当帰芍薬散で下痢になる?漢方の副作用の原因と対処法を解説
漢方
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、月経トラブルや更年期障害、冷え性など、多くの女性の悩みに用いられる漢方薬です。
しかし、服用によって下痢などの副作用が起こる可能性も指摘されています。
体質によっては体に合わない場合もあるため、正しい知識を持つことが重要です。
この記事では、医療用医薬品である当帰芍薬散料の服用で下痢が起こる原因やその対処法、副作用のリスクを減らすためのポイントについて解説します。
当帰芍薬散で下痢の症状が出ることがある?考えられる副作用を解説
当帰芍薬散の副作用として、下痢や腹痛といった消化器系の症状が報告されています。
頻度は高くありませんが、体質やその時の体の状態によっては、服用後に胃腸の不調を感じることがあります。
特に、もともと胃腸が弱い人は症状が出やすい傾向にあります。
下痢以外にも、食欲不振や胃の不快感、皮膚の発疹やかゆみなどが現れる可能性も考えられます。
体に何らかの異変を感じた場合は、自己判断で服用を続けず、専門家へ相談することが大切です。
当帰芍薬散の服用で下痢が起こる3つの原因
当帰芍薬散を服用して下痢や腹痛といった症状が起こる場合、その原因は一つとは限りません。
配合されている生薬の性質が胃腸に影響を与えているケースや、服用者自身の体質が関係していることも考えられます。
また、漢方薬が現在の体の状態、つまり「証(しょう)」に合っていない可能性も否定できません。
ここでは、下痢が起こる主な3つの原因について、それぞれ詳しく解説していきます。
原因1:配合されている生薬が胃腸の働きに影響する
当帰芍薬散に含まれる生薬の中には、胃腸に影響を与えやすいものがあります。
特に「芍薬(シャクヤク)」が、人によっては胃にもたれたり、お腹を緩くさせたりする性質を持っています。
この生薬は、全く問題ない方がいる一方、胃腸の弱い人にとっては負担となり、下痢の症状として現れることがあります。
また、漢方薬は複数の生薬の組み合わせで構成されており、その中の特定の成分が体に合わない場合に、消化器系の不調を引き起こす一因となります。
原因2:もともと胃腸が弱い体質である
当帰芍薬散は比較的体力がなく、疲れやすい「虚証(きょしょう)」タイプの人に適した漢方薬ですが、虚証の中でも特に胃腸機能が低下している人が服用すると、下痢の副作用が出やすくなります。
普段から食事の量が多くない、冷たいものを摂るとお腹の調子を崩しやすい、食後に胃がもたれやすいといった自覚がある場合は注意が必要です。
消化吸収能力が低い状態で漢方薬を服用すると、胃腸がその働きについていけず、下痢や軟便といった形で反応してしまうことがあります。
原因3:現在の体の状態に漢方が合っていない
漢方薬は、その人の体質や症状を示す「証」に適合して初めて効果を発揮します。
当帰芍薬散は、血(けつ)と気(き)が不足し、体内に余分な水分が溜まっている状態に適した処方です。
そのため、例えば胃腸の冷えが強い人や、血や水の巡りが問題がない人が服用すると、証に合わないため効果が得られないばかりか、かえって下痢などの不調を招くことがあります。
自分の体質に本当に合っているかを見極めることが、漢方治療では非常に重要です。
当帰芍薬散を飲んで下痢になった場合の対処法
当帰芍薬散を服用中に下痢や腹痛などの症状が現れた場合、不安に感じるかもしれません。
しかし、慌てず適切に対処することで、症状の悪化を防ぎ、安全に漢方による体質改善を続けるための道筋を見つけることができます。
最も重要なのは、自己判断で服用を継続しないことです。
副作用のサインを見逃さず、まずは服用を中止し、専門家の意見を仰ぐことが、自分の体を守る上で不可欠な行動となります。
まずは服用を一旦やめて様子を見る
当帰芍薬散を飲んで下痢や腹痛などの症状が出た場合、まず行うべきことは服用を中止することです。
服用をやめることで症状が改善するかどうかを確認し、その不調が漢方薬の副作用によるものなのかを判断する材料にします。
