シェーグレン症候群の漢方薬|症状別の選び方から副作用対策まで解説

シェーグレン症候群の漢方薬|症状別の選び方から副作用対策まで解説 漢方

シェーグレン症候群による乾燥症状や全身の倦怠感など、西洋医学だけでは改善が難しい悩みに、漢方薬を用いた漢方療法が選択肢の一つとなります。
この記事では、シェーグレン症候群の症状に対して、どのように漢方薬がアプローチするのか、具体的な漢方薬の選び方から西洋薬との併用、注意点までを詳しく解説します。

この記事でわかること
・ シェーグレン症候群の根本原因に働きかける漢方医学の考え方
・ ドライマウスや倦怠感など症状別の代表的な漢方薬
・ 西洋薬との併用で期待できる相乗効果と副作用の軽減
・ 安全な治療のために不可欠な専門家への相談の重要性

 

シェーグレン症候群のつらい症状、漢方薬でアプローチできる?

シェーグレン症候群の代表的な症状であるドライマウスやドライアイ、原因不明の倦怠感に対して、漢方薬は有効なアプローチが期待できます。
西洋医学の治療が主に症状を抑える対症療法であるのに対し、漢方療法は体の内側に目を向け、症状の原因となっている体質の偏りを整えることを目指します。
体全体のバランスを改善することで、水分代謝を正常化させ、自らが潤う力を高める手助けをします

漢方医学で考えるシェーグレン症候群の根本原因

漢方医学では、シェーグレン症候群の症状を単なる病気としてではなく、体全体のバランスの乱れとして捉えます。
特に、体を潤す成分の不足や、生命エネルギーである「気」や栄養を運ぶ「血」の巡りの悪化が、乾燥や倦怠感といった多様な不調を引き起こすと考えます。
そのため、漢方療法は、これらの根本原因に働きかけ、体質そのものを改善することを目指します。

体内のうるおい不足「陰虚(いんきょ)」が症状を招く

漢方医学において、シェーグレン症候群の最も基本的な病態は「陰虚」と考えられています。
陰虚とは、体内の血液や体液など、体を潤し、冷却する働きを持つ「陰液」が不足した状態を指します。
この潤い不足が、口や目の乾燥、皮膚のカサつき、のどの渇きといった乾燥症状を直接引き起こします。

また、冷却水が減ることで相対的に熱がこもりやすくなり、ほてりや微熱といった症状が現れることもあります。
漢方療法では、この不足した陰液を補う「滋陰」という方法が中心となります。

「気」や「血」の滞りも不調に関係する

陰虚の状態に加えて、気や血の滞りもシェーグレン症候群の多様な症状に関係します。
気は生命活動のエネルギー、血は全身に栄養を運ぶ役割を担います。
これらの巡りが悪くなる気滞や瘀血という状態に陥ると、関節の痛みやこわばり、頭痛、気分の落ち込みといった症状が現れやすくなります。

また、気の不足である気虚は、強い倦怠感や疲労感の原因となります。
漢方療法では、陰虚を改善するだけでなく、これらの滞りを解消し、気や血を補う漢方薬を組み合わせて用います。

【症状別】シェーグレン症候群の改善で用いられる代表的な漢方薬

シェーグレン症候群の漢方療法では、現れている症状や個々の体質に合わせて、さまざまな漢方薬が使い分けられます。
ここでは、代表的な症状である「口の渇き」「目の乾き」「全身の倦怠感や関節痛」「皮膚の乾燥」のそれぞれに対して、用いられることの多い漢方薬を紹介します
これらの薬はあくまで一例であり、実際の服用では専門家による判断のもと、最適なものが選ばれます。

口の渇き(ドライマウス)や喉の乾燥を潤すための漢方薬

口や喉の乾燥には、肺や気道を潤す作用のある漢方薬が用いられます。
代表的な処方として「麦門冬湯」があり、粘膜に潤いを与え、乾いた咳や痰の切れが悪い状態を改善します。

