状を改善していくアプローチについて解説します。
ステロイド治療の副作用?自己免疫疾患のつらいお悩み
自己免疫疾患の治療で中心となるステロイドや免疫抑制剤は、炎症や免疫の過剰な働きを抑える高い効果が期待できます。
しかしその一方で、ムーンフェイス、肥満、糖尿病、骨粗しょう症、感染症にかかりやすくなるといった副作用のリスクも伴います。
また、西洋医学の治療だけでは、検査数値には現れにくい倦怠感や冷え、微熱、痛みといった、つらい自覚症状が取りきれないことも少なくありません。
こうした悩みが、漢方療法を検討するきっかけとなる場合があります。
自己免疫疾患の治療における漢方薬の役割
自己免疫疾患の治療において、漢方薬は西洋医学の治療を補い、患者の生活の質(QOL)を高める重要な役割を担います。
漢方は、病名だけで判断するのではなく、患者一人ひとりの体質や症状に合わせたアプローチで、体の内側からバランスを整えることを目指します。
これにより、つらい症状の緩和や、ステロイドなど西洋薬の副作用軽減、さらには将来的な減薬を目標とした体質改善が期待されるのです。
西洋医学の治療と漢方療法を併用するメリット
自己免疫疾患において西洋医学の治療と漢方薬の服用を併用することには、複数のメリットがあります。
まず、漢方薬が体のバランスを整えることで、ステロイドや免疫抑制剤の効果を高め、治療全体の効果向上が期待できます。
また、漢方薬には西洋薬の副作用を和らげる働きを持つものもあり、長期的な治療における身体的負担の軽減につながります。
症状が安定することで、主治医の判断のもとで西洋薬の減量が可能になるケースも少なくありません。
結果として、患者の生活の質(QOL)を維持しながら治療を継続しやすくなります。
漢方で目指すのは「免疫の暴走」を整える体質改善
漢方医学では、自己免疫疾患を免疫機能が過剰に働き、暴走している状態と捉えます。
そのため、単に免疫を抑制するのではなく、なぜ免疫が暴走するのかという根本原因に目を向け、体全体のバランスを整えることで免疫システムを正常化することを目指します。
具体的には、「気・血・水」といった要素の乱れを調整し、体が本来持つ自然治癒力を高めるアプローチを取ります。
この根本的な体質改善によって、症状を抑えるだけでなく、病気が進行しにくい、あるいは再発しにくい身体づくりを目標とします。
倦怠感や微熱など、検査数値に現れにくい不調の緩和
自己免疫疾患の患者が抱える悩みの一つに、血液検査などの数値には異常が見られないにもかかわらず、強い倦怠感や微熱、体の痛み、冷えといった不調が続くことがあります。
こうした「不定愁訴」は、西洋医学的な治療だけでは改善が難しい場合があります。
漢方療法は、患者の自覚症状を重視し、体全体のバランスの乱れが原因であると考えます。
一人ひとりの状態に合わせて薬を調整することで、これらのつらい症状を緩和し、日々の生活の質を向上させることを目指します。
漢方医学から見た自己免疫疾患の3つの原因
漢方医学では、特定の病名にとらわれず、体の状態を総合的に判断して改善方針を決定します。
自己免疫疾患のように複雑な病態は、体内のバランスが大きく崩れた結果として現れると考えられています。
その主な原因として、「熱」「瘀血」「水毒」という3つの病理的な概念が重要視されており、これらの乱れが相互に影響し合って、様々な症状を引き起こしていると捉えます。
全身の熱っぽさや炎症につながる「熱(ねつ)」
漢方でいう「熱」とは、体温計で測れる発熱だけでなく、体内で起きている過剰な炎症反応や、それに伴うほてり、のぼせ、組織の破壊といった状態を指す概念です。
自己免疫疾患における関節の腫れや痛み、皮膚の発赤、原因不明の発熱といった急性の炎症症状は、この「熱」が主な原因と考えられます。
改善方法としては、体の過剰な熱を冷まし、炎症を鎮める作用を持つ「清熱剤」に分類される漢方薬を用いて、これらの症状を和らげていきます。