中止して数日以内に症状が治まるようであれば、薬が原因であった可能性が高いと考えられます。
症状が長引く、あるいは悪化するようであれば、他の原因も考えられるため、速やかに医療機関を受診する必要があります。
自己判断せず医師や薬剤師に相談する
服用を中止して症状が治まった場合でも、自己判断で服用を再開したり、そのまま放置したりするのは避けるべきです。
必ず処方を受けた医師や、漢方薬を購入した薬局の薬剤師に相談してください。
専門家は症状の程度や体質を考慮し、服用量を減らす、食後の服用に変更する、あるいは体質により合った別の漢方薬を提案するなど、適切なアドバイスを行います。
安全かつ効果的に体質改善を進めるためには、専門家との連携が不可欠です。
下痢以外に注意すべき当帰芍薬散の副作用
当帰芍薬散の副作用は、下痢や腹痛といった消化器系の症状に限りません。
体質によっては、皮膚に異常が現れたり、胃腸の他の不調を感じたりすることもあります。
どのような副作用の可能性があるかを事前に知っておくことで、服用中に体調の変化があった際に迅速かつ適切に対応できます。
ここでは、下痢以外に報告されている主な副作用について、具体的な症状を解説します。
皮膚に現れる発疹やかゆみの症状
消化器症状のほかに注意したい副作用として、皮膚に現れる症状があります。具体的には、発疹や発赤、かゆみなどが報告されています。これらは、配合されている生薬に対するアレルギー反応として起こることが考えられます。
服用を開始してから肌に異常を感じた場合は、薬が体質に合っていない可能性が高いです。このような症状が現れたら、すぐに服用を中止し、処方した医師または薬剤師に相談して指示を仰いでください。
食欲不振や胃の不快感といった消化器系の症状
下痢や腹痛に加えて、食欲不振、胃の不快感、吐き気、嘔吐といった消化器系の副作用が起こることもあります。
これらの症状は、配合されている生薬が胃腸に刺激を与えたり、負担をかけたりすることで引き起こされると考えられます。
特に、もともと胃腸が弱い人は、このような症状を自覚しやすい傾向にあります。
服用中に食欲がなくなったり、胃が重く感じられたりする状態が続く場合は、我慢せずに専門家へ伝えることが重要です。
そもそも当帰芍薬散に期待される効果とは?
当帰芍薬散は、多くの製薬会社から販売されており、特にツムラやクラシエの医療用医薬品である「当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)」は広く知られています。
この漢方薬は「婦人科系の三大処方」の一つとされ、古くから女性特有のさまざまな不調に用いられてきました。
血行を促進し、体内の水分バランスを整える作用があり、月経トラブルや更年期障害、冷え性などの改善に効果が期待される当帰芍薬散です。
月経トラブルや更年期障害など女性特有の悩みを改善する効果
当帰芍薬散料は、血の巡りを良くする(活血)作用と、体内の余分な水分を排出する(利水)作用を併せ持ちます。
これらの働きにより、ホルモンバランスの乱れからくる月経不順、月経痛、月経前症候群(PMS)などの症状を緩和します。
また、更年期障害におけるのぼせ、めまい、肩こり、疲労感といった多様な不調にも適応されます。
血と水のバランスを整えることで、女性のライフステージに伴うさまざまな悩みに対応する漢方薬です。
体の冷えや貧血からくる症状を和らげる効果
当帰芍薬散料は、血行を改善する働きがあるため、体力がなく、冷え性や血行不良の人に特に効果的です。
手足の末端が冷えやすい、顔色が青白い、疲れやすいといった症状の改善が期待できます。
また、立ちくらみ、めまい、頭重感、肩こり、むくみといった不調にも用いられます。
体の内側から血の巡りを整えることで、根本的な体質改善をサポートし、さまざまな付随症状を和らげる効果が見込めます。
副作用のリスクを減らすための正しい飲み方
当帰芍薬散の効果を最大限に引き出し、同時に副作用のリスクを低減するためには、正しい服用方法を守ることが非常に重要です。
