苓桂朮甘湯は自律神経失調症のめまい・動悸に使う?合う人の特徴を解説

苓桂朮甘湯は自律神経失調症のめまい・動悸に使う?合う人の特徴を解説 漢方

自律神経失調症に伴う、ふわふわとしためまいや突然の動悸に、漢方薬の苓桂朮甘湯が用いられることがあります。
この記事では、なぜ苓桂朮甘湯がこれらの症状に効果を示すのか、そのメカニズムと、どのような体質の人に向いているのかを解説します。
また、服用する上での注意点やよくある質問についても触れていきます。

自律神経の乱れによる「めまい」や「動悸」に苓桂朮甘湯が選ばれる理由

苓桂朮甘湯は、漢方の考え方における「水滞」と「上衝」という2つの体の不調を改善する処方です。
水滞とは体内の水分代謝が滞った状態で、これがめまいや頭重感の原因と考えられます。
一方、上衝は上に昇るエネルギーである陽気の不足のため、動悸やのぼせ、不安感を引き起こします。
(※上衝の考え方については、経方理論を採用しているため、中医学の考え方とは異なります。)

苓桂朮甘湯はこれら両方に働きかけ、自律神経の乱れからくる症状を和らげます。

体内の余分な水分を排出し、めまいを改善する「利水作用」

苓桂朮甘湯がめまいに効果的な理由の一つは、優れた「利水作用」にあります。
漢方では、体内の水分が偏在したり、代謝がうまくいかなかったりする状態を「水滞(水毒)」と呼びます。
この水滞が内耳のリンパ液のバランスを崩すなどして、ふわふわと揺れるようなめまいや立ちくらみを引き起こすと考えられています。

構成生薬の「茯苓」と「白朮」には、余分な水分を尿として排泄させる働きがあり、体内の水分バランスを整えることで、めまいの根本原因にアプローチします。

気の巡りを整え、動悸や不安を鎮める働き

動悸や息切れ、のぼせ、不安感は、エネルギーである陽気が不足しているという状態が原因の一つとされます。
自律神経が乱れると、この気の流れも乱れやすくなります。
苓桂朮甘湯に含まれる桂枝と甘草の組み合わせには、この陽気の働きを助け、正常な巡りに戻す働きがあります。

気の流れが整うことで、心臓の過剰な拍動である動悸が鎮まり、精神的な高ぶりや不安感も緩和されます。
この作用は、めまいを伴う精神的な不安定さにも良い影響を与えます。

あなたは当てはまる?苓桂朮甘湯が合う人の体質セルフチェック

漢方薬は、症状だけでなくその人の体質(証)に合っていることが重要です。
苓桂朮甘湯は、特定の体質を持つ人のめまいや動悸に対して特に効果を発揮しやすいとされています。
以下に挙げる特徴に複数当てはまる場合は、苓桂朮甘湯が体質に合っている可能性があります。

自身の状態と照らし合わせてセルフチェックしてみましょう。

体力が中等度以下で、疲れやすい傾向がある

苓桂朮甘湯は、比較的体力がなく、虚弱な体質から、体力が普通程度の人に適した漢方薬です。
日頃から疲れやすく、あまり体力に自信がない、病気になると長引きやすいといった傾向がある人に向いています。
一方で、体力があり、筋肉質でがっしりとした体格の人には合わない場合があります。

胃のあたりで水がポチャポチャ鳴ることがある

体内の水分代謝が悪い「水滞」のサインとして、「胃内停水」があります。
これは、胃の中に余分な水分が溜まっている状態で、お腹を揺らしたり、みぞおちのあたりを軽く叩いたりすると、ポチャポチャ、チャポチャポといった音が聞こえるのが特徴です。
食後でもないのにこのような音がする場合、水分がうまく排出されていない証拠と考えられます。