こうしたアプローチは、炎症を直接的に抑えることにつながります。
血流の滞りが引き起こす痛みやしこりの「瘀血(おけつ)」
「瘀血」とは、血流が悪くなり、古くなった血液が体内に滞っている状態を指します。
瘀血があると、血行不良によって組織に十分な栄養や酸素が届かなくなり、様々な不調を引き起こします。
自己免疫疾患では、関節リウマチに見られる関節の変形やこわばり、皮膚の黒ずみや色素沈着、鋭く刺すような固定性の痛みなどが瘀血の代表的な症状です。
改善方法では、血の巡りを改善し、滞った血液を排出する働きのある「駆瘀血剤」を用いることで、痛みの緩和や皮膚症状の改善を図ります。
体内の水分バランスの乱れによるむくみやめまい「水毒(すいどく)」
「水毒」とは、体内の水分代謝が滞り、水分の分布が偏ってしまう状態のことです。
「水滞(すいたい)」とも呼ばれます。
本来あるべきでない場所に水が溜まったり、逆に必要な場所が潤わなかったりすることで、様々な症状が現れます。
具体的には、手足や顔のむくみ、関節に水が溜まることによる腫れや痛み、めまい、頭重感、吐き気などが挙げられます。
改善方法では、体内の余分な水分を尿として排出し、水の巡りを整える作用を持つ「利水剤(りすいざい)」を用いることで、これらの不快な症状を改善していきます。
自己免疫疾患の症状改善で使われる代表的な漢方薬
自己免疫疾患の治療で用いられる漢方薬は、患者一人ひとりの体質や症状、病気の進行度などを総合的に判断して選ばれます。
そのため、同じ病名であっても選択される漢方薬は異なります。
ここでは、自己免疫疾患の様々な症状に対して使用される代表的な漢方薬をいくつか紹介します。
なお、炎症や免疫異常に対しては柴苓湯などが広く応用されることがあります。
炎症を鎮め皮膚症状を改善する「温清飲(うんせいいん)」
温清飲は、血行を改善して体に潤いを与える「四物湯(しもつとう)」と、体の熱や炎症を冷ます「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」を組み合わせた漢方薬です。
この処方は、血行不良と炎症が同時に存在し、皮膚がカサカサして熱感を持ち、色つやが悪いといった症状に適しています。
自己免疫疾患では、全身性エリテマトーデス(SLE)や皮膚筋炎で見られる皮膚の発疹やかゆみ、シェーグレン症候群に伴う皮膚の乾燥などの改善に用いられることがあります。
繰り返す炎症や精神的なストレスを和らげる「柴胡剤(さいこざい)」
柴胡剤は、生薬の「柴胡」を主成分とする漢方薬の総称で、炎症を抑える作用や精神を安定させる作用を持ちます。
特に、ストレスが関与して症状が悪化したり、炎症が長引いていたりする場合に用いられます。
自己免疫疾患は、精神的なストレスが症状の引き金や悪化要因となることも少なくありません。
そのため、イライラや気分の落ち込みを伴う場合や、胸から脇腹にかけて張ったような苦しさ(胸脇苦満)が見られる場合に、心身両面から症状を和らげる目的で柴胡剤が選択されます。
関節の痛みやむくみを軽減する「越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)」
越婢加朮湯は、体の熱を冷まし、余分な水分を排出させる作用に優れた漢方薬です。
特に、関節が熱を持って赤く腫れ、強い痛みを伴う場合に効果が期待できます。
関節リウマチのように、炎症によって関節に水が溜まり、むくんでいる状態に適しており、急性期で炎症が強い症状の緩和によく用いられます。
体力がある方向けの漢方薬で、発汗を促しながら水分代謝を改善し、関節の腫れと痛みを軽減する働きがあります。
この漢方薬は、炎症とむくみが同時に見られる症状に有効な選択肢となります。
漢方療法を始める前に知っておきたい注意点
自己免疫疾患に対して漢方治療を取り入れることは、症状緩和や体質改善の面で有効な選択肢となり得ます。
しかし、安全かつ効果的に治療を進めるためには、事前に理解しておくべきいくつかの注意点が存在します。