漢方薬は、飲むタイミングや飲み合わせによって、体への作用が変化することがあります。
基本的なルールを守ることで、体に余計な負担をかけることなく、安全に治療を続けることができます。
ここでは、当帰芍薬散を服用する上での基本的なポイントと注意点を解説します。
基本的に食前または食間に水か白湯で服用する
漢方薬は、食事の影響を受けにくい空腹時に服用することで、生薬の成分が効率よく吸収されると考えられています。
そのため、食事の約30分前である「食前」か、食事と食事の間(食後約2時間後)の「食間」に服用するのが基本です。
服用する際は、胃腸への負担を和らげ、吸収を助けるために、冷たい水ではなく常温の水か白湯で飲むことが推奨されます。
胃が弱い人で空腹時の服用が不快な場合は、食後に変更できることもあるため、医師や薬剤師に相談してください。
他の漢方薬との飲み合わせに注意する
複数の漢方薬を併用すると、含まれる生薬が重複し、特定の成分を過剰に摂取してしまう可能性があります。
これにより、予期せぬ副作用が現れたり、効果が強く出すぎたりすることがあります。
西洋薬との飲み合わせも含め、他に薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師にすべて伝え、安全性を確認してもらうことが重要です。
当帰芍薬散の下痢に関するよくある質問
当帰芍薬散の服用を検討している、あるいはすでに服用している人が抱きやすい、下痢や腹痛に関する疑問は少なくありません。
副作用がいつまで続くのか、これは好転反応ではないのか、といった具体的な質問に答えることで、多くの不安を解消できます。
ここでは、当帰芍薬散と下痢に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
正しい知識を持つことで、安心して漢方治療に取り組むことができます。
Q. 当帰芍薬散による下痢はいつまで続きますか?
副作用として現れる下痢や腹痛がどのくらいの期間続くかは、個人の体質や症状の程度によって異なるため、一概には言えません。
一般的には、原因となっている当帰芍薬散の服用を中止すれば、1日から数日で症状は軽快することが多いです。
もし服用をやめても下痢が続く場合や、症状が非常に強い場合は、漢方薬以外の原因も考えられるため、医療機関を受診することをおすすめします。
自己判断で服用を再開せず、必ず専門家に相談してください。
Q. 下痢の症状は好転反応の可能性もありますか?
漢方では、体が回復する過程で一時的に症状が悪化したように見える「好転反応(瞑眩)」という考え方があります。
しかし、下痢や発疹といった症状を安易に好転反応と判断するのは危険です。
これらは体が薬を受け付けていないサイン、つまり副作用である可能性の方が高いと考えられます。
好転反応と副作用の見極めは専門家でも難しく、自己判断で服用を続けると症状が悪化するリスクがあります。
不調を感じたらまずは服用を中止し、医師や薬剤師に相談するのが原則です。
Q. 当帰芍薬散を飲むと太るというのは本当ですか?
当帰芍薬散の作用によって直接的に体重が増加する、つまり太るという医学的な根拠はありません。
ツムラなどが提供する医薬品の添付文書にも、副作用として体重増加は記載されていません。
むしろ、体内の余分な水分を排出する作用があるため、むくみが解消されて体重が減少するケースもあります。
体質が改善されて血行が良くなり、食欲が増進したり、健康的な体つきになったりすることから、太ると感じる可能性は考えられますが、薬の直接的な影響とは言えません。
まとめ
当帰芍薬散料は、冷えや月経トラブルなど、多くの女性が抱える不調の改善に役立つ漢方薬です。
しかし、配合されている生薬の影響や、服用者の体質によっては、下痢といった副作用が起こる可能性があります。
万が一、体に不調が現れた場合は、自己判断で服用を続けず、速やかに中止して医師や薬剤師に相談することが重要です。
自分の体に合った漢方薬を正しく服用することで、安全かつ効果的な体質改善が期待できます。
