心臓の動悸に漢方を。原因不明の不調を改善する漢方薬と選び方
漢方
病院で検査をしても「異常なし」と言われたにもかかわらず、つらい動悸や息切れが続くことがあります。
そのような原因が特定しにくい心臓の不調に対して、漢方薬が有効な選択肢となる場合があります。
この記事では、西洋医学とは異なる漢方の心臓へのアプローチや、症状・原因別に使われる代表的な漢方薬、そして自分に合った漢方薬を選ぶためのポイントについて解説します。
病院の検査で異常なし…それでも続く動悸や息切れは漢方でケアできる可能性があります
心臓の検査で異常が見つからない場合、動悸や息切れの背景には、自律神経の乱れやストレス、血行不良、ホルモンバランスの変化といった、全身のバランスの崩れが隠れていることが少なくありません。
西洋医学では病名がつきにくいこれらの不調に対し、漢方では心と体の状態を総合的に捉え、乱れたバランスを整えることで、結果的に心臓の症状を和らげることを目指します。
西洋医学と漢方の心臓へのアプローチの違いとは
西洋医学では、心臓のポンプ機能や血管の状態など、不調の原因となっている部分に直接作用する治療が中心となります。
一方、漢方では、心臓そのものだけでなく、なぜ心臓に負担がかかっているのかという根本原因を探ります。
例えば、体内のエネルギーである「気」や血液とその働きを指す「血(けつ)」、体液を指す「水(すい)」のバランスの乱れが心臓に影響していると考え、全身の状態を整えることで心臓の不調を改善していきます。
自己判断は禁物!まずは専門医の診断を受けましょう
動悸や息切れ、胸が痛いといった症状の中には、狭心症や心筋梗塞、重篤な不整脈といった命に関わる病気が隠れている可能性があります。
そのため、漢方薬を試す前に、まずは必ず循環器内科などの専門医を受診し、精密検査を受けることが非常に重要です。
検査によって器質的な心臓疾患がないことを確認した上で、漢方薬の服用を検討するようにしてください。
【症状・原因別】心臓の不調に使われる代表的な漢方薬
心臓に関連する不快な症状を緩和するために、様々な漢方薬が用いられます。
漢方では、現れている症状だけでなく、その人の体力や体質(証)を総合的に判断して薬を決定するのが特徴です。
ここでは、動悸や息切れといった症状や、その背景にある原因に応じて使われる代表的な漢方薬をいくつか紹介します。
動悸や脈の乱れ(不整脈)を整える漢方薬
体力がなく疲れやすい虚弱体質の方の動悸や息切れ、脈の乱れには、「炙甘草湯」が代表的な漢方薬として知られています。
この漢方薬は、心臓のエネルギー源である「気」と栄養である「血」を補い、体に潤いを与えることで、不規則な心臓の拍動を整える働きが期待されます。
特に、安静にしていても脈が飛ぶような場合に用いられることが多いです。
ストレスや不安感からくる胸のドキドキを鎮める漢方薬
精神的なストレスや緊張、不安感が原因で動悸が起こる場合には、「桂枝加竜骨牡蛎湯」がよく用いられます。
この漢方薬は、過敏になった精神を落ち着かせ、高ぶった「気」を鎮めることで、胸のドキドキ感を和らげる効果が期待できます。
検査では異常が見られないものの、不安感にともなって動悸がする、いわゆる「心臓神経症」のような状態に適しています。
めまいや立ちくらみを伴う動悸に用いられる漢方薬
めまいやふらつき、立ちくらみなどを伴う動悸には、「苓桂朮甘湯」が選択されることがあります。
この漢方薬は、体内の水分代謝の異常が不調の原因であると考え、余分な水分を排出して「気」の巡りを整えることで症状を改善します。
特に、胃腸が弱く、冷え性で、朝起きるのがつらいといった傾向がある方に適しています。
加齢や疲労による息切れや心機能の低下を補う漢方薬
加齢や慢性的な疲労によって心臓の働きが弱まり、少し動いただけでも息切れがしたり、足のむくみが出たりする場合には、心臓の機能を直接的に補う「強心薬」の生薬が配合された漢方薬が役立ちます。
代表的な生薬には「牛黄(ごおう)」や「蟾酥(せんそ)」があり、これらは心機能の働きを助け、血液の循環を促し、全身にエネルギーを供給するのを助けます。
自分に合った漢方薬を選ぶための3つのポイント
漢方薬は、同じ症状であってもその人の体質によって適した漢方薬が異なります。
そのため、自分に合った漢方薬を効果的かつ安全に選ぶためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。
ここでは、漢方薬を選ぶ際に重要となる3つのポイントについて解説します。
ポイント1:現在の症状を正確に把握する
適切な漢方薬を選ぶためには、まず自分の症状を詳しく把握することが重要です。
