更年期の陰部(デリケートゾーン)のかゆみ・痛みを漢方で改善

更年期の陰部(デリケートゾーン)のかゆみ・痛みを漢方で改善 漢方

更年期に差し掛かると、多くの女性がデリケートゾーンの不快な症状に悩まされます。
人に相談しにくい陰部のかゆみやヒリヒリとした痛みは、生活の質を大きく下げる原因の一つです。
更年期の主な原因は、女性ホルモンの減少による乾燥や萎縮です。

漢方医学では、こうした症状を体全体のバランスの乱れと捉え、根本的な体質改善を目指します。
この記事では、更年期のデリケートゾーンのかゆみの原因と、症状を和らげる漢方薬、そして日々のセルフケアについて解説します。

なぜ?更年期にデリケートゾーンのかゆみが起こる主な原因

更年期にデリケートゾーンのかゆみが起こりやすくなるのは、単なる皮膚トラブルではなく、体内で起こる大きな変化が関係しています。
主な原因は、女性ホルモンの減少による身体的な変化です。

しかし、漢方医学では、更年期の症状を体質的な問題、つまり身体全体のバランスの乱れとして捉えます。
西洋医学的な視点と、漢方医学が考える体質の両面から原因を理解することで、より自分に合った対処法を見つけられます。

女性ホルモンの減少による膣の乾燥と萎縮

閉経が近づく更年期には、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少します。
エストロゲンには、膣や外陰部の粘膜に潤いと弾力を与え、厚みを保つ働きがあります。
そのため、エストロゲンが減少すると、粘膜が薄く乾燥し、萎縮性膣炎(老人性膣炎)と呼ばれる状態になります。

これにより、膣内の自浄作用が低下して雑菌が繁殖しやすくなったり、些細な刺激にも敏感に反応したりするため、かゆみや痛み、性交痛などの症状が現れやすくなります。
乾燥が進むと、粘膜のバリア機能が弱まり、炎症を繰り返すこともあります。

漢方医学が捉える陰部のかゆみをもたらす体質

漢方医学では陰部のかゆみを局所的な問題ではなく全身の不調のサインとして考えます。
特に血液や体液など体を潤す物質が不足する「陰虚」や血液そのものが不足する「血虚」が主な原因とされます。
これらは加齢に伴い誰にでも起こりやすい体質です。

またストレスなどで気の巡りが滞る「気滞」や血行が悪くなる「瘀血」水分代謝の乱れからくる「湿熱」などもかゆみを引き起こしたり悪化させたりする要因です。
これらの体質が複合的に絡み合い症状として現れるため個々の状態を見極めることが重要になります。

【症状別】更年期の陰部のかゆみに使われる代表的な漢方薬

更年期のデリケートゾーンのかゆみに対して、漢方治療では、現れている症状と体質を丁寧に見極め、個人に合わせた漢方薬を選びます。
一つの症状であっても、その背景にある体の状態は人それぞれ異なるため、同じ薬がすべての人に効果があるわけではありません。

ここでは、乾燥やほてり、おりものの状態、精神的なストレスなど、代表的な症状や体質別に、よく用いられる漢方薬を紹介します。
専門家と相談の上、自分の状態に合った薬を見つけることが改善への第一歩です。

乾燥やほてりが気になる場合に用いられる漢方薬

デリケートゾーンの乾燥が強く、ヒリヒリとしたかゆみがある場合、漢方では体を潤す力が不足している「陰虚」の状態と考えます。
特に、手足のほてりやのぼせ、寝汗といった症状を伴う場合は、体内に余分な熱がこもっている「陰虚火旺(いんきょかおう)」の可能性があります。

このような体質には、体に必要な潤いを補い、こもった熱を冷ます作用のある漢方薬が用いられます。
代表的な漢方薬としては、体を潤す六味地黄丸に熱を冷ます生薬を加えた「知柏地黄丸(ちばくじおうがん)」や、皮膚の乾燥やかゆみに広く使われる「温清飲(うんせいいん)」などがあります。

おりものが多くむれやすい体質向けの漢方薬

おりものが多く、デリケートゾーンが常に湿って蒸れやすい、あるいはじゅくじゅくしたかゆみがある場合、体内の水分代謝が悪く、余分な水分と熱がこもっている「湿熱」が原因と考えられます。
このタイプは、食生活の乱れや胃腸機能の低下によっても引き起こされやすいです。

治療には、体内の余分な「湿」を取り除き、「熱」を冷ます作用を持つ漢方薬が適しています。
代表的な漢方薬として、炎症を抑え、過剰な水分を排出する働きのある「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」がよく用いられます。
体質改善により、かゆみの原因となる環境を根本から整えていきます。

イライラやストレスを伴うかゆみに効く漢方薬

更年期はホルモンバランスの乱れから、イライラや不安感、気分の落ち込みといった精神的な不調も現れやすい時期です。
こうしたストレスは自律神経のバランスを乱し、かゆみを悪化させる一因となります。
漢方では、ストレスによって気の巡りが滞る「気滞」の状態と捉えます。

精神的な不安定さや不眠などを伴うかゆみには、気の巡りを改善し、精神を安定させる漢方薬が有効です。
代表的な漢方薬には「加味逍遙散(かみしょうようさん)」があり、気の巡りを整えながら血行を促し、こもった熱を冷ますことで、心身両面から症状を和らげます。
うつ傾向が見られる場合にも応用されます。

