椎間板ヘルニアと漢方薬|腰痛・坐骨神経痛への効果と選び方
漢方
椎間板ヘルニアが引き起こすつらい腰痛や足のしびれに対して、漢方薬は西洋医学とは異なる視点からアプローチする方法です。
痛み止めなどで症状が改善しない場合や、手術以外の選択肢を探している場合に、体質そのものから見直す漢方療法が注目されています。
この記事では、椎間板ヘルニアに用いられる漢方薬の種類や効果、東洋医学的な考え方、そして専門家への相談先の選び方について解説します。
椎間板ヘルニアの痛みやしびれに漢方薬が選ばれる理由
整形外科での治療を受けても改善しない腰痛やしびれ、あるいは手術を避けたいと考える方にとって、漢方薬は有力な選択肢となります。
西洋医学が痛み止めやブロック注射で症状を直接抑えるのに対し、漢方療法は痛みやしびれを引き起こしている根本的な体質の乱れに着目します。
ヘルニアという形態的な問題だけでなく、血流の滞りや体の冷え、生命エネルギーの低下といった全身の状態を整えることで、人が本来持つ治癒力を高め、症状を和らげることを目指します。
漢方医学で考える椎間板ヘルニアの3つの原因
漢方医学では、椎間板ヘルニアの痛みやしびれを、単に神経が圧迫されているだけの問題とは捉えません。
症状が現れる背景には、体全体のバランスの乱れがあると考えます。
その主な原因として、「瘀血」による血流の滞り、「冷え」による循環の悪化、そして加齢などによる「腎虚」という生命エネルギーの低下が挙げられます。
これらの原因が複合的に絡み合い、症状を引き起こしていると捉え、体質に応じたアプローチを行います。
原因①:血流の滞り(瘀血)が引き起こす痛み
漢方でいう「瘀血(おけつ)」とは、血液がドロドロになり、血流が滞っている状態を指します。
血流が悪くなると、痛みのある部分に十分な酸素や栄養が供給されず、発痛物質が溜まりやすくなるため、痛みが慢性化しやすくなります。
特に、刺すような鋭い痛みや、常に同じ場所が痛む固定性の腰痛は、瘀血が原因であると考えられます。
また、瘀血の状態では、打撲や外傷が治りにくくなる傾向も見られます。
椎間板ヘルニアの症状改善には、この血流の滞りを解消し、全身の巡りを良くすることが重要になります。
原因②:体の冷えによる痛みの悪化としびれ
体の冷えは、椎間板ヘルニアの症状を悪化させる大きな要因です。
気温の低下や冷房などで体が冷えると、血管が収縮して血行が悪化し、筋肉が硬直しやすくなります。
これにより、腰周辺の筋肉の緊張が強まり、痛みが一層増すことがあります。
また、血流の悪化は神経にも影響を与え、しびれを引き起こしたり、悪化させたりする原因にもなります。
特に、冬場や雨の日、朝方など、体が冷えやすい時間帯に症状が強くなる場合は、冷えが深く関係している可能性が高いと考えられます。
体を内側から温め、血行を促進することが症状緩和につながります。
原因③:加齢に伴う生命エネルギーの低下(腎虚)
漢方医学における「腎」は、生命活動の根源的なエネルギーを蓄える場所とされ、成長や発育、老化と深く関わっています。
加齢や過労によってこの腎の機能が低下した状態を「腎虚」と呼びます。
腎は骨や腰とも密接な関係があるため、腎虚になると足腰が弱り、骨がもろくなり、椎間板ヘルニアをはじめとする慢性的な腰痛やしびれ、頻尿、倦怠感などの症状が現れやすくなります。
痛み止めなどで一時的に症状が和らいでも、根本に腎虚がある限り、痛みは再発しやすいため、腎を補い生命エネルギーを高めるアプローチが根本的な改善に不可欠です。
【症状・体質別】椎間板ヘルニアに用いられる代表的な漢方薬
椎間板ヘルニアの漢方療法では、個々の症状や体質を丁寧に見極め、最適な漢方薬を選択することが重要です。
例えば、痛みの性質がズキズキするのか、重だるいのか、また冷えると悪化するのか、疲れるとひどくなるのかといった情報から、その背景にある原因を探ります。
ここでは、前述した「瘀血」「冷え」「腎虚」といった原因に対応する代表的な漢方薬を紹介し、それぞれの腰痛に対する働きや特徴を解説します。
血行を促進し痛みを和らげる漢方薬(疎経活血湯など)
血流の滞りである「瘀血」が原因で起こる、ズキズキとした鋭い痛みや慢性的な関節痛、神経痛には、血行を促進する漢方薬が用いられます。
代表的な漢方薬が「疎経活血湯」です。
この漢方薬は、滞った気と血の流れをスムーズにし、体内の余分な水分を取り除くことで、筋肉の緊張を和らげ、痛みやしびれを改善する働きがあります。
比較的に体力がある人で、関節や筋肉の痛みに悩む場合に適しています。
その他、血行不良と冷えが同時に見られる場合には「桂枝茯苓丸」などが使われることもあります。
体を温め足腰の冷えやしびれを改善する漢方薬(牛車腎気丸など)
冷えが原因で腰痛やしびれが悪化するタイプには、体を温めて血行を促す漢方薬が有効です。
その代表的な漢方薬が「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」です。
この漢方薬は、体を温める作用を持つ生薬と、生命エネルギーを補う生薬で構成されており、特に下半身の冷え、腰から下の重だるさ、足のしびれ、排尿トラブルなどを改善する効果が期待できます。
体を温めることで血管を広げ、血流を促進し、痛みやしびれの原因となる冷えを取り除きます。
体力が低下し、疲れやすく、足腰に力が入らない高齢者の方などにもよく用いられます。
