生理の頭痛と漢方薬:生理前・後・生理痛など症状別に解説
漢方
生理前や生理中、あるいは生理後の時期に起こるつらい頭痛に悩む女性は少なくありません。
この月経周期に伴う頭痛や生理痛は、ホルモンバランスの変化が大きく関わっていますが、漢方薬は体全体のバランスを整えることで症状を和らげるアプローチをします。
生理のどの時に頭痛が起こるか、どのような痛みかによって原因は異なり、適した漢方薬も変わってきます。
自分の症状や体質に合った漢方薬を見つけることが、不調の改善につながります。
漢方で考える生理中に頭痛が起こる主な原因
漢方では、人間の体は「気」「血」「水」の3つの要素で構成され、これらがバランス良く巡ることで健康が保たれると考えます。
生理中はこのバランスが乱れやすく、頭痛をはじめとするさまざまな不調が現れやすくなります。
特に、経血として「血」が失われることや、ホルモンバランスの変動による「気」や「水」の滞りが、頭痛の主な原因として挙げられます。
体質や症状によって、どの要素の乱れが強いかを見極めることが、適切な対処の第一歩となります。
原因① 血の不足による栄養不足「血虚(けっきょ)」
「血(けつ)」は全身に栄養や潤いを運ぶ役割を担っており、「血虚」とはその血が不足した状態を指します。
生理では経血として多くの血が失われるため、血虚に陥りやすくなります。
特に生理の後半から生理後にかけて、脳に十分な栄養が行き渡らなくなり、しくしくとした鈍い頭痛が起こることがあります。
このタイプの頭痛は、めまいや立ちくらみ、顔色が悪い、髪のパサつき、爪がもろいといった症状を伴いやすいのが特徴です。
十分な休息と、血を補う働きのある食事を心がけることも改善に役立ちます。
原因② ストレスやホルモンバランスの乱れによる「気滞(きたい)」
「気」は生命活動のエネルギー源であり、体内をスムーズに巡ることで心身の機能を正常に保っています。
「気滞」とは、ストレスやホルモンバランスの乱れによって、この気の流れが滞ってしまう状態のことです。
特に生理前は気の巡りが悪くなりやすく、頭の血管が収縮・拡張してズキズキと脈打つような痛みや、張るような痛みが生じやすくなります。
片頭痛のような症状が出ることもあり、イライラや気分の落ち込み、胸やお腹の張りといった精神的な不調を伴うことも少なくありません。
気の滞りは血行不良にもつながるため、注意が必要です。
原因③ 体内の水分バランスの乱れによる「水滞(すいたい)」
水は血液以外の体液全般を指し、その流れが滞って体内に余分な水分が溜まった状態を水滞または水毒と呼びます。
生理前や生理中は、ホルモンの影響で体に水分を溜め込みやすくなるため、水滞が起こりがちです。
溜まった水分が頭部の血行を妨げ、頭が重く締め付けられるような頭痛を引き起こします。
このタイプの頭痛は、体のむくみやめまい、吐き気などを伴うことが多く、雨の日など湿度の高い日に悪化する傾向があります。
体を冷やさないようにすることも、水分代謝を整える上で重要です。
【症状・時期別】生理のつらい頭痛におすすめの漢方薬3選
生理に伴う頭痛は、症状が現れる時期や痛みの性質、体質によって適した漢方薬が異なります。
例えば、体内の余分な水分が原因で起こる頭痛やむくみには五苓散が用いられることがあります。
ここでは、生理周期と症状の組み合わせから考えられる代表的な3つのタイプと、それぞれにおすすめの漢方薬を紹介します。
自分の症状と照らし合わせ、漢方薬を選ぶ際の参考にしてください。
ただし、ご自身に最適な漢方薬は専門家による判断が不可欠です。
生理前に起こるイライラや気分の落ち込みを伴う頭痛
生理前の頭痛は、気の巡りが滞る「気滞」が主な原因と考えられます。
特に、イライラや気分の落ち込み、胸の張りといった精神的な症状を伴う場合には、気の流れをスムーズにし、自律神経のバランスを整える漢方薬が適しています。
代表的な漢方薬としては「加味逍遙散(かみしょうようさん)」が挙げられます。
この漢方薬は、滞った気を巡らせて熱を冷ますことで、精神不安やいらだちを鎮め、頭痛や肩こり、のぼせなどの身体的な症状も緩和します。
比較的体力がなく、疲れやすい方のPMS(月経前症候群)によく用いられます。
生理中の冷えや貧血気味のズキズキとした頭痛
生理中のズキズキとした頭痛は、経血によって血液が不足する「血虚」や、体の冷えによる血行不良「瘀血(おけつ)」が原因であることが多いです。
体が冷えやすく、貧血気味で、めまいやむくみを伴う場合には、体を温めながら血を補い、血行を促進する漢方薬が有効です。
代表的な漢方薬には「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」があります。
この漢方薬は、血行を改善して体を温めることで痛みを和らげ、水分代謝を整える作用もあるため、冷えや貧血に伴う頭痛や月経不順の改善に用いられます。
生理中の肩こりやのぼせを伴うガンガンとした頭痛
生理中に起こるガンガンと響くような激しい頭痛で、肩こりや下腹部痛、のぼせやほてりを伴う場合は、血行が滞る「瘀血」が主な原因と考えられます。
体力があり、比較的がっちりした体格の方に見られやすい症状です。
このタイプには、滞った血の巡りを強力に改善する作用のある漢方薬が適しています。
代表的な処方である「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」は、血行を促進して熱のバランスを整えることで、頭痛や肩こり、のぼせといった症状を緩和します。
月経痛や子宮内膜症、更年期障害などにも応用されます。
漢方と合わせて実践したい!生理の頭痛を和らげるセルフケア
漢方薬による体質改善を目指すとともに、日々の生活習慣を見直すことで、より効果的に生理の頭痛を和らげることが期待できます。
