漢方薬「十全大補湯」の効果・副作用・飲み方を解説

漢方薬「十全大補湯」の効果・副作用・飲み方を解説 漢方

十全大補湯は、体力や気力が低下した際に用いられる代表的な漢方薬です。
病後や術後の回復、疲労倦怠、貧血症状の緩和など、幅広い効果が期待できます。

この記事では、十全大補湯の具体的な効果・効能から、構成生薬、副作用、正しい飲み方、入手方法までを網羅的に解説します。
ご自身の症状や体質に合うかどうかの参考にしてください。

十全大補湯は気力と体力を補う漢方薬

十全大補湯とは、漢方の考え方における「気」と「血」の両方が不足した「気血両虚(きけつりょうきょ)」という状態を改善する漢方薬です。
手術や大病、慢性的な疲労などによって消耗した体力と気力を同時に補い、身体の機能を総合的に高める働きがあります。

体の抵抗力や免疫力を向上させる効果も期待され、病後の回復を早めたり、虚弱体質を改善したりする目的で広く用いられています。

十全大補湯に期待できる効果・効能

十全大補湯は、体力と気力の両方を補うことで、心身のさまざまな不調を改善する効能が期待されます。

具体的には、病気や手術によって著しく体力が低下した状態からの回復促進や、日々の生活で感じる慢性的な疲労感や倦怠感、それに伴う食欲不振の改善に用いられます。

また、血液を補い血行を促す作用があるため、手足の冷えや貧血によるめまい、顔色の悪さといった症状の緩和にも効果的です。

病後や術後の体力低下の回復をサポート

手術や大病を経験すると、身体はエネルギー源である「気」と栄養を運ぶ「血」を大きく消耗します。
この気血が不足した状態が続くと、回復が遅れたり、感染症にかかりやすくなったりします。

十全大補湯は、消耗した気と血を同時に補うことで、身体の基本的な機能を回復させ、自然治癒力を高める働きがあります。
特に、消化器系の働きを整えながら滋養強壮作用を発揮するため、術後の衰弱や寝汗、食欲不振といった症状を改善し、スムーズな社会復帰をサポートします。

疲労倦怠や食欲不振の改善

十全大補湯は、慢性的な疲労感やだるさ、気力が出ないといった症状に対しても用いられます。
これらの症状は、漢方ではエネルギーである「気」の不足が主な原因と考えられています。

十全大補湯は、気を補う代表的な漢方薬である「四君子湯」をベースにしており、胃腸の働きを助け、食べ物から効率的にエネルギーを作り出せるようにします。
これにより、身体の内側から活力が湧き、食欲不振も改善されることで、疲労からの回復を促し、健康的な状態へと導きます。

手足の冷えや貧血症状の緩和

手足の冷えや顔色の悪さ、めまい、立ちくらみといった症状は、漢方では栄養を全身に運ぶ「血」が不足した「血虚」の状態と考えられ、西洋医学における貧血もこれに含まれます。

十全大補湯は、血を補う代表的な漢方薬である「四物湯」を基本骨格としており、造血作用を促すことで血の量を増やします。さらに、血行を促進する生薬も含まれているため、全身の隅々まで温かい血液が行き渡るようになり、手足の冷えや貧血に伴う諸症状の緩和につながります。

十全大補湯を構成する10種類の生薬

十全大補湯は、その名の通り10種類の生薬から構成される漢方薬です。
この漢方薬の特徴は、漢方の基本処方を組み合わせている点にあります。
具体的には、人参、蒼朮(または白朮)、茯苓、甘草からなる、気を補い胃腸の働きを助ける「四君子湯」の成分と、地黄、芍薬、当帰、川芎からなる、血を補い血行を促す「四物湯」の成分が合わさっています。