漢方と併用したい!デリケートゾーンのかゆみを和らげるセルフケア

更年期の陰部のかゆみを改善するためには、漢方薬で体質を整えることと並行して、日々のセルフケアを見直すことが効果的です。
デリケートゾーンは非常に繊細なため、間違ったケアがかえって症状を悪化させてしまうこともあります。

正しい洗い方や保湿、肌に優しい下着選び、そして体の内側から潤いを補う食生活など、今日から始められるケアを取り入れることで、不快な症状を和らげ、健やかな状態を保つことにつながります。

毎日の習慣で見直す|正しい洗い方と保湿ケア

デリケートゾーンの清潔を保つことは重要ですが、洗いすぎは禁物です。
アルカリ性の強いボディソープや石鹸でゴシゴシ洗うと、肌を守る皮脂膜や常在菌まで洗い流してしまい、乾燥やかゆみを助長します。

洗浄の際は、デリケートゾーン専用の弱酸性のソープをよく泡立て、指の腹で優しくなでるように洗いましょう。
お湯の温度は、熱すぎると乾燥を招くため、ぬるま湯が適しています。
洗浄後は、清潔なタオルで軽く押さえるように水分を拭き取り、刺激の少ない専用の保湿剤でしっかりと保湿ケアを行うことが、バリア機能を保ち乾燥を防ぐ上で欠かせません。

肌への刺激を減らす下着の素材選び

デリケートゾーンは下着による摩擦や蒸れの影響を受けやすい部位です。
ナイロンやポリエステルなどの化学繊維は、通気性が悪く蒸れやすいため、かゆみの原因となることがあります。
また、締め付けの強いデザインや硬いレースは、肌への刺激となり痛みを引き起こす可能性も考えられます。

下着を選ぶ際は、吸湿性・通気性に優れた綿やシルクといった天然素材のものを選ぶと良いでしょう。
さらに、縫い目が肌に直接当たらないデザインや、ゴムの締め付けが緩やかなもの、シームレスタイプなどを選ぶことで、物理的な刺激を最小限に抑え、快適に過ごせます。

食生活で身体の内側から潤いを補う方法

デリケートゾーンの乾燥は、体の内側の潤い不足が大きく影響しています。
日々の食事に、体を潤す作用のある食材を取り入れることで、内側からのケアが可能です。
漢方の考え方では、山芋、豆腐、豆乳、白きくらげ、梨といった白い食材は、体に潤いを与える「潤燥」の働きがあるとされています。
また、血液を補うとされる黒豆や黒ごま、クコの実などもおすすめです。

一方で、唐辛子などの香辛料やアルコール、脂っこい食事は、体内に熱を生みかゆみを悪化させることがあるため、摂りすぎには注意が必要です。
バランスの良い食事で、乾燥しにくい体作りを目指しましょう。

かゆみが続くときは婦人科へ|病院を受診する目安

セルフケアや漢方薬を試してもデリケートゾーンのかゆみが改善しない場合や、症状が悪化する際には、自己判断で対処を続けるのではなく、婦人科を受診することが重要です。
更年期のかゆみは女性ホルモンの減少が主な原因であることが多いものの、中にはカンジダ膣炎や細菌性膣症、接触皮膚炎といった他の疾患が隠れている可能性もあります。

市販薬で一時的に症状が治まっても、原因が解決していなければ再発を繰り返すことも少なくありません。
専門医による正確な診断を受けることが、適切な治療への第一歩となります。

市販薬を2週間使っても改善しない場合は要注意

ドラッグストアではデリケートゾーンのかゆみ止めとして様々な市販薬が販売されていますが、これらは主に非特異的な炎症やかゆみを抑える成分で構成されています。
そのため、更年期の乾燥によるかゆみには一時的な効果が期待できるかもしれません。
しかし、もしカンジダ症などが原因の場合、市販薬に含まれる成分によっては症状を悪化させてしまう恐れもあります。

一つの目安として、市販薬を1〜2週間使用しても症状が全く改善しない、あるいはかえってひどくなるような場合は、使用を中止して速やかに婦人科を受診してください。

婦人科で受けられるホルモン補充療法やレーザー治療

婦人科では、問診や内診を通じてかゆみの原因を特定し、適切な治療法を提案します。
更年期による萎縮性膣炎が原因と診断された場合、不足している女性ホルモンを補うホルモン補充療法(HRT)が選択肢の一つです。
飲み薬や貼り薬のほか、膣に直接作用する膣錠やクリームといった局所的に使用する薬もあり、全身への影響を抑えながら症状の改善が期待できます。

また、近年では、レーザーを膣壁に照射することでコラーゲンの生成を促し、粘膜の潤いや弾力性を取り戻すレーザー治療も行われるようになっています。

まとめ

更年期に起こるデリケートゾーンのかゆみや痛みは、女性ホルモンの減少による乾燥や萎縮が主な原因です。
この更年期の症状に対し、漢方では体を潤したり、血の巡りを整えたりするアプローチで体質から改善を目指します。
漢方薬の服用と並行して、デリケートゾーン専用の製品での洗浄・保湿、通気性の良い下着の着用、体を潤す食材を意識した食生活といったセルフケアも症状緩和に役立ちます。

もしセルフケアや市販薬で改善が見られない場合は、他の病気の可能性も考えられるため、一人で抱え込まずに婦人科や漢方の専門家に相談することが大切です。

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