立ちくらみや、のぼせを感じやすい

急に立ち上がった時にクラっとする立ちくらみや、足元は冷えるのに顔だけがほてるような「のぼせ」は、苓桂朮甘湯が適応する典型的な症状です。
これらは体内の水分バランスの乱れや、エネルギーである「陽気」が不足することによって起こると考えられています。
このような症状は、自律神経の乱れによるめまいやふらつきにもつながります。

むくみやすく、尿量が少ない

体内の水分代謝が悪い「水滞」のもう一つの代表的なサインが、むくみ(浮腫)と尿量の減少です。
特に、朝起きると顔がむくんでいる、夕方になると足がパンパンになる、といった症状が見られます。
同時に、体内に水分が溜まっているため、尿の回数や量が少ない傾向があります。

利水作用のある苓桂朮甘湯は、こうした体質の人に適しています。

不安感や神経過敏になりやすい

身体的な症状だけでなく、精神的な側面も重要な判断基準です。
苓桂朮甘湯は、精神を安定させる作用も期待できるため、ちょっとしたことでドキドキしたり、不安になったり、恐怖感を覚えやすいといった神経過敏な傾向がある人に用いられます。
特に、動悸やめまいとともに強い不安感がある場合に適しています。

苓桂朮甘湯で改善が期待できる自律神経失調症の具体的な症状

苓桂朮甘湯は、自律神経失調症によって引き起こされる様々な症状の中でも、特に「水」と「気」の乱れに関連するものに効果を発揮します。
ここでは、苓桂朮甘湯の服用によって改善が期待できる具体的な症状を挙げます。
特に、回転性のないふわふわとしためまいを伴う場合に適しています。

急に立ち上がった時のふらつきや回転性のないめまい

苓桂朮甘湯が特に得意とするのは、ぐるぐると景色が回るような回転性めまいではなく、体がフワフワと揺れる感じ、雲の上を歩いているような浮動性めまいです。
また、立ち上がった瞬間に目の前が暗くなるような立ちくらみにも用いられます。
これらのめまいは、体内の水分バランスの乱れが原因の一つと考えられており、苓桂朮甘湯の利水作用が効果を発揮します。

突然の動悸や息切れ

特にきっかけがないのに、急に心臓がドキドキと高鳴る動悸や、それに伴う息切れは、自律神経の乱れによる代表的な症状です。
漢方では、エネルギーである「陽気」が不足することが原因と捉えられます。
苓桂朮甘湯は、この上に昇る陽気の不足を補う作用があるため、突然の動悸や、不安感を伴う息苦しさの改善が期待できます。

締め付けられるような頭痛や頭重感

頭が重く感じられたり、帽子をかぶったように締め付けられる感じがしたりする頭痛も、苓桂朮甘湯の適応症状です。
このような頭痛は、雨の日や湿度の高い日に悪化する傾向があり、体内の余分な水分(水滞)が原因と考えられています。
苓桂朮甘湯は、水分代謝を改善することで、こうした頭痛や頭重感を和らげる効果が期待されます。

乗り物酔いをしやすい

乗り物酔いは、体の平衡感覚を司る内耳の乱れが原因で起こりますが、漢方ではこれも体内の水分バランスの乱れ(水滞)が深く関わっていると考えます。
そのため、普段からめまいやふらつきがあり、特に乗り物酔いをしやすい体質の人にも、苓桂朮甘湯が用いられることがあります。
水分代謝を整えることで、乗り物による揺れなど外部からの刺激に対応しやすい状態を目指します。

苓桂朮甘湯を服用する前に知っておきたい注意点

苓桂朮甘湯は比較的安全性の高い漢方薬とされていますが、医薬品である以上、注意すべき点も存在します。
購入方法による違いや、起こりうる副作用、他の薬との飲み合わせについて、服用を開始する前に正しく理解しておくことが重要です。
自己判断で服用せず、不明な点は医師や薬剤師に相談しましょう。

病院で処方される医療用漢方と市販薬の違い

医療用漢方薬(ツムラ39番など)は、医師の診察に基づいて処方され、健康保険が適用されます。
一般的に、市販薬よりも有効成分の含有量が多く、より効果が期待できるとされています。
一方、市販薬はドラッグストアなどで手軽に購入できますが、自己の判断で選ぶ必要があります。