さらに、この8種類に気血の巡りを良くする黄耆と、体を温める桂皮が加えられ、気力と体力の両方を強力に補う漢方薬となっています。

十全大補湯の服用が向いている方の特徴

十全大補湯は、体力や抵抗力が低下し、疲れやすく弱っている「虚証」タイプの方に適した漢方薬です。
具体的な特徴としては、顔色が悪くつやがない、声に力がなく小さい、食が細い、胃腸が弱い、貧血気味、手足が冷えやすいといった点が挙げられます。

病後や術後で体力が著しく落ちている場合や、慢性的な疲労に悩んでいる場合に特に有効です。
一方で、体格が良く、体に熱がこもりやすい「実証」タイプの方が服用すると、のぼせや胃もたれなどの不調を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

十全大補湯の正しい服用方法とタイミング

十全大補湯は、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に水または白湯で服用します。
例えば、ツムラの医療用エキス顆粒は1包が2.5gであり、これを1日3回服用するのが一般的です。

食前とは食事の約30分前、食間とは食事と食事の間のことで、食後約2時間を指します。
胃の中に食べ物がない空腹時に服用することで、生薬の成分が効率よく吸収されると考えられています。
ただし、年齢や体重、症状によって適切な用法・用量は異なるため、医師や薬剤師の指示に必ず従ってください。

服用前に知っておきたい十全大補湯の副作用

十全大補湯は比較的安全性の高い漢方薬とされていますが、まれに副作用が起こる可能性があります。
報告されている主な副作用としては、発疹、発赤、かゆみといった皮膚症状や、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢などの消化器症状が挙げられます。

また、頻度は不明ですが、肝機能障害や黄疸が現れることもあります。
もし服用後に体調の異変を感じた場合は、すぐに服用を中止し、処方した医師や薬剤師に相談することが重要です。
体質によっては合わない場合もあるため、少しでもおかしいと感じたら専門家の判断を仰ぎましょう。

十全大補湯を服用する際の注意点

十全大補湯を服用する前には、必ず医師や薬剤師から渡される添付文書に目を通し、用法・用量や注意点をよく確認してください。

漢方薬は安全なイメージがありますが、体質や持病によっては合わない場合もあります。特に、アレルギー体質の方や、高血圧、心臓病、腎臓病などの持病がある方、他の薬を服用中の方は、事前に専門家へ伝えることが重要です。自己判断で服用を開始したり、量を調節したりすることは避け、指示された内容を正しく守ることが安全な服用につながります。

服用を避けるべき方

十全大補湯は体力を補う薬であるため、もともと体力があり、体格ががっしりしている「実証」タイプの方や、体に熱がこもっている方は服用を避けるべきです。
このような方が服用すると、のぼせやほてり、発疹などの症状が悪化する可能性があります。

また、構成生薬の地黄(ジオウ)は胃腸に負担をかけることがあるため、胃腸が極端に弱く、もたれやすい方も慎重な判断が必要です。
過去に十全大補湯や、その構成生薬に対してアレルギー反応(過敏症)を起こした経験がある方は、服用できません。

他の薬との飲み合わせで注意が必要なケース

十全大補湯を服用する際は、他の薬、特に漢方薬との飲み合わせに注意が必要です。
漢方薬には同じ生薬が複数含まれていることがあり、併用によって特定の成分を過剰に摂取してしまうリスクがあります。

特に注意したいのが「甘草(カンゾウ)」という生薬です。
甘草を過剰に摂取すると、偽アルドステロン症という副作用(むくみ、血圧上昇、低カリウム血症など)を引き起こす可能性があります。
西洋薬を服用している場合も相互作用の可能性があるため、他の薬を服用している場合は、必ず事前に医師や薬剤師に申し出てください。

十全大補湯の効果はいつから実感できる?