加齢による衰えを補い根本改善を目指す漢方薬(八味地黄丸など)
加齢や疲労の蓄積による生命エネルギーの低下、「腎虚」が背景にある慢性的な腰痛には、体を補う漢方薬を用いて根本的な改善を目指します。
その代表格が「八味地黄丸」です。
この漢方薬は、「腎」の働きを補い、体を温める作用によって、腰痛をはじめ、足腰の衰え、しびれ、頻尿、かすみ目といった加齢に伴うさまざまな症状を改善します。
痛みやしびれだけでなく、疲れやすさや体力の低下も同時に感じている場合に適しています。
急な痛みを取るというよりは、体質からじっくりと立て直していくことを目的としています。
椎間板ヘルニアの漢方療法における相談先の選び方
漢方薬による治療を検討する際、どこで相談すればよいか迷うかもしれません。
主な相談先として「漢方薬局」と「病院やクリニック」があり、それぞれに異なる特徴があります。
保険適用の有無や費用、専門性、相談にかけられる時間などを考慮し、自分の希望やライsフスタイルに合った場所を選ぶことが大切です。
ここでは、それぞれのメリットや注意点を解説し、適切な相談先を見つけるための参考にしてください。
専門家に体質から相談したい場合は漢方薬局
漢方薬局では、漢方の専門知識を持つ薬剤師が、時間をかけてカウンセリングを行ってくれるのが大きな特徴です。
舌の状態を診る「舌診」や脈を診る「脈診」など、漢方独自の方法で体質を細かく分析し、その人に最も合った漢方薬を提案してくれます。
既製品のエキス製剤だけでなく、生薬を調合する煎じ薬、保険にはない動物生薬など、よりパーソナルな改善方法が期待できます。
ただし、ほとんどの場合が保険適用外となるため、費用は自己負担になります。
根本的な体質改善をじっくりと目指したい方や、病院の治療で満足できなかった方に適しています。
保険適用で費用を抑えたい場合は病院やクリニック
病院やクリニックで漢方薬を処方してもらう最大のメリットは、健康保険が適用されるため、経済的な負担を抑えられる点です。
整形外科や内科などで、西洋医学的な治療と並行して漢方薬を取り入れている医師も増えています。
処方されるのは主に製薬会社が製造したエキス製剤(粉薬や錠剤)で手軽に服用できます。
西洋医学的な検査や診断を受けた上で漢方薬を試したいという方には適した選択肢です。
ただし、医師が漢方に精通していない場合、処方の選択肢が限られたり、詳細な体質判断が行われなかったりすることもあります。
漢方薬を服用する前に知っておきたい注意点
漢方薬は天然の生薬を原料としているため、体に優しいイメージがありますが、医薬品であることに変わりはありません。
体質に合わないものを服用したり、用法・用量を間違えたりすると、副作用が起こる可能性があります。
例えば、胃腸の不快感や食欲不振、皮膚の発疹などが現れることがあります。
また、甘草という生薬を含む漢方薬を長期に服用すると、偽アルドステロン症という副作用を引き起こす可能性も指摘されています。
自己判断で市販薬を選ぶのではなく、必ず医師や薬剤師、登録販売者などの専門家に相談し、自分の体質に合ったものを選ぶことが重要です。
椎間板ヘルニアの漢方薬に関するよくある質問
椎間板ヘルニアの改善方法として漢方薬を考え始めたとき、効果が出るまでの期間や西洋薬との飲み合わせ、副作用の心配など、さまざまな疑問が浮かぶかもしれません。
ここでは、実際に漢方療法を始める前によく寄せられる質問をまとめ、それらに対する一般的な回答を紹介します。
服用を始める前の不安を解消し、安心して取り組むための参考にしてください。
漢方薬の効果はどのくらいの期間で実感できますか?
効果を実感できるまでの期間は、症状の程度や体質により個人差があります。
急性の強い痛みであれば2週間から1ヶ月程度で変化を感じることもありますが、慢性的な症状の体質改善が目的の場合は、3ヶ月以上の継続的な服用が必要になるのが一般的です。
焦らずじっくりと体質を整えていくことが大切です。
病院で処方された痛み止めと漢方薬は併用できますか?
自己判断での併用はせず、必ず処方した医師やカウンセリングを担当した薬剤師に相談してください。
基本的には併用可能な場合が多いですが、薬の成分によっては相互作用を起こす可能性も否定できません。
急な腰痛など、痛みが強い時期は痛み止めを使い、並行して漢方薬で体質改善を図るという使い分けも行われます。
漢方薬に副作用はありますか?
はい、漢方薬にも副作用はあります。
自然由来の成分ですが、体質に合わない場合は食欲不振や胃もたれ、下痢、発疹などの症状が出ることがあります。
まれに間質性肺炎や肝機能障害といった重篤な副作用が起こる可能性もあるため、服用後に体調の異変を感じた際は、すぐに服用を中止して専門家に相談してください。
まとめ
椎間板ヘルニアによる腰痛やしびれに対して、漢方薬は西洋医学とは異なる体質改善というアプローチで症状の緩和を目指す選択肢です。
漢方では、痛みやしびれの原因を「瘀血」「冷え」「腎虚」などと捉え、個々の状態に合わせて疎経活血湯や牛車腎気丸、八味地黄丸といった漢方薬などを使い分けます。
(人によって他の漢方薬が選択される場合もあります)
服用を検討する場合は、じっくり相談できる漢方薬局や、保険が適用される病院・クリニックといった相談先の特長を理解することが求められます。
専門家のアドバイスのもと、自分の体質や症状に合った方法を選択することが重要です。