市販薬は安全性を考慮して成分量が調整されている場合があります。
どちらを選ぶにせよ、専門家である医師や薬剤師に相談することが望ましいです。

飲み始めに注意したい副作用の初期症状

苓桂朮甘湯の重大な副作用として「偽アルドステロン症」があります。
これは、構成生薬の「甘草(カンゾウ)」によって引き起こされる可能性があり、血圧の上昇やむくみ、手足のだるさ、しびれ、つっぱり感、こわばりなどが初期症状として現れます。
また、まれに発疹、かゆみ、胃の不快感、食欲不振などが起こることもあります。

このような症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。

飲み合わせに注意が必要な薬について

他の薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に伝える必要があります。
特に注意が必要なのは、構成生薬の「甘草(カンゾウ)」を含む他の漢方薬や風邪薬などとの併用です。
甘草を過剰に摂取すると、副作用である偽アルドステロン症のリスクが高まります。

また、利尿薬や一部の西洋薬との相互作用も報告されているため、自己判断での併用は絶対に避けてください。

苓桂朮甘湯と自律神経失調症に関するよくある質問

ここでは、苓桂朮甘湯の服用を検討している方からよく寄せられる質問にお答えします。
効果を実感するまでの期間や他の薬との併用、効果がなかった場合の対処法など、自律神経失調症によるめまいといった症状に悩む方が抱きやすい疑問点をまとめました。

どのくらいの期間飲み続ければ効果を実感できますか?

効果が現れるまでの期間には個人差がありますが、一般的に2週間から1ヶ月程度の服用で何らかの変化を感じ始めることが多いです。
体質から改善していく漢方薬の特性上、数ヶ月単位での服用が必要になる場合もあります。
まずは1ヶ月を目安に続け、症状の改善が見られない場合は専門家に相談しましょう。

他の漢方薬や心療内科の薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?

自己判断での併用は避けるべきです。
特に甘草(カンゾウ)を含む他の漢方薬と併用すると、副作用のリスクが高まります。
また、心療内科で処方される薬との相互作用の可能性も否定できません。

現在服用中の薬がある場合は、必ず処方した医師や薬剤師にすべて伝えて指示を仰いでください。

苓桂朮甘湯が効かない場合はどうすればよいですか?

漢方薬が体質(証)に合っていない可能性があります。
苓桂朮甘湯が効かない場合、めまいや動悸の原因が「水滞」や「上衝」ではない、あるいは他の要因が複雑に絡んでいることも考えられます。
服用を一度中止し、漢方に詳しい医師や薬剤師に再度相談して、漢方薬を見直してもらうことが重要です。

まとめ

苓桂朮甘湯は、自律神経失調症の中でも、体内の水分代謝の乱れ(水滞)や上に昇る陽気の不足(上衝)を原因とする、ふわふわしためまいや動悸、立ちくらみなどに用いられる漢方薬です。
体力が中等度以下で、胃のあたりで水の音がしたり、むくみやすかったりする体質の人に適しています。
服用に際しては、副作用や飲み合わせのリスクもあるため、医師や薬剤師といった専門家に相談の上で、自分の体質に合っているかを見極めることが不可欠です。

歳森 三千代
(としもり みちよ)
/ 薬剤師

岡山県岡山市にある不妊・妊活専門の漢方相談薬局 福神トシモリ薬局で、漢方と体質改善による妊活支援・身体づくりを専門とする薬剤師。これまで延べ1,300名以上の妊娠相談実績を持つ(全国からの相談対応あり)。 ブログでは「漢方や健康に関する豆知識」「妊活・不妊のお役立ち情報」「体質に合わせた漢方の使い方」など、専門知識に基づく実践的な情報を発信しています。読者の生活に寄り添い、長年の相談実績をもとに分かりやすく解説することを心がけています。
※掲載内容は一般的な情報であり、効果には個人差があるため、効果を必ずしも証するものではありません。