十全大補湯を含む多くの漢方薬は、体質を根本から改善していくことを目的としているため、西洋薬のような即効性は期待できません。
効果を実感できるまでの期間は、その方の症状や体質、生活習慣によって大きく異なりますが、一般的には数週間から数ヶ月程度の継続服用が必要とされます。

まずは1ヶ月ほど服用を続けてみて、症状に変化が見られるかを確認するのが一つの目安です。
焦らずじっくりと身体の変化と向き合い、気になることがあれば処方した医師や薬を選んでもらった薬剤師に相談しながら服用を続けることが大切です。

十全大補湯の入手方法

十全大補湯を入手するには、主に二つの方法があります。
一つは、医師の診察を受けて処方してもらう医療用漢方製剤で、こちらは健康保険が適用されます。
もう一つは、ドラッグストアや薬局で薬剤師や登録販売者に相談の上で購入できる市販薬(一般用漢方製剤)です。

医療用は医師が症状や体質を診断した上で処方されるため、より個人の状態に適したものを服用できるという利点があります。
市販薬は手軽に購入できますが、自己判断が基本となるため、選ぶ際には専門家への相談が推奨されます。

医療機関で処方される十全大補湯

医師の診察を経て処方される十全大補湯は「医療用漢方製剤」に分類され、健康保険の適用対象となります。
医療用漢方製剤で最も広く使用されているのが、ツムラの製品です。
具体的には「ツムラ十全大補湯エキス顆粒(医療用)」という名称で、製品番号は48番として知られています。

医師が患者一人ひとりの症状や体質を診察した上で処方するため、より的確な効果が期待でき、副作用などの万が一の事態にも速やかに対応してもらえるという安心感があります。
定期的な診察を通して、効果の確認や処方の調整が行われます。

ドラッグストアで購入できる市販薬「十全大補湯S」

十全大補湯は、医師の処方箋がなくても、ドラッグストアや薬局などで市販薬として購入することが可能です。
これらは「一般用漢方製剤(OTC医薬品)」と呼ばれ、様々な製薬会社から販売されています。

例えば、クラシエ薬品からは「「クラシエ」漢方十全大補湯エキス錠」などの製品が販売されており、錠剤や顆粒など、飲みやすい形状を選ぶことができます。
市販薬は手軽に入手できるメリットがありますが、自分の症状に適しているかどうかの判断が難しい場合もあるため、購入前には薬剤師や登録販売者に相談することをおすすめします。

十全大補湯に関するよくある質問

ここでは十全大補湯について多くの方が抱く疑問にお答えします。
特に妊娠中や授乳中の服用に関する安全性や似た効果を持つ他の漢方薬との違いは多くの方が気にする点です。

漢方薬は自然由来の成分ですが誰でも安心して服用できるわけではありません。
正しい知識を持つことでより安全に漢方薬を活用できますのでぜひ参考にしてください。

妊娠中や授乳中に服用しても問題ない?

妊娠中や授乳中の服用は、自己判断で開始せず、必ずかかりつけの医師や薬剤師に相談してください。
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ服用するのが一般的です。

特に妊娠中は、生薬の成分が胎児に影響を与える可能性も否定できないため、慎重な判断が求められます。
安全性が確立されていないため、専門家の指導のもとで服用することが不可欠です。

似ている漢方薬「人参養栄湯」との違いは?

人参養栄湯は、十全大補湯と同じく気血を補う働きがありますが、精神不安や不眠、咳といった症状にも対応する点が大きな違いです。

十全大補湯は気力・体力の低下に広く用いられるのに対し、人参養栄湯はそれに加えて、心を落ち着かせる生薬や、肺を潤し咳を鎮める生薬が含まれており、より精神的な不調や呼吸器症状が目立つ場合に適しています。

まとめ

十全大補湯は、気と血の両方を補うことで、病後や術後の体力低下、慢性的な疲労倦怠、食欲不振、手足の冷え、貧血といった「気血両虚」の状態を改善する漢方薬です。
その効果は10種類の生薬の組み合わせによってもたらされます。

服用に適しているのは体力が低下した虚証タイプの方であり、体力が充実している方が服用すると不調をきたす場合があります。
副作用のリスクもゼロではないため、服用する際は医師や薬剤師の指示に従い、添付文書をよく確認することが重要です。

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