起立性調節障害の漢方薬|症状別の選び方と子供におすすめの薬

起立性調節障害の漢方薬|症状別の選び方と子供におすすめの薬 漢方

起立性調節障害は、特に思春期の子供に多く見られる自律神経系の疾患です。
朝起きられない、立ちくらみ、倦怠感といった症状に対し、西洋薬の治療だけでなく、体質からの改善を目指す漢方薬が注目されています。

この薬は、一人ひとりの症状や体質に合わせて選ぶことが重要であり、子供に合った優しい改善方法を探している場合に有効な選択肢となります。
この記事では、症状別に適した漢方薬の種類や選び方を解説します。

なぜ起立性調節障害の改善に漢方薬が注目されるのか

起立性調節障害の改善において漢方薬が選ばれる理由は、症状を直接抑える西洋薬とは異なり、身体全体のバランスを整えることで根本的な体質改善を目指す点にあります。

自律神経の乱れは「気・血・水」の不調和から生じると捉え、これらを正常化することで、めまいや倦怠感といった多様な症状に対応します。身体への負担が比較的少なく、子供の長期的な服用にも適していると考えられるため、選択肢の一つとして注目されています。

西洋医学の治療法との根本的な違い

西洋医学における起立性調節障害の治療は、血圧を上げる薬(昇圧剤)や精神安定剤などを用いて、めまいや動悸といった個別の症状を抑える対症療法が中心です。
病院ではまず生活習慣の改善指導が行われ、それでも改善しない場合に薬物療法が検討されます。

一方、漢方医学では、症状の根本原因を自律神経の乱れだけでなく、東洋医学的な観点から「気・血・水」のバランスの崩れと捉えます。
そのため、一人ひとりの体質を見極め、身体全体の調和を取り戻すことで、症状が出にくい身体作りを目指す点が根本的に異なります。

自律神経の乱れを整え体質改善を目指す漢方の考え方

漢方では、人間の生命活動を支える要素として「気・血・水」の3つが重要だと考えられています。
これらが体内で過不足なくスムーズに巡ることで、心身の健康が保たれます。

起立性調節障害は、このバランスが崩れることで自律神経が乱れ、様々な症状が現れる状態と捉えます。
例えば、体内の水分代謝が滞る「水毒」はめまいを、エネルギーが不足する「気虚」は倦怠感を引き起こします。
漢方薬は、これらの乱れを整えて体質を改善し、身体が本来持つ自然治癒力を高めることで、症状の根本的な改善に効果を発揮します。

【症状・タイプ別】起立性調節障害に用いられる代表的な漢方薬

起立性調節障害の症状は、朝起きられない、めまい、頭痛、腹痛など多岐にわたるため、改善には個々の症状や体質に合った漢方薬を選ぶことが重要です。
漢方には多くの種類があり、小学生、中学生、高校生といった思春期の子どもから、近年増えている大人の起立性調節障害まで、それぞれの状態に適した漢方薬が存在します。

ここでは、症状や体質タイプ別に、起立性調節障害の治療で代表的に用いられる漢方薬を紹介します。

めまいや立ちくらみが主な症状なら「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」

立ち上がった時のふらつきや、ぐるぐる回るようなめまいが主な症状の場合には、「苓桂朮甘湯」がよく用いられます。
この漢方薬は、漢方医学でいう「水毒」、すなわち体内の水分代謝の異常を改善する働きがあります。
特に、胃腸に水が溜まっている感覚(胃内停水)があり、頭痛や動悸を伴う場合に適しています。

体内の余分な水分を排出し、気の流れを整えることで、自律神経のバランスを正常化し、めまいや立ちくらみを和らげる効果が期待できます。
比較的体力がある人向けの漢方薬です。