また、体が火照って喉の渇きが特に強い場合には、体の熱を冷ましながら潤いを補う「白虎加人参湯」が適しています。
これらの漢方薬は、唾液の分泌を促すだけでなく、体の中から潤いを生み出す力をサポートします。

目の乾き(ドライアイ)やかすみを和らげるための漢方薬

目の乾きやかすみ、疲れ目といったドライアイの症状には、杞菊地黄丸がよく用いられます。
この漢方薬は、漢方で肝と腎と呼ばれる臓器の働きを助けることで、目に栄養と潤いを補給します。
肝は血を蓄え、腎は体の潤いの源とされており、これらの機能が低下すると目のトラブルが現れやすくなります。

杞菊地黄丸は、特に加齢に伴う目の不調にも対応できる漢方薬として知られています。

全身の倦怠感や関節の痛みに対応するための漢方薬

シェーグレン症候群でみられる原因のはっきりしない倦怠感や関節痛には、体全体のエネルギーや栄養を補い、巡りを改善する漢方薬が有効です。
疲労感が強く、食欲不振や寝汗を伴う場合は、気と血を補う「人参養栄湯」が使われます。
関節の痛みやこわばりには、血行を促進し、痛みやしびれを和らげる「疎経活血湯」などが選択されます。

これらの漢方薬は、体力や免疫力を高めることにも繋がります。

皮膚の乾燥やかゆみを改善するための漢方薬

皮膚の乾燥やかゆみが強い場合には、血を補いながら巡りを良くして、皮膚に栄養と潤いを届ける漢方薬が用いられます。
代表的な漢方薬として「当帰飲子(とうきいんし)」が挙げられます。
この漢方薬は、特に高齢者や体力が低下している方の乾燥肌やかゆみに適しており、体を温める作用もあります。

皮膚のバリア機能を高め、外部からの刺激に強い肌状態へと導くことを目指します。

西洋医学の治療と漢方薬を併用するメリット

シェーグレン症候群の改善において、西洋医学と漢方薬を併用することには多くのメリットがあります。
西洋薬が特定の症状を迅速に抑える一方で、漢方薬は体質そのものに働きかけて根本的な改善を目指します。

この二つのアプローチを組み合わせることで、より効果的に症状をコントロールし、QOL(生活の質)の向上が期待できます。
また、西洋薬の副作用を軽減する目的で漢方療法が取り入れられることもあります。

ステロイドの副作用を軽減する目的での漢方活用

シェーグレン症候群の改善でステロイドを使用する際、その副作用を軽減するために漢方薬が併用されることがあります。
ステロイドの長期服用は、ほてりや免疫力の低下、骨粗しょう症などのリスクを伴います。
漢方療法では、体の熱を冷ましたり、免疫機能をサポートしたり、骨を丈夫にする生薬を含む薬を用いることで、これらの副作用を和らげることを目指します。

体全体のバランスを整えるアプローチにより、ステロイドの減量をサポートできる可能性もあります。

唾液分泌促進薬で効果が不十分な場合の選択肢

サリグレンやエボザックといった唾液分泌促進薬を使用しても、口の渇きが十分に改善されない場合、漢方薬が有力な選択肢となります。
唾液分泌促進薬がすでにある唾液腺を刺激して分泌を促すのに対し、漢方療法は体全体の水分代謝を整え、潤いを生み出す力そのものを高めることを目指します。
体質に合った漢方薬を服用することで、西洋薬だけでは得られなかった効果を実感できる可能性があります。

シェーグレン症候群の漢方治療を始める前の注意点

シェーグレン症候群に対して漢方薬の服用を始める際には、いくつかの注意点を理解しておくことが重要です。
漢方薬は自然由来の生薬から作られていますが、医薬品であることに変わりはなく、副作用のリスクも存在します。
また、効果を最大限に引き出すためには、自己判断で選ぶのではなく、専門家の判断に基づいた適切な薬を受けることが不可欠です。