やみくもに始めるのではなく、正しい知識を持って専門家とともに改善に向けて取り組むことが重要です。
自己判断での服用はせず専門の医師や薬剤師に相談する
漢方薬は、その人の体質や症状に合致して初めて効果を発揮します。
「有名な漢方だから」「同じ病気の人が飲んでいるから」といった理由で自己判断で服用することは避けるべきです。
特に自己免疫疾患は病態が複雑であり、体質に合わない漢方薬を服用すると、症状が悪化したり予期せぬ副作用が現れたりする危険性があります。
必ず漢方に精通した医師や薬剤師に相談し、自分に最も合った漢方薬を選んでもらうことが、安全で効果的な改善方法への第一歩となります。
健康保険が適用される漢方薬を選ぶ方法
漢方薬というと、高額な自由診療というイメージがあるかもしれませんが、すべての漢方薬がそうではありません。
医師が治療上必要と判断して処方する「医療用漢方製剤」には、健康保険が適用されるものが148種類あります。
これらは多くのクリニックや病院で処方してもらうことが可能です。
保険適用であれば、費用負担を抑えながら服用を継続できます。
効果を実感するまでには一定の期間が必要なことを理解する
漢方療法は、症状を一時的に抑える対症療法とは異なり、体の内側からバランスを整え、体質そのものを改善していくことを目的とします。
そのため、西洋薬のように服用後すぐに劇的な効果が現れることは稀です。
効果を実感するまでには、個人の体質や症状の重さ、病気の経過期間などによって差がありますが、一般的には数週間から数ヶ月単位での継続的な服用が必要となります。
焦らずにじっくりと自分の体と向き合い、専門家と相談しながら服用を続けていく心構えが大切です。
自己免疫疾患の漢方療法に関するよくある質問
自己免疫疾患の改善に漢方を取り入れることを検討する際、多くの方が同じような疑問や不安を抱かれます。
ここでは、特に多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
服用を始める前にこれらの点を確認し、漢方療法への理解を深めることにお役立てください。
漢方を始めればステロイドはすぐにやめられますか?
自己判断でステロイドを急にやめることはできません。
症状の急激な悪化(リバウンド)を招く可能性があり、非常に危険です。
漢方薬は、あくまで西洋医学的治療をサポートする役割であり、併用によって症状が安定し、検査数値が改善した場合に、主治医の慎重な判断のもとで段階的に減量を進めていくことになります。
漢方薬に副作用はありますか?
漢方薬も医薬品の一種であるため、体質に合わない場合には副作用が起こる可能性があります。
代表的なものとして、食欲不振や胃もたれなどの消化器症状、発疹やかゆみなどの皮膚症状が挙げられます。
また、まれに肝機能障害や間質性肺炎などが報告されている処方もあります。
何か異常を感じた際は、すぐに服用を中止して処方した医師や薬剤師に相談してください。
治療にはどのくらいの費用がかかりますか?
治療にかかる費用は、保険が適用されるかどうかで大きく異なります。
医師が処方する医療用漢方エキス製剤の場合、健康保険が適用されるため、自己負担額は薬代の1割から3割です。
一方、漢方薬局で専門家が調合する煎じ薬などを自由診療で購入する場合は全額自己負担となり、一般的に月数万円程度の費用がかかる傾向があります。
まとめ
自己免疫疾患の漢方療法において、漢方薬は西洋医学的治療を補完する有効な手段となり得ます。
ステロイドなどの副作用を軽減したり、倦怠感や冷えといった検査数値に現れにくい不調を和らげたりすることで、患者の生活の質を向上させる可能性があります。
漢方では「熱」「瘀血」「水毒」といった独自の観点から病態を捉え、体質から改善することで免疫バランスを整えることを目指します。
服用を開始する際は、自己判断を避け、必ず漢方に詳しい医師や薬剤師に相談することが重要です。