朝起きるのが辛く倦怠感が強い場合は「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」

朝なかなか起き上がれず、一日中強い倦怠感が続く場合には、「補中益気湯」が選択肢として考えられます。
この漢方薬は「気虚(ききょ)」、つまり生命エネルギーが不足している状態を改善する代表的な漢方薬です。
「元気を取り戻す薬」とも言われ、胃腸の働きを高めて栄養の吸収を助け、気力と体力の両方を補います。

食欲不振や寝汗、疲労感を伴う場合に特に効果的で、身体の内側からエネルギーを産生する力を高めることで、朝から活動できる身体作りをサポートします。
不眠の改善にもつながることがあります。

胃腸が弱く頭痛や吐き気があるなら「半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)」

もともと胃腸が弱く、食後に眠くなったり、天候の変化で頭痛やめまい、吐き気が悪化したりするタイプには、「半夏白朮天麻湯」が適しています。
この漢方薬は、胃腸の働きを整えながら、体内の余分な水分(湿)を取り除くことで、水分の偏在によって生じる症状を改善します。

特に、回転性のめまいや、重たい感じがする頭痛に効果を発揮します。
体力を補う作用もあるため、胃腸が弱く疲れやすい虚弱体質の方でも安心して服用しやすい漢方薬です。

ストレスや精神的な不安が目立つ場合は「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」

起立性調節障害の症状に加えて、イライラや気分の落ち込み、腹痛、不眠といった精神的な不調が目立つ場合には、「柴胡桂枝湯」が用いられます。
この漢方薬は、自律神経の緊張を和らげ、心身のバランスを整える作用があります。
ストレスによって乱れた「気」の流れをスムーズにし、過敏になった神経を鎮めます。
うつ傾向や不安感を伴う起立性調節障害の改善に適しており、精神的な要因が症状を悪化させていると考えられるケースで効果が期待できます。

比較的体力が中等度の方向けの漢方薬です。

疲れやすく腹痛を繰り返すなら「小建中湯(しょうけんちゅうとう)」

体力がなく疲れやすい虚弱体質で、特に腹痛を頻繁に繰り返す子供には、「小建中湯」が適しています。
この漢方薬は、お腹を温めて消化器系の働きを助け、気力と体力を補うことで身体を丈夫にする作用があります。
特に、ストレスや疲労で悪化するけいれん性の腹痛に効果的です。

甘みがあって子供でも比較的飲みやすいのが特徴で、神経の高ぶりを鎮める働きもあるため、夜泣きや寝つきの悪さにも用いられます。
体質改善を目的として長期的に服用されることが多い漢方薬です。

冷え性で顔色が悪く貧血気味なら「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」

冷え性で手足が冷たく、顔色が悪くて貧血傾向がある場合には、「当帰芍薬散」が選択されます。
この漢方薬は、漢方でいう「血虚」、つまり血液が不足したり、その循環が悪くなったりしている状態を改善する代表的な漢方薬です。

全身の血の巡りを良くして体を温めると同時に、体内の余分な水分の排出を助ける作用があります。
これにより、貧血に伴う立ちくらみやめまい、頭痛、むくみといった症状を和らげます。
特に女性の起立性調節障害でよく用いられます。

起立性調節障害の漢方療法を始める際の注意点

起立性調節障害の改善に漢方薬は有効な選択肢ですが、服用を始める際にはいくつかの注意点があります。
漢方薬は自然由来の成分で構成されていますが、医薬品であることに変わりはなく、体質に合わない場合は副作用を引き起こす可能性もあります。

効果を最大限に引き出し、安全に治療を進めるためには、自己判断で服用を始めるのではなく、専門家の指導のもとで適切な漢方薬を選ぶことが不可欠です。

自己判断で選ばず専門の医師や薬剤師に相談する

漢方薬は、同じ症状であっても個人の体質、つまり「証」によって最適な漢方薬が異なります。
例えば、同じめまいでも、体内の水分代謝が悪い「水毒」が原因の場合と、エネルギー不足の「気虚」が原因の場合とでは、使用する漢方薬が全く違います。