食事や運動、入浴といったセルフケアは、血行を促進し、体の冷えを防ぎ、心身をリラックスさせる助けとなります。
漢方薬だけに頼るのではなく、生活全体で体を整えていく意識を持つことで、生理痛を含むさまざまな不調が起こりにくい体づくりにつながります。
無理のない範囲で、自分に合った方法を取り入れてみましょう。
体を温める食べ物や飲み物を意識して摂る
体の冷えは血行不良を招き、頭痛をはじめとする生理中の不調を悪化させる一因です。
食事では、体を内側から温める食材を意識的に取り入れることが有効です。
生姜やネギ、にんにくなどの香味野菜や、かぼちゃ、ごぼうといった根菜類は体を温める作用があります。
飲み物は、冷たいジュースや水を避け、白湯やハーブティーなどを選ぶと良いでしょう。
また、漢方では血を補うとされる、ほうれん草やひじき、レバーなどもおすすめです。
逆に、トマトやきゅうりなどの夏野菜や、白砂糖を多く使ったお菓子は体を冷やす傾向があるため、生理期間中は控えるのが望ましいです。
軽いストレッチやウォーキングで血行を促す
適度な運動は、全身の血行を促進し、頭痛の緩和に役立ちます。
特にデスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けていると、首や肩の筋肉が緊張し、肩こりを伴う頭痛を引き起こしやすくなります。
痛みがつらい時に無理をする必要はありませんが、体調が良い日には、軽いストレッチやウォーキング、ヨガなどを習慣にすると良いでしょう。
首や肩をゆっくり回したり、股関節周りをほぐしたりするだけでも、滞りがちな血流が改善されます。
筋肉の緊張を和らげ、リラックス効果も得られるため、頭痛が起こりにくい体づくりに効果的です。
ぬるめのお風呂にゆっくり浸かってリラックスする
シャワーだけで済ませず、湯船に浸かる習慣は、生理中の不調を和らげるのに有効なセルフケアです。
38~40℃程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、体の芯から温まり、血行が促進されます。
また、副交感神経が優位になって心身がリラックスし、ストレスによる頭痛の緩和も期待できます。
好きな香りの入浴剤やアロマオイルを使えば、リラックス効果はさらに高まるでしょう。
ただし、更年期などでみられるのぼせやほてりが強い場合は、長時間の入浴は避け、体調に合わせて調整することが必要です。
頭痛の緩和が期待できるツボを押してみる
東洋医学では、体の不調に対応するツボ(経穴)を刺激することで、症状を和らげることができると考えられています。
頭痛に有効なツボはいくつかあり、痛みの場所や種類によって使い分けると効果的です。
例えば、側頭部のズキズキとした片頭痛のような痛みには、眉尻と目尻を結んだ線の延長線上、こめかみの少し後ろにある「太陽(たいよう)」が良いとされます。
後頭部の痛みには、首の付け根のくぼみにある「風池(ふうち)」がおすすめです。
指の腹で、気持ち良いと感じる程度の強さでゆっくり5秒ほど押して離す、という動作を繰り返してみてください。
自分に合った漢方薬を選ぶ際の注意点
漢方薬は、同じ頭痛という症状でも、その人の体質や原因によって処方が異なります。
そのため、パッケージの効能書きだけを見て自己判断で選ぶと、効果が得られなかったり、かえって体調を崩したりする可能性もあります。
特に40代以降は、ホルモンバランスの変化が複雑になり、生理の悩みと更年期の不調が重なることもあるため、より慎重な判断が求められます。
自分の体質を正しく見極め、最適な漢方薬を見つけるためには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。
漢方薬はどこで購入できる?
漢方薬を入手する方法は、主に「医療機関(病院・クリニック)」「漢方薬局」「ドラッグストア」の3つがあります。
医療機関では、医師の診察に基づいて健康保険が適用されるエキス剤が処方されることが一般的です。
漢方薬局では、漢方に詳しい薬剤師が時間をかけてカウンセリングを行い、体質に合った漢方薬(煎じ薬やエキス剤など)を選んでくれます。
ドラッグストアでは、薬剤師や登録販売者に相談しながら、市販の漢方製剤を手軽に購入できます。
症状の程度や専門家への相談の必要性に応じて、どこで購入するかを検討すると良いでしょう。
まずは医師や薬剤師などの専門家に相談しよう
生理の頭痛で漢方薬を試したいと考えた場合、まずは医師や薬剤師、登録販売者といった専門家に相談することが最も重要です。
漢方では、体質や症状を総合的に判断する「証」という独自の診断方法を用いて、その人に合った漢方薬を決定します。
専門家は、問診などを通じてこの「証」を見極め、数多くある漢方薬の中から最適なものを選んでくれます。
特に40代以降は、更年期の影響も考慮する必要があるため、自己判断は避けるべきです。
思わぬ病気が隠れている可能性も否定できないため、まずは専門家に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。
まとめ
生理に伴う頭痛は、漢方の視点では「気・血・水」のバランスの乱れが原因と考えられています。
月経周期における時期や痛みの特徴から、血の不足である「血虚」、気の滞りである「気滞」、水の滞りである「水滞」など、その原因はさまざまです。
そのため、自分の体質や症状に合った漢方薬を選ぶことが改善への鍵となります。
漢方薬の服用と合わせて、体を温める食事や適度な運動、リラックスできる時間を持つなどのセルフケアを実践することで、頭痛が起こりにくい体質を目指せます。
最適な漢方薬を見つけるためには、自己判断せず、医師や薬剤師に相談することが不可欠です。