例えば、「いつ動悸がするのか(運動時、安静時、食後など)」「胸が痛い感じはあるか」「めまいや息苦しさを伴うか」「不安感や不眠はあるか」など、具体的な状況や付随する症状を整理します。
これらの情報が、専門家が漢方薬を判断する際の重要な手がかりとなります。
ポイント2:ご自身の体質(証)を見極める
漢方では、その人の体質を「証(しょう)」という独自の指標で判断します。
これは、体力の有無(実証・虚証)、寒がりか暑がりか(寒証・熱証)、胃腸の強さ、顔色、声の大きさといった全身の状態を総合的に評価するものです。
例えば、同じ動悸という症状でも、体力があり暑がりの人と、虚弱で冷え性の人では、用いられる漢方薬が異なります。
自分の体質を理解することが、適切な漢方薬を見つける近道です。
ポイント3:漢方の専門家(医師・薬剤師)に相談する
漢方薬を選ぶ上で最も重要なのが、漢方に詳しい医師や薬剤師などの専門家に相談することです。
自己判断で選んだ漢方薬が体質に合わないと、効果が得られないばかりか、かえって体調を崩す可能性もあります。
専門家は、症状や体質を的確に見極め、数ある漢方薬の中から最適なものを提案してくれます。
また、西洋薬との飲み合わせについてもアドバイスが受けられるため、安全に漢方療法を始められます。
西洋薬と漢方薬を併用する際に知っておきたいこと
すでに病院で心臓疾患の治療を受けている方が、治療の補助や体質改善を目的として漢方薬の併用を検討することもあります。
しかし、西洋薬と漢方薬を自己判断で組み合わせることはリスクを伴うため、正しい知識を持っておくことが不可欠です。
ここでは、併用を考える際の注意点について解説します。
心臓疾患の治療における漢方薬の役割
心臓疾患の治療において、西洋薬が病気の原因に直接アプローチするのに対し、漢方薬は体全体のバランスを整えることで、西洋薬の治療をサポートする役割が期待されます。
例えば、血流を改善して心臓への負担を軽くしたり、自律神経の乱れを整えて動悸や胸の痛みを和らげたりします。
また、治療に伴う倦怠感や食欲不振といった症状を改善し、生活の質(QOL)を高める目的で用いられることもあります。
併用を始める前に必ず主治医に伝えるべき理由
漢方薬も医薬品の一種であり、西洋薬との飲み合わせによっては、互いの作用を強めたり弱めたり、予期せぬ副作用を引き起こしたりする可能性があります。
特に、一部の漢方薬に含まれる甘草という生薬は、血圧を上げる作用があるため、降圧剤などを服用している場合は注意が必要です。
安全に治療を進めるためにも、漢方薬の服用を始める前には、必ずかかりつけの主治医や薬剤師に相談してください。
心臓 漢方に関するよくある質問
ここでは、心臓の不調で漢方薬を検討している方から寄せられることの多い質問とその回答を紹介します。
漢方薬はどのくらいの期間服用すれば効果を実感できますか?
効果を実感できるまでの期間は、その方の体質や症状の重さ、漢方薬の種類によって異なります。
一般的には、2週間から1ヶ月程度の服用で何らかの変化を感じ始めることが多いですが、慢性的な症状の改善には数ヶ月以上かかることもあります。
まずは一定期間服用を続け、専門家と相談しながら効果を確認することが大切です。
心臓の不調に使う漢方薬に副作用はありますか?
漢方薬は比較的安全とされていますが、医薬品であるため副作用が起こる可能性はあります。
例えば、胃もたれや食欲不振、皮膚の発疹などが見られることがあります。
また、まれに間質性肺炎や偽アルドステロン症といった重篤な副作用が起こることもあります。
体に合わないと感じた場合は、すぐに服用を中止し、処方した医師や漢方薬を選んでもらった薬剤師に相談してください。
ドラッグストアで購入できる市販薬と処方される漢方薬の違いは何ですか?
主な違いは、有効成分の含有量と保険適応の有無です。
医療機関で処方される漢方薬は、保険適応の対象になります。
一方、市販薬は多くの人に対応できるよう成分量が調整されており、自分の判断で選ぶ必要があります。
確実な効果と安全性を求める場合は、専門家に相談することをお勧めします。
まとめ
病院の検査で異常が見つからない動悸や息切れといった心臓の不調に対し、漢方薬は体全体のバランスを整えることでアプローチする有効な選択肢となり得ます。
ただし、症状の裏に重大な病気が隠れている可能性もあるため、まずは専門医の診断を受けることが大前提です。
その上で漢方薬を試す場合は、自己判断を避け、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談し、ご自身の症状と体質に合った漢方薬を選ぶことが重要です。