安全かつ効果的な服用のために、正しい知識を持つことが求められます。

漢方薬の副作用について事前に理解しておくこと

漢方薬は副作用が少ないイメージがありますが、体質に合わない場合や、特定の成分によって体調不良を引き起こす可能性があります。
例えば、多くの漢方薬に含まれる甘草の過剰摂取は、むくみや高血圧などを引き起こす偽アルドステロン症の原因となり得ます。

また、地黄を含む処方は、胃腸が弱い方の場合、胃もたれや下痢を起こすことがあります。
服用を開始して何か異変を感じた際には、速やかに服用を中止し、処方した医師や漢方相談をした薬剤師に相談することが大切です。

自分に合う漢方薬を見つけるための専門家への相談

漢方薬の効果を最大限に引き出すためには、個々の体質や症状の程度、体力などを総合的に判断する「証」に合った漢方薬を選ぶことが極めて重要です。
同じシェーグレン症候群でも、患者さん一人ひとりの「証」は異なります。
そのため、市販の漢方薬を自己判断で選ぶのではなく、漢方に詳しい医師や薬剤師といった専門家に相談することが不可欠です。

専門家による丁寧な問診を通じて、自分に最適な漢方薬を見つけることができます。

漢方薬を保険適用で処方してもらう方法

医師がシェーグレン症候群の治療に必要だと判断した場合、医療機関で処方される漢方薬は健康保険が適用されます。
現在、ツムラをはじめとする多くのメーカーから、約150種類のエキス製剤が保険収載されており、これらは通常の医薬品と同様に3割負担で処方を受けることが可能です。

一方、漢方薬局で煎じ薬などを購入する場合は、自費となり全額自己負担となりますが、
保険適応にないとらわれない、幅広い漢方薬の選択肢があります。

シェーグレン 漢方に関するよくある質問

ここでは、シェーグレン症候群の漢方療法を検討している方からよく寄せられる質問について、簡潔に回答します。

漢方薬は飲み始めてからどのくらいの期間で効果を実感できますか?

体質や症状によりますが、一般的に2週間から数ヶ月程度で変化を感じ始める方が多いです。
効果の現れ方には個人差があり、慢性的な症状の改善を目指す漢方療法のため、ある程度の期間、継続して服用することが重要となります。

市販の漢方薬を自己判断で選んで服用しても問題ないですか?

自己判断での服用は推奨されません。
漢方薬は体質(証)に合わないと効果が出ないばかりか、副作用のリスクもあります。
シェーグレン症候群は複雑な病態を持つため、必ず医師や薬剤師など漢方の専門家に相談してください。

漢方療法にかかる費用はどのくらいですか?保険は適用されますか?

医師が処方するツムラ製品などのエキス製剤は、健康保険が適用されます。
費用は他の保険薬と同様に自己負担割合に応じた金額です。
一方、漢方薬局でオーダーメイドの煎じ薬などを購入する場合は自費となり、全額自己負担です。

まとめ

シェーグレン症候群の改善において、漢方薬は西洋医学を補完し、乾燥症状や全身の不調を根本から改善する有効な選択肢です。
漢方療法は、体内の潤い不足である「陰虚」を基本に、気や血の巡りを整えることで、体質そのものに働きかけます。
症状や体質に合った漢方薬を選ぶことが重要であり、そのためには自己判断を避け、必ず医師や薬剤師などの専門家に相談することが不可欠です。

歳森 三千代
(としもり みちよ)
/ 薬剤師

岡山県岡山市にある不妊・妊活専門の漢方相談薬局 福神トシモリ薬局で、漢方と体質改善による妊活支援・身体づくりを専門とする薬剤師。これまで延べ1,300名以上の妊娠相談実績を持つ(全国からの相談対応あり)。 ブログでは「漢方や健康に関する豆知識」「妊活・不妊のお役立ち情報」「体質に合わせた漢方の使い方」など、専門知識に基づく実践的な情報を発信しています。読者の生活に寄り添い、長年の相談実績をもとに分かりやすく解説することを心がけています。
※掲載内容は一般的な情報であり、効果には個人差があるため、効果を必ずしも証するものではありません。