自己判断で市販薬を選ぶと、自分の証に合わない薬を選んでしまい、効果が出ないばかりか、かえって症状を悪化させる可能性もあります。
そのため、漢方療法を始める際は、必ず漢方に詳しい医師のいる病院や、専門の薬剤師がいる薬局に相談し、適切な診断のもとで漢方薬のを受けることが重要です。

漢方薬はどこで手に入る?保険適用の可否

漢方薬を入手する方法は、主に二つあります。
一つは、内科や小児科、漢方外来などの病院で医師の診察を受けて処方してもらう方法です。
医師が処方する医療用漢方製剤(エキス剤)は、品質が安定しており、健康保険が適用されるため、費用負担を抑えられます。

もう一つは、漢方専門薬局やドラッグストアで市販薬を購入する方法です。
クラシエやツムラといったメーカーから様々な種類の漢方薬が販売されており、手軽に試せますが、保険は適用されません。
また、保険適応外の薬も選択できるため、より幅広い選択肢を得ることができます。

副作用のリスクと服用期間の目安について

漢方薬は比較的安全とされていますが、医薬品であるため副作用のリスクはゼロではありません。
代表的な副作用には、食欲不振や胃もたれといった消化器症状、発疹やかゆみなどの皮膚症状があります。

まれに、偽アルドステロン症(手足のむくみ、血圧上昇)や間質性肺炎、肝機能障害などが起こることもあります。
体質に合わないと感じたり、何か異常を感じたりした場合は、すぐに服用を中止して医師や薬剤師に相談してください。
服用期間の目安は症状や体質によって異なりますが、一般的には2週間から1ヶ月ほどで効果の兆しが見え始め、数ヶ月単位で体質改善を目指します。

起立性調節障害の漢方薬に関するよくある質問

起立性調節障害の改善で漢方薬を検討する際、効果を実感できるまでの期間や、子供への飲ませ方、医療用と市販薬の違いなど、様々な疑問が生じることがあります。
ここでは、保護者の方や患者さん本人からよく寄せられる質問について、簡潔に回答します。

服用を始める前の不安や疑問を解消するための一助としてください。

漢方薬はどのくらいの期間飲み続ければ効果を実感できますか?

効果を実感できる期間は体質や症状の重さにより個人差がありますが、一般的には2週間から1ヶ月程度で何らかの変化を感じ始める方が多いです。
漢方薬は体質を根本から改善することを目指すため、即効性は期待しにくいです。

改善がみられたと判断できる状態になるまで、少なくとも3ヶ月程度は服用を続けることが一つの目安となります。

子供が漢方薬の味や匂いを嫌がって飲まない時の対処法はありますか?

子供が味や匂いを嫌がる場合、オブラートに包む、服薬補助ゼリーを使用する、少量の水やぬるま湯で練ってペースト状にして上あごに塗るなどの方法が有効です。
ジュースや牛乳に混ぜると成分が変化し効果に影響することがあるため、事前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

甘みのある漢方薬を選ぶのも一つの手です。

病院で処方される漢方薬と市販薬では何が違いますか?

病院で処方される医療用漢方薬は医師の診断に基づき、健康保険が適用されます。
一方、市販薬は誰でも購入できますが、保険適用外です。

体質に合った最適な漢方薬を選ぶためにも、専門家によるカウンセリングを受けることが推奨されます。

まとめ

起立性調節障害の改善において、漢方薬は自律神経のバランスを整え、体質を根本から改善することを目指す有効なアプローチです。
めまいには苓桂朮甘湯、倦怠感には補中益気湯など、個々の症状や体質(証)に合わせた多様な漢方薬が存在します。

漢方薬の効果を最大限に引き出すためには、自己判断を避け、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談することが不可欠です。
専門家による適切な判断のもとで漢方薬を選び、安全に服用を進めることが重要です。
西洋医学の治療と並行して、あるいは新たな選択肢として、漢方療法を検討することは、症状の改善につながる可能性があります